第七十話
「俺やるよ。」
「!」
アレクの言葉にレイリアは反応した。
「で、でも危険なのよ?「金の竜」もなんか聞いてるのとは話が違うみたいだし・・・」
「らしいな。」
「それに、アレク貴方はまだ子供なんだし・・・」
「それでも、やるよ。それにさ・・・」
「?」
「リアねぇさんが逆の立場でもやるだろ?」
「え・・・っと・・・」
アレクに言われ、レイリアは気が付いた。確かに自分がアレクの立場だったらやるだろうと。その考えに至り、レイリアは大きなため息をついた。
「わかったわ。絶対に、無理はしないでね。」
「うん。」
そしてアレクはリョク(卵)に向き合った。
「リョク、やってくれ。」
『わかった。では、其方の額を卵に付けてくれ。』
アレクは追われた通り、自身の額にかぶさっている毛を手でまくり、卵に額を付けた。その瞬間、アレクは意識を失くし、足元が崩れ落ちて倒れそうになったのをヴァンがあわてて、アレクの身体を抱き起こした。。
「アレク?」
ヴァンの呼びかけに、アレクは意識がなくなっているので、応えなかった。
そして身体をソファに寝かせた。
「アレク・・・」
レイリアは心配そうにつぶやいた。
『ここは・・・?』
アレクは今、先ほどまでとは全然違う場所にいた。足元も地面に付いている感じもなく、周囲はいろんな色が重なり合った空間に浮遊している感じだった。アレクはなぜ自分がこんな場所にいるのか、一瞬理解できなかったが、
『アレク、ここは深層意識の世界だ』
「リョク?!」
アレクはリョクの声に、今の現状を理解することができた。
『私の出番は、アレク君をここまで連れてくることだ。あとは、かの者が君を導いてくれるだろう。』
リョクがそういうと、色んな色が重なった空間が、一気に金色に染まり、眩しくてアレクは目を開けていられなくなった。
『我の血を引き継ぐ小さき者よ。ここへ何し来た?』
その声はリョクの声ではなく、女性の声に聞こえた。そして目をゆっくり開けると、目の前には金色の巨大な竜がアレクの前に立ちはだかっていた。
その竜は、全身まばゆい黄金の鱗に覆われており、瞳は鱗と同じ黄金色で、見る者の心を見透かすような、そんな印象を受けた。頭には二本の長い角があり、蝙蝠の羽のような巨大な翼を持っていた。そして長くしなやかな尾があった。アレクは初めて見る金の竜の姿に圧倒されていた。
「これが・・・金の竜・・・」
『眠っていた我を起こす、久方ぶりに同胞の声がしたかと思えば、その姿は見えず、まさか人間ごときが、ここに来るとはな。』
金の竜の言葉に、リョクが言っていた意味がアレクにはよくわかった。確かに好意的ではないということに。そして竜の言葉に圧を感じるも、アレクは、それに屈するわけにはいかなった。
「俺は、アレクと言います。えっと・・・その、金の竜、貴方の助けがいるんだ。俺は・・・貴方の血を継いではいるものの、その、はっきりいうと力が弱い。だから俺の力を強くするためにも、貴方の力が必要なんだ!」
『・・・ふん、いきなり来たかと思えば、力を貸せと?ずうずうしいやつだな。』
「す、すみません。」
アレクは金の竜の言うことに、確かにその通りだと思った。
「だ、だけどそれをしないと、リョクが・・・グリーンドラゴンの卵が孵ることができないんだ!」
『・・・なるほどな。だから同胞がお前をここに遣わしたということだな。』
「その通りだ。」
アレクはコクリと頷いた。
『ふむ、お前たち人間ならば、力を貸すなどありえないが、確かに同胞が困っているなら話は別だ。』
「だ、だったら!!」
『だが、当然簡単ではないぞ?力を得るのは、それなりの代償が必要だからな』
そういった金の竜の表情は、心なしか、ニヤリと笑っているように見えた。




