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1話 青年の怒り

「エボラ、お前も分かっているはずだ。この実験に失敗したら俺らは絶対に終身刑じゃすまされない」



大きな怒鳴り声が政府の代表取締役室から聞こえる。

夜中の3時頃だったらしい。この声はこの国の首相の声だ。かなり怒っているのが聞いてとれる。



「何を今さら。犬飼さんよ、この実験はあんたが考えたんだ。あんたがデイビスを発見してなかったらこんなことは起きていない。全部あんたの趣味の問題だろ。科学でデイビスを使えば人を怪物に変えられる。それを試す為にあんたが東国と西国の犯罪者96人を怪物に変えたせいだ。全部あんたのせいだ」



エボラというもう1人の男が怒鳴り返した。こちらもかなり鬱憤が溜まっているらしい。



「それは…昔の事だ。あの過ちを通して私は変わった。今の私はたんなる犯罪者じゃないんだ」



事の発端は50年前の総理が産まれた日に遡る──。


犬飼総理大臣、いや犬飼光彦は岡山の田舎で産まれた。

父は炭鉱夫として働いていたがあまり儲けが出ず家はかなり貧しかった。そして母親は犬飼が6歳の時、交通事故を起こして逮捕される。


さらに不幸な事に父親が薬物中毒に陥り違法薬物所持で逮捕され裁判の翌日に自殺した。幼くして犬飼は知り合いのいない岡山の土地でホームレスになってしまう。


ただ元から心が優しかった犬飼は父親の働いていた炭鉱にスカウトされる。

23歳の時だった。たしか炭鉱の奥からアナザーデイビスが見つかったのはそれから10年後の出来事だ。


アナザーデイビスは見た目は黒曜石に似ているが艶がダイヤモンドよりもしっかりしていた。これを見つけてから犬飼は変わった。


デイビスを日本中の政治家に売りさばき炭鉱を盛り上げることができるかもしれない。


そしてアナザーデイビスの記者会見が渋谷で行われた時、犬飼は演説をしていた。しかし政治家や専門家の目の前でデイビスが盗まれてしまう。


これも犬飼の計画通りだった。大阪の泥棒集団に賄賂を送り付けデイビスを盗んでもらい犬飼のもとに帰ってくる。それで上手くいくはずだった。


しかし、それを絶対に許さなかったのは東京などの東側の地域の政治家達だった。


さらに運の悪い事に岡山に帰る途中にデイビスが見つかってしまう。その結果、日本の東と西がそれぞれ対立する国家になってしまった。


そして9年前に東国の研究者によってデイビスには人間を怪物に出来る能力が発見された。


見つけたのは…エボラ·グリンバルド。

年齢性別国籍不明の謎の科学者だ。


その結果、東国と西国がデイビスを自分の国の科学兵器として東国または西国を倒そうと戦争が勃発する。



これを今の西国では『()西()()()()()』と呼んでいる。


日本国憲法の平和主義はどこへいったんだか。アナザーデイビスが今何処にあるかは犬飼とエボラしか知らないらしい。


そして話は今に戻る──。



「いいか犬飼。この実験が成功すれば軍事が足りていないこの西国にも新たな力が手に入りあの東国を再び我々の占領下に置くことだって可能かもしれない。やってみる価値は十分にあるだろう」



