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第七十九話

 「ここは一体・・・?」


 ミルネスが目覚めた時、そこは見たこともない場所だった。雲一つない大空にただただ草原が広がっており、それは見渡す限り続いていた。ミルネスはその草原に中にいた。そしてミルネスの側には見知らぬ幼い男の子が立っていた。そしてその男の子は見かけぬそぐわぬ口調で話し出した。


 「ここは娘の夢の中だ。」

 「・・・其方は・・・もしやリョク殿か?」

 「いかにも。ミルネス、よくわかったな。」


 ミルネスにすぐに自分だと気付いてもらえたことに、リョクはニヤッと笑った。その男の子の髪は深い緑色で、目は金色だった。そして頭には竜体の時と似たような角が頭にあったのだ。まさにリョクを人の形にしたような感じだったので、見当がついたのだろう。


 「ふふ、ここまで連れて来てくれたのはリョク殿だ。それに角と色でわかった。」

 「そうか・・・」

 「ここが、レベッカの夢の中・・・」

 「ミルナスよ、娘は恐らく中心部にいるだろう。そして妖精が我らに気が付けば妨害してくるのは間違いない。」

 「承知した。」


 ミルネスはリョクの話に生唾を飲み込んだ。

 

 「して、娘はレベッカはどうすれば目覚めるのじゃ?」

 「目的は簡単だ。娘を見つけて帰るように説得すればいい。それだけだ。」

 「そんなことでいいのかえ?」


 もっと何かすごいことをしなければいけないのかと思っていただけに、その内容はミルナスにとって拍子抜けだった。だがリョクは言った。 


 「そうだ。だがここまで来るのは簡単ではなかっただろう?」

 「確かにその通りじゃな・・・」


 そう、ここまでの道のりは簡単ではなかった。一ヶ月前突如レベッカが眠りに落ち、あらゆる手段を用いることをミルネスは惜しみなくやった。だが結局どうにもならず、やっと他国を巻き込んで、竜の助力で目覚めさせることができるところまできたのだ。


 「だが先ほど言った通り、妖精が間違いなく邪魔してくる。その手段の大半は幻術だと思う。だから惑わされぬように、気を付けるのだ。」

 「幻術?」

 「妖精の得意技なのでな。幻術だから実際は何もないのだが、見る分には現実味があるからな。あれは厄介なのだ。」

 「うむ、しかと肝に銘じよう。」


 そしてミルネスとリョクは夢の中心部へ向かっていった。





 「!」

 

 レベッカは突如後ろを振り向き、急にキョロキョロと周りを見渡した。


 「あれ?なんだろう?」

 『レベッカ、どうしたの?』

 「あ、うん。なんか懐かし感じがしたの。」

 『懐かしい感じ?』


 ピンク色の髪の妖精が不思議そうにしていると、水色の髪の妖精が気が付いた。


 『え?!嘘?!』

 『どうしたの?』


 オレンジの髪の妖精がのんきに聞き返すと、水色の髪の妖精は剣呑な雰囲気を漂わせ、


 『・・・邪魔者が来たみたい・・・』


 その言葉にピンクの髪の妖精とオレンジの髪の妖精が驚いた。


 『そんな!ここは私達だけの場所なのに!』

 『一体どうやってこの場所に?!』


 本来であれば、この夢の中に侵入者などあるはずがなかっただけに、不測の事態に妖精達は動揺していた。


 『・・・いいわ。邪魔をするなら、追い返すまでよ!』


 水色の髪の妖精は、その可愛い姿に似合わない臨戦態勢に入っていた。


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