十一
「妙月さんっ!」
傷つき立ち上がった櫻華に巴が叫んだ。
倒している、確かに鎧武者を倒してはいるが、あの傷で残り五体の鎧武者を倒せるとは思えなかった。
(妙月さんが倒れたら……)
自然、自分たちが戦わなくてはならなくなる。いや、その前に……
(妙月さんが倒れるということは……死……)
死ぬ……ということだ。それを黙って見ているのか?
いや、それだけではない。櫻華が倒れれば、自分を含めここの教員や学生であの鎧武者に勝てないのは分かっていた。つまり櫻華が倒れれば、学院の全員が死ぬということだ。
逃げるわけにはいかない、防人学院として。逃げれば他に被害が及ぶ。
(だったら今戦ったほうがいい。私たちの破魔が通用するかどうかは分からないけれど……)
だが、散華よりも破魔のほうが威力は大きい。たとえ櫻華が散華の使い手だとしても、教員や学生全員で破魔を使えば――
「……そうだ、破魔」
思いつき巴は呟いた。散華の術を使いこなす櫻華。ならば、強力な破魔の術を使うこともできるはずだった。何より、散華よりも破魔のほうが何倍も使いやすい。傷ついた今の櫻華でも使えるはずだ。
(それなら、妙月さんも……みんなも助かる!)
そう考えた瞬間、巴は思わず叫んでいた。
「妙月さんっ! 破魔の術を――」
「黙れ」
怒りを含んだ声が聞こえ、巴は言葉をとめて顔を向けた。見ると、神楽が鋭い視線を向けていた。それは今までの見下した眼差しや嘲りの声ではなかった。純粋な怒りの視線。