エボラが頭を真っ赤にしながら言った。



「今は慎重に研究を行うのが最善の策だろう。前回産み出した怪物を覚えているか!!自力で全員脱獄されてしまったじゃないか。同じ過ちは繰り返さないことが今は大切だ」



喧嘩は段々と殴り合い、殺し合いに発展していった。


そして遂にエボラが近くにあった拳銃を使い犬飼を撃った



「やめろエボラ!まだ話し合えるはずだ。話を聞いてくれ。頼む。グワァ!!」



犬飼は即死だったろう。



「恨むなよ犬飼。全てはお前のせいだ」



プロローグはここまでだ。

この物語は犬飼の殺人事件を追い日本をまた1つにするまで…いやエボラを倒すまでの物語。



「おーい啓介。朝だよー!」



ある家から大きな声が聞こえてくる。



「分かったよ。佑香」



すると1人の青年が降りてきた。



「何か大きな依頼は来てないのか」



「大きな依頼って、あんたまだ探偵になって半年の新米でしょ。そんな大層な依頼来るわけないでしょ」



俺の名前は「諏訪田啓介」西国の新米探偵だ。

まあ探偵といってもお婆さんの家事の手伝いやら万びき犯の逮捕だったり探偵らしくない依頼しか来ないんだけど。


啓介は新聞を取り面白そうな事件を探していた。すると見出しを見た啓介が興奮しながら佑香に言った。



「佑香。見てみろよこれ」



『犬飼光彦殺害。未だ死体は発見されず』



「首相の殺害と言っても見た感じ血痕から採取したDNAが一致しただけで死んだかは不明だろ。まだ生きてるかもしれない」



啓介は頭の中で推理を始めていた。


しばらくすると隣の地区の探偵仲間が押し掛けてきた。名前は大久保 敏也。俺より優秀で有名な探偵だ。


一つ欠点があるならばセンスが1ミリもないことだろう。

この前の休暇、敏也と買い物に行ったとき敏也が「Welcome to west country」と大きく書いてあるTシャツを買っていて驚いた。



「啓介、大変だ。西国の探偵は直ちに政府に集合だってよ。さっき政府から緊急指令が来た」



「それマジでいってんの」



「パソコンかスマホのメール見てみろ」



言われた通りにメールを確認してみると確かに召集が命令されていた。



「早く来いよ。副総理に怒られちまう!!」



啓介は佑香に夜には帰るといって車で国会議事堂に向かった。車で30分くらい走ったと思う。


入り口に着くと警備がかなり厳重になっており警備員に拳銃を向けられた。一人はスタンガンも持っている。



「探偵証明書を見せろ」



警備員が怒鳴り付ける。

悪いことをしてないからかなりイラついた。



「はいよ」



2人は無愛想に探偵証明書を警備員に押し付けた。

敏也が一瞬警備員を引っ掻いたのを啓介は見逃さなかった。


探偵証明書とは、探偵のみが所有する免許の事。本人確認用の身分証明書としても使う。本名と事務所、あとは学歴と年齢と生年月日が記載されている。



「諏訪田啓介と大久保敏也。確認が終了した。2分の遅刻だ。会議室に至急向かえ」



2人は会議室に急いだ。副総理は短気なことで有名だからだ。


しかし



「なあ啓介。俺ら迷子じゃね」



2人は広い国会議事堂の中で絶賛迷子中だった。



「安心しろ敏也。俺は方向音痴で有名だからな。必ず会議室に着く」



「お前、本当に方向音痴の意味分かってるか」



「ほら着いた」



「何でだよ」



敏也が毎度疑問に思っていることがある。

それは啓介が方向音痴なのに迷子を指摘すると直ぐに着いてしまう謎の能力を持っていることだ。


この前キャンプに行ったときに山の中で迷子になってしまった。

しかし、敏也が迷子を指摘した途端に目的地に着いていた。


そして話は今に戻る。


2人は会議室の門を開けた。



「よく来てくれた諸君。ここに呼んだ理由は他でもない。犬飼総理の殺人事件についてだ」



政府の代表取締役の机に腰を降ろしていたのは、副総理の薊 主浩だった。


偽金事件に関与して10年間服役中だった。ただ薊を最後に副総理がいなかったので刑務所から今朝釈放された。



「なあ。1つ聞かせてくれ。本当にあの血液は総理のものだったのか?」



啓介は素朴な疑問を晴らすべく開始早々質問しだした。周りの探偵達はなんて度胸だと思っていたに違いない。



「ああ勿論だ。鑑識に調べさせた結果DNAが一致した。死因は拳銃による出血多量と見てる」



「なるほどな。ありがとう。終身刑の罪人にしては話が早い」



「それはお世辞かな啓介君。君の報告書を見たよ。父親は軍人だったんだろう。礼儀作法も教えてくれなかったのかい」



薊副総理はため息をついた。啓介にはそのため息をで見たことがあるような気がした。



「君達、新聞は見たのだよね?」



薊副総理は探偵達に聞いた。


普通はネット記事で確認するんだけどな。警察の機密のデータベースに載っているからだ。

すると1人が話し始めた。



「すまんな。俺の探偵事務所は新聞とは無縁なんでね」



彼は杉沢探偵事務所の杉沢 孝道だ。


表は優しく誠実な探偵だが裏では臓器売買を行っているという噂もある。



「別に構わない」



薊副総理が笑顔で返した。


牢獄生活で痩せ細っている顔からあふれでるほどの笑顔を見せられると少し不気味だ。



「君たちに捜査してほしい案件は2つ。1つは犯人、2つはアナザーデイビス。君たちも知っているとおりアナザーデイビスは6年前に行方不明になった。なのに現場には残っていたんだ。デイビスの欠片が!」



