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第八十話

 ミルネスとリョクの目の前が急に真っ暗になった。


 「なっ!」

 「きたか・・・」


 今まで晴天の景色だったのに、突如真っ暗になってしまったことで、妖精が仕掛けてきたことがわかった。暗闇になったことで、ミルナスはリョクがどこにいったのかわからなくなった。そして薄っすらと明かりが灯り、屈強な男が目の前に現れた。


 「お前は・・・」

 「ふん、女のくせに王を語るなど、俺は絶対に認めない!」


 ミルネスはその男に見覚えがあった。王位争奪戦の時に戦った対戦相手であったゴリラ族の男だった。猿人特有の長い手とゴリラ族の特徴である剛健な身体を持った男だったのだが、ミルネスは対戦相手とは別の意味でその男には嫌悪感を持っていた。


 「・・・なるほど。妾がわざわざ不快になるような幻術を見せてきたということか。」

 「何をごちゃごちゃ言っている!あの時は不覚を取ったが、これならどうだ?!」

 

 そういうと、ゴリラ族の男はいきなり縄で縛られたレベッカをミルナスに見せつけた。


 「お母様!!」 

 「レベッカ?!」


 まさかいきなりレベッカに会えるとは思っていなかったので、一瞬は喜んだもののこれも幻覚なのではと懐疑的にミルナスは構えていた。


 「お前が抵抗すれば、この娘がどうなるか?皆まで言わなくてもわかるだろう?」


 ゴリラ族の男は下卑た笑いをし、ミルナスを見下していた。


 「・・・幻術だとわかっていても、相変わらず気分の悪い男じゃな。」


 ミルナスがこのゴリラ族の男を嫌う理由は正にこれで、この男は姑息で卑怯な手を以前の王位争奪戦の時にも仕掛けられたからだ。


 「あの時は、毒やら通り魔やらと自分の手は汚さないようにしていたようだが、ここに来て、自身で人質を取るとはな。」

 「うるせぇ!娘の顔に傷がついてもいいっていうのか?!」


 そういうとゴリラ族の男は、レベッカの顔にナイフを近づけた。そしてレベッカの頬に薄っすらとではあったが、切りつけたのだ。その傷口からは少しであったが出血し、レベッカの顔は恐怖に引きつり、泣き出してミルナスに助けを求めていた。


 「いやーーー!怖い!お願い!お母様助けてーー!!」

 「貴様ぁあああ!!」

 

 幻術だとわかっていてもレベッカの悲痛な声で、ミルナスは今にも飛び出そうとしたその時、


 「ミルナス、待て!」

 「リョク殿か?!」


 暗くなってから、リョクの姿が見えなくなっていたが、リョクの声がミルナスの行動を制止させた。


 「いいか、お前の意識を娘の意識から離すのが目的なのだ。だから接触してはいかん。触れた途端せっかくここまで来たのに、夢の中から追い出されてしまうぞ!」

 「だ、だがどうすれば?!」


 耳を傾けたくはないが、嫌でも聞こえる娘レベッカの助けを請う声。ミルナスはこの幻術にどう立ち向かえばいいのかわからなかった。


 「・・・・この程度の幻術、私には無意味だ。」

 「え?」

 「散れ」

 

 リョクの一言で、辺りは一瞬で緑色の光に包まれた。  


 「なにぃ?!」

 「きゃっ!」


 その光を浴びたゴリラ族の男とレベッカは光に飲まれ消えていった。

 光が消えた途端、リョクが側にいたことに、ミルナスは気が付いた。


 「リョク殿、助かった。礼を言う。」

 「ふむ、私には造作もない。」 

 

 そして聞いたこともない声が上から聞こえてきた。


 『うそーーー!私達の幻術がこんな簡単に消えちゃうなんてーー!』

 『なんなのよ、あいつ!』


 声のした方を見上げるとそこには、ピンク色の髪の妖精とオレンジ色の妖精が小さな昆虫のような羽をヒラヒラさせて、怒りの表情をリョク達に向けていた。


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