第七十七話
『ふふ、可愛い~』
「わっ、花冠ステキ!ありがとうー」
レベッカは羽の生えた小さな妖精に、花冠を頭に載せてもらい喜んでいた。レベッカは花が咲き乱れた場所にいた。それも幻想的で、今まで見たこともない花が咲いておりそれはどこまでも続いてるかのような花の絨毯だった。レベッカの周りには3匹の妖精がふわりふわりと飛び交っていた。その小さな妖精達はピンク色の髪の子と水色の髪の子とオレンジ色の髪の子の三人いた。
『ね、ここはステキな場所でしょ?』
「うん、とっても楽しい!」
『だったら、ずっとここにいようよ!それに美味しいジュースも果物もいっぱいあるんだよ!』
「うーんそうしたいのは山々だけど、やっぱりお母様が心配するし・・・」
ここにいるのは楽しい。だが、やはり母親であるミルネスが心配してるのではないかと、レベッカの顔は曇った。
『大丈夫よ!私達がちゃーんと言っといてあげるから!』
「本当?!それならもう少しここで遊んでいようかな?」
レベッカは妖精の言葉を信じ、引き続き小さな妖精達と戯れ、お花で冠や首飾りなどを作ってキャキャッキャキャッと遊んでいた。
「「「「「妖精?!」」」」」
一同は、リョクの「妖精の仕業だ」という言葉に驚いていた。
あれからすぐに、レイリア一行はレベッカ王女の寝室に赴き、リョクはレベッカの頭上に手をかざした。手はポワっと光り、すぐにそれは終わった。そしてリョクは妖精の仕業であると告げたのだ。
「うむ、恐らく取り込まれているのだろう。だから夢に囚われ、眠ったままの状態なのだ。」
「ま、待ってくれ、リョク殿。娘が妖精に取り込まれたとはどういうことだ?」
「端的にいうならば、妖精に気に入られたのだ。故に呪いではないということだ。」
「え?!気に入られて眠ったままってどういう状況よ?!」
気に入られてるのに、こんな困った状況になっていることに、レイリアは意味がわからなかった。
「妖精が現世に姿を現すのは稀でな。だがたまたまというか、何かのきっかけでこの娘と妖精が出会ったのだろう。恐らくその時に気に入られてしまい、夢の中で囚われてしまったのだ。妖精は夢の中ならば、姿を具現しやすいからな。夢の中で、妖精と戯れているのだろう。」
「つまり遊んでるんだ・・・」
それを聞いて、レイリアは脱力してしまったが、次のリョクの言葉で、そんな生ぬるい状況ではないことを知った。
「だが、それも初めはいいが、続かない。」
「リョク殿、それは一体どういうことだ?」
「妖精は先にも言った通り、きまぐれで悪意はない。だが無責任でな・・・」
「無責任だとどうなるの?」
「今は気に入られてるから、夢の中で遊んでいるのはまだいい。ただ飽きた時にちゃんと夢から覚めさせてくれればいいが、厄介なのはそのまま放置された時だ。」
「・・・なんとなく、想像はつくけどどうなるの?」
レイリアは嫌な事を想像した。それが当たって欲しくないと思っていたが、やはり現実は甘くなく想像通りだった。
「可哀想だが、そのまま意識は夢の中に閉じ込められ、こちらに帰ってこれなくなる。つまり意識は戻らず衰弱死するだろう。」
「え、でも今でも一ヶ月もこの状態なんだよ?」
「それは妖精と戯れることで精気を補うことができているからだ。だから今のところ身体には異常はない。」
それを聞いて、ミルネスは少しホッとした。
「そうか、もしかして娘に何かしら身体に異常があればどうしようかと思ったが、リョク殿の見立てでは今のところ大丈夫なのじゃな。」
「そうだ。今のところは、だ。だから妖精が飽きないうちに、覚まさせなければならん。」
「それってどうやれば?」
「直接夢の中に行って、接触すればいい。」
「・・・えっ?夢の中?」
アレクは聞き間違いかと思い、確認のため聞き返すと、リョクは頷いた。
「できれば、血縁者が好ましいが・・・」
「!」
ミルネスは血縁者という言葉に、自分が該当しないため、真っ青になった。それに気が付いたレイリアは慌ててリョクに訴えた。
「リョク、女王様と王女様は血の繋がりはないの。それでも、これまで親子として!」
「・・・うむ、無論承知しておる。」
気のせいかリョクが少し嬉しそうな表情を一瞬したのを、レイリアは見逃さなかった。
『あれ?気のせい・・かな?』
「だが生みの親よりも育ての親というだろう。今までの絆があるなら大丈夫だと思うぞ。」
「ほ、本当に?!」
血縁者と言われた時は、ルミナスは焦ったがリョクの言う育ての親という言葉に安堵した。
「私がこの娘の中の夢に行けるように、橋渡しをしよう。」
「リョク殿、恩にきる!」
ルミナスが嬉しそうにするのを見て、リョクも嬉しかった。だが、気を引き締め、
「・・・ミルネスよ、喜ぶのはまだ早い。この娘が目覚めた時にまたその言葉をくれればいい。」
「リョク殿言うとおりじゃな。では、早速頼む。」
「うむ、ではミルネスよ、こちらへ」
ミルネスが、リョクの元に行こうとすると、アントニーが慌ててそれを遮った。
「ちょ、ちょっと待ってください!」