「デイビスの欠片がですか。そんなのありえるわけがないだろ。デイビスは今所在不明で目撃者はゼロ。見つかるはずも使えるはずもない」



啓介は恐ろしく真面目な顔だった。すると敏也が言った。



「お前はデイビスの事になるとすぐに我を忘れるなwww」



「笑い事じゃないぞ。もしデイビスが誰かの手に渡っていたらかなりまずい」



「それもそうだけどお前はデイビスの事を気にしすぎだよ。もっとリラックスしたほうがいい」



啓介と敏也は言い合いを始めた。すると副総理が怒鳴った。



「君たち。態度をわきまえなさい」



「すいません」



流石にまずいと思ったのか二人とも真面目に謝った。


その後薊副総理は1人ずつ握手して捜査を頼み話は終わった。


啓介はなぜか普段助けている鬼ババと同じ手の感触だと思い込んだ。

敏也は自分の飼っているスカンクを触っている気分になった。そして帰り際啓介が言った。



「なあ一つ言っていいか」



すると敏也が水道で手を洗い薊さんの臭いをかきけしながら答えた。



「いいぞ」



「薊副総理。手洗ってるんかな。めちゃくちゃ臭かったぞ」



「もともと服役中の囚人だ。不潔でもしかたがない」



そして二人は啓介の事務所に向かった。しかし後ろには謎の怪物の影がちらついていた。



「啓介、カップヌードル買ってこうぜ。腹減ってきたわ」



敏也がぐったりしながら言った。


昼飯を犠牲にして事件の詳細を聞いていたからだ。すると啓介が周りを天使達に囲まれたながら言った。



「いいねカップヌードル。醤油に味噌それから塩に豚骨。ああ美味そう」



「啓介ー戻ってこーい。天国に行くなー。マジで佑香泣くぞ」



「はぁ危なかった。いやー腹が減っては戦ができぬって言うからな。断食は命取りだ」



2人はべらべら喋りながら事務所に向かった。

しかし啓介が扉を開けた瞬間に2人の目は赤く染まった。


なぜなら扉の先にあったのは佑香の血まみれの死体。そしてアナザーデイビスの破片。



「佑香。嘘だろ佑香。何があった」



死体はもう佑香の顔がギリギリわかるぐらいまで損傷していた。鳥の嘴のような物で身体中を刺されていたからだ。人間がやれることのレベルをはるかに越える殺し方だ。



「啓介。何で佑香は鳥の嘴に刺されて死んでるんだ。人間にできるかこんなこと」



「分かんねえよ、そんなもん。でもこれだけは言える。佑香は他殺だ」



啓介の紅色に染まった目から血の涙が出た。もちろんそんなはずはない。なのに敏也には赤く染まって見えた。



「おい待て。何でデイビスが転がってるんだ。行方不明のはずだろ」



床にはデイビスの欠片が大量に落ちていた。もちろん啓介はデイビスなんて持っていない。



「とりあえず警察を呼ぶぞ。これは怪奇的な殺人事件だ」



1時間後──

警察が捜査をしている。しかし警察にもお手上げだ。ただ他殺で凶器が鳥の嘴っていうことしかわからない。



「敏也」



「どうした啓介」



「捜査を開始しよう。デイビスについて」



「了解。任せときな」



2人は事情聴取が終わると敏也の事務所に向かった。


事務所はスカンクの臭いで溢れかえっていた。

啓介は敏也のガスマスクを貸して貰いなんとかスカンクの臭いから逃れた。

何で敏也はこんな環境で生きているんだろう。



「敏也。この事務所パソコンがねえぞ」



啓介が近所のおばちゃんから貰った魚肉ソーセージを頬張りながら言った。



「あるよ、ここに」



敏也は魚肉ソーセージの皿の下を指差した。

啓介が皿をどかすとテーブルクロスに似たパソコンが出てきた。



「にしてもこのパソコン薄すぎやしませんか兄貴」



啓介は佑香がいたずらでお酒をふんだんに染み込ませた魚肉ソーセージを食べたせいで酔っぱらっているが誰も知ることは無いだろう。



「えーとアナザーデイビスっと。あれおかしいな」



敏也は頭を手で覆った。何がどうしたのかと啓介が訪ねた。



「どうした敏也、顔色が悪いぞ」



啓介がパソコン内を覗き込む。しかし検索には何も合致していないまっ白の画面が映っていた。



「どういうことだ。何も出てこない」



「多分コンピュータウイルスだ。ほら見ろAn idiotって書いてある」



An idiotとは日本語でバカがと言う意味で東国が作ったコンピュータウイルスだ。その感染力は凄まじく、感染から直す方法が無い。

西国ではデスウイルスと呼ばれている。



「つまり、この事件は東国の人間の手によって行われたってことだ」



敏也が息切れしながら言う。啓介は質問した。



「何でだ海外のハッキング集団かも知れないし西国のハッカーが東国のウイルスにハッキングした可能性もあるだろ」



「この事件の鍵は2つある。1つはAn idiotウイルスだ。啓介は知らないかも知れないが東国が所有しているウイルスが3つ。1つはVampire、2つはCrush、3つがAn idiotだ。この3つのウイルスは東国のある研究所で政府が極秘に研究している。そのため西国がこのウイルスを知ってる可能性は低い」



「でも探偵学校では教わっただろ。何で政府が知らないんだ。あとそのくらい知っとるわ」



啓介が怒鳴る。



「西国には憲法34条で政府はウイルス等の事件の詳細は知らないようにすると書かれている。だから知らないんだ。じゃあ2つ目に行くぞ。2つ目は…」



「まてまて何で政府が知らないんだよ」



「犬飼がサイバー攻撃の容疑者になったことがあってだな。それ以来政府はサイバー攻撃系の事件が大嫌いなんだよ」



「じゃあ改めまして2つ目に移ろう。デイビスの詳細な研究結果の殆どを東国が出している。だから東国が西国のアカウントが入って来た時の為にトラップを設置しているんだ。これでさっきの結果になるという訳だ」



これから彼らはこの事件をきっかけに一人の男の陰謀に巻き込まれていくことになる。

彼らは果たして謎の事件をどう解決するのか。お楽しみに。

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