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櫻華の桜  作者: shio
第九章 竜の座、獅子吼響き
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「よく来てくれた散華の子よ。私は娑伽羅という。竜の主として、皆を纏める立場にいる者だ。そして、知った者もいるかと思うが、左右に並ぶは竜王の名を持つ者たち。大事ある時、竜族は必ずこの八竜王で事を決めている」

「はい」


 櫻華の答えは短い。だが、そのことはあえて気にせず娑伽羅竜王は続けた。


「八部衆のこと、そして、その現状のことを知っていると聞いている。早速で悪いのだが、緊那羅族の娘、神楽について聞きたい」

「『娑伽羅竜王』、私がお話します」


 あまりに不躾な質問に――それは櫻華を軽く見ている証でもある――顕華は竜女として竜の主を呼び止めた。


「櫻華様、申し訳ありません。このような……」


 櫻華は首を振った。櫻華もまた顕華の気持ちはよくわかっている。


「櫻華様……ありがとうございます」


 顕華は気持ちを伝え微笑み、そして、すぐに事の話を始めた。


「緊那羅が族長である緊那羅が亡くなられました――娘である神楽さんの手によって」


 櫻華は――その言葉にも動じることはなかった。納得もする。神楽ならば、するだろう。

 そしてまた、自分が呼ばれた意味も理解する。


「神楽さんは夜叉の元へも向かっているそうです――八部衆として、このことは無視するわけにはいきません」


 自分の気持ちは押し殺し、顕華は竜族の一人としての考えを語った。


(……夜叉)


 櫻華は内で呟いた。山頂での戦いを思い出す。とはいえ、あの者が夜叉の全てではないだろうが、感情は分かる。人を弄び世を乱そうとしていることは。

 竜族の考えもそれでわかった。人間を信用していないとはいえ、八部衆と人間との戦は危険すぎるのだ。それを安易に起こされてしまえば、状況によっては一族が滅ぶ可能性もある。だからといって、緊那羅、夜叉と敵対して喜ぶのは人間だった。

 それで、神楽のことを知る自分が呼ばれた。どんな思想を持ち、感情を持っているのか。力は器はどれほどなのか。如何なる人物か、それを知りたいのだろう。


「――――」


 櫻華は心を重くした。一度だけ瞼を閉じ、開くと同時に娑伽羅竜王を見つめる。


「事の話はわかったようだな。では聞きたい。神楽という者を、お前はどう捉える」


 櫻華は黙っていた。しばらくの静寂の後、『答えない』ことを悟り、その場の空気が変化する。


「成程……散華の子よ。お前と神楽という者は親しいようだな」


 顕華は「違います!」と口を開きそうになり――櫻華が動じずいることに触れて、黙った。櫻華には惑いも迷いも恐れもない。


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