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第七十四話

 ロイスナー王国の宮殿の一室で、窓辺の椅子に座った金髪の女性が、自身の大きなお腹を愛おしくさすっている場面だった。その様子を見て、アレクは気が付いた。 


 「もしかして・・・」

 『・・・見ての通り、我とフィンの子供だ。』

 

 この頃には、金の竜の力を行使したロイスナー王国は隣国との争いに圧勝し終止符が打たれていた。ロイスナー王国は隣国を領土とし、国土を広げると国名をリンデルベルク帝国と名を変えた。そしてその功績によって、フィンは皇太子となり、そして初代リンデルベルク帝国の皇帝となった。       


そして、


 「おぎゃーおぎゃーおぎゃー」

 「おめでとうございます!世継ぎの男の子ですよ!」


 助産婦がリリアナから生まれた赤子の身体を綺麗にすると、赤子の身体の異常に気が付いた。

 

 「え・・・鱗??」


 赤子の身体には金の鱗が、身体の上半身である胸の辺りと腕の上腕に当たる部分にそれはあった。助産婦を含めた宮廷医師がざわついている様子を見ていたアレクは、ぼそりと言った。  

 

 「竜紋・・・」

 『そうだ。これが竜紋のはじまり。これがあることで、ここからお前たちは我の力を引き継ぐことになったのだ。竜の力を引き継ぐ者には、もれなく我と同じ金の鱗が印となる。だが・・・』

 

 金の竜が言葉を一旦切ると、アレクの視界は暗転した。

 

 「?!」


 そして暗闇の中、金の竜がアレクの前に姿を現した。


 『ヒントはここまでだ。』

 「ヒント?一体どういうことだ?」

 『すべてを見せた訳ではないが、真実は見ただろう。あとはお前たち次第ということだ。』

 「ちょっと待ってくれよ!一体何のことだがわからない!」

 『今回の我の同胞については、それを成すだけの力は解放してやろう。だが、そのあとについては、小さき者よ。お前次第だ。』

 「力を貸してくれるのはわかったけど、お前次第って言うのは一体??」

 『はじめに言っただろう?代償が必要だと。追々わかるだろうよ。』

 

金の竜の一方的な物言いで、アレクは訳がわからなかった。だが、金の竜は今はそれ以上は伝える気はなかった。

 

 『さあ、帰るがいい』


 金の竜の言葉に、またアレクの目の前が暗転した。

 


 


 そして次に目を開けると、


 「アレク!!」

  

アレクの目の前には心配そうにしたレイリアの顔があった。


 「リア・・ねえさん?」

 「良かった、アレク意識が戻ったのね!」


 レイリアはホッとしてアレクに抱き着いた。


 「ちょ、ちょっと・・・・うっ!」


 アレクは赤面し慌てたが、急に全身に痛みが走ったのだ。

  

 「い・・痛い・・・!」

 「えぇ?!アレク一体、どうしたの?!あっ!!」 


 レイリアは慌てたが、アレクに何が起こったのかすぐに気が付いた。抱き着いたままの姿勢だったので、アレクの顕わになっている首周りに、今までなかった金の鱗が見えたからだ。それも今までの薄いといったものではなく、金の色が濃く鮮やかな鱗だった。


 「鱗の範囲が広がってる?」

 「っ・・・うっ・・・」


 アレクは激痛にどうにかなりそうだったか、金の竜の言葉が頭に浮かんだ。


 『・・・それを成すだけの力は解放してやろう』


 まさか、この痛みが力の解放?ってことなのか?

 アレクは痛みの中意識を手放した。


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