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櫻華の桜  作者: shio
第一章 識神楽
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 ――曰く、その者、降魔の剣を携え、眷属を率いて魔を伏し、世を平安せん。

 その事は初等の歴史の授業で誰でも最初に習うことであり、御伽噺にも使われることなので幼児でも知っている話だった。そして、その歴史をただの御伽噺とはせず、いわゆる宗教的な観念の出来事でないことも幼児は知っている。何故なら、「魔」という存在は現に今も存在しているからだ。

 世界には魔というものが今だ存在している――「世を平安せん」とあるが、その戦いはいまだ続いていた。では、「平安にした」というのは間違いだと思われるかも知れないが、つまり平安というのは乱を鎮め人の世にしたという意味だろう。魔を滅ぼしたという意味ではない。


 ともあれ、魔。

 東洋では魔、西洋では悪魔。その他にも、悪霊、死霊、妖怪、妖、物の怪――と様々な呼び方があるが、その意味するところは一つだった。

 つまりは人ならざる者が居るという現実。そして、それは人間のすぐ側にいた。

 魔――その存在は実としてあるものの、正体は今だ掴めていなかった。

 実体としてあっても生態はない。いや、それ以前に生きているかどうかも定かではなかった。悪霊や死霊と呼ばれても、霊でもない――つまり人の形をすることはあっても、死んだ人間ではない。

 どこの誰でもなく、どのようにも変化できる。それが、魔。

 人を苦しめ、貶め、怠惰を植え付け快楽に溺れさせ、絶望を与え死へ招くこと……それが、魔の存在だった。

 当然、人間たちは敵対した。その戦いは数千年に及ぶ――といっても、これも正確ではない。

 魔との戦いが何時から始まったかは誰も知らない。歴史に「魔を伏し世を平安した」とあるが、魔と何時から戦っているのかははっきり分かっていなかった。いうなれば、人間の歴史が始まってから魔はすでにいた。


 どこから生まれ、どこから来たのかも分からない――「魔」。

 そして、その魔と対し戦い祓う者を、人は古よりこう呼んだ。国を護る者――防人さきもりと。


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