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第七話

 『・・・うん、大方じっちゃんの目論見通りに育ったわよね?私。そうじっちゃんは訳アリの私をここまで育ててくれた・・・』


 目を伏せていたレイリアは目を開き、くすっと笑った。


 「アレクは優しいのね。」

 「え?」

 「気持ちは嬉しいわ。だけど、その見なかったって提案は却下ね。」

 「えっ!?」

 「っていうか、むしろ匿う気満々だけど?」

 「ええっ!?だ、だめだよ!そりゃおねえさんが強いのはわかるよ!だけど僕を匿ったりしたら迷惑かけるだけだから・・・ 」


  そういうとアレクは伏せがちに寂しそうな目をした。だけど、そんなアレクをお構いなしにレイリアは明るく振る舞った。


 「ふふーんお姉さんの強さはこんなもんじゃないのよ?」

 『まーじっちゃんにはまだまだっだって言われるだろうけど』と、心で少し言葉が続いた。

 「でも!!」


 レイリアはアレクの傍までいくと、しゃがんでアレクの目を見つめながら話した。


 「実は私もね、君と似たような境遇だったの。」

 「え?」

 「小さい時にね、殺されそうになったところを、じっちゃんに助けてもらったの。」

 「!?」

 

 アレクはレイリアの言葉に驚いて、目を見開いた。

 

 「そんな・・・レイリアさんも・・・」

 「だからね、余計にほっとけないなーって」

 「でも!」


 それでも食い下がるアレクにレイリアは大きなため息をついた。


 「どうせ、行くところないんでしょ?それとも行く当てはあるの?」

 「えっと・・・それは・・・」


 アレクは俯いて、半泣きになっていた。そんな様子をレイリアはしばらくじっと見つめ、


 「・・・そんな場所ないんでしょ?なら素直に甘えておきなさいな。子供が意地張るんじゃないわよ。」


 そういうとレイリアはニカっと微笑んだ。その顔を見たアレクはさらに涙溢れてきた。


 「どう・・して・・・こんな会ったばかりなのに・・・」


 アレクは泣き出した。今のアレクは自分が継母の策略で殺されそうになった頃よりは少し大きく見える。先程の発言が本当なら、殺されそうになったばかりか、アレクと関わった人にも何かしらの理不尽な行為が行われていたということだろう。


 「私もね、会ったばかりで、じっちゃんにすぐに保護してもらったのよ。」

 「じっちゃん・・・」

 「あぁ説明不足だったわね。私の保護者、親代わりなってくれた人よ。ヴァンデル・ブロームって言うんだけどね。殺されそうになってた私を助けてそのまま匿ってくれたのよ。それにね、すっごく強いのよ!悔しいけど私よりも!」

 「レイリアさんよりも強いんだ・・・」


 レイリアは悔しいと言いながらも、その表情は嬉しそうだった。それだけで、レイリアがヴァンを慕っているのが見て取れた。しかしアレクはふと浮かんだ疑問を口にした。


 「あれ・・・?でもここはレイリアさんの家なんですよね。ということはそのヴァンデルさんも一緒なんじゃ?」


 そう、アレクの疑問はこの家に保護者であるヴァンが不在だったこと。しかしその疑問を聞いたとたんレイリアは、今にも泣きそうな表情を浮かべた。

 

 「あぁ、じっちゃんは・・今はいないの・・・」

 「え?!あ、あの余計なこと聞いてごめんなさい!」


 『そうか、じっちゃんっていうくらいだ。きっとお年を召されているはず。今この場にいないのは・・・そうか、そういうことなんだよな・・・』 


 アレクは聞いてはいけないことを聞いてしまい、申し訳ない気持ちになった。そして、先程のレイリアの申し出に思い至った。


 『あ、だからか!レイリアさんもヴァンデルさんがいなくて寂しいのもあるんだよな。だから僕を匿う気になったのかもしれない・・・』


 「あの・・・まさかそんなこと言ってもらえるなんて思っても、みなかったから・・・少し・・・少しだけ考えさせてもらってもいいですか?」

 「・・・そうね、急に言われて困るわよね・・・でも、どのみちは考えが決まるまではうちにいればいいわ。」

 「そんな迷惑じゃ・・・・・・」

 「さっきも言ったけど、行くところないんでしょ?」

 「・・・」

 「じゃ、決まりね!」

 「あの・・・よろしくお願いします。」

 

 アレクが軽く会釈するとその頭をレイリアはわしわしと撫でた。アレクは少し照れくさそうにしていた。

 

 『ふふ、思い出すなぁ。じっちゃんもこうして私の頭をよく撫でてくれたっけ。』   

 

 レイリアは今この場にはいないヴァンに思いを馳せていた。


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