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第六十九話

 アレクは、リンデルベルク帝国の皇族で、金の竜の血を受け継いでいる。現段階ではまだ力は弱いけれども、『竜紋』が表れていることから、竜の血を引継いでいることに間違いはないからだ。だからこその申し出あったが・・・


 『その通りだ。』

 「「「!」」」

 『と、いいたいところだが、そう美味い話ではなくてな。』

 「?どういうことだよ、はっきり言ってくれよ。」

 『はっきりいうと、力が弱いからだ。』

 「!」


 リョクの言葉にアレクは少しショックを受けた。


 「たしかに・・・俺の『竜紋』は、範囲も狭いし薄いからな・・・」


 アレクはそういうと、服の上から『竜紋』が出ている右の二の腕に当たる部分をもう片方の手でぎゅっと掴んだ

 

 「え、じゃ結局どうしたらいいの?」

 

 レイリアの問いに、リョクは答えた。


 『簡単なことだ。アレクに頑張ってもらうしかない。』

 「え?これって頑張ったらどうにかなるもんなのか?」

 

 アレクは『竜紋』事態は勝手に身体に現われるものと思っていたので、驚いていた。『竜紋』は努力でどうこうなるものとは思っても見なかったからだ。


 『もちろん、頑張るというのは、鍛えるとかそういうことではない。』

 「だったらどういう意味だ?」

 『私がアレク、お前の精神に干渉し、『金の竜の記憶』の追体験をしてもらう。そうすれば、今よりも竜の力を使うことができるだろう。』


 アレクは身構えていただけに、その内容に拍子抜けた。


 「なんだ、そんなことか。それなら・・・」

 『だが・・・私が自分で言ったものの、正直言うとおすすめできない。』  

 「な、なんでだよ!」

 『正直に言おう、君の中にある「金の竜」は君に・・というか、人間に対して好意的には感じられないからだ。』


 それを聞いたアレクもレイリアもヴァンも驚いた。


 「え・・・たしか伝えられている話では、金の竜のリリアナは王子様と愛し合って建国したって話じゃなかったっけ?」

 「だな。リンデルベルク帝国のガキでも知ってる話だったよな?」

 「まさか・・・違うのか。」


 アレクは、あることに思い至った。


 『そうだな。残念ながら君の中にある「金の竜」はむしろ愛とは真逆の感情が渦巻いているように見える。』


 アレクはそれを聞いて思い至ったことが勘違いではないことを確信した。


 「・・・・そうか、つまり皇族が都合のいい話にでっち上げた、ってわけなんだな。」


 リョクの話が本当であれば、建国の話は竜と人が愛し合ったというロマンチックな話ではなく、むしろ金の竜を怒らせてしまっていたのに、ご先祖が自分たちに都合の良いように作りかえた話だったということが判明したのだ。  



 『私も過去に何があったのかはわからない。だが先ほども言ったが、私が干渉することで、追体験をした君は「金の竜」が何を思っていたのかを知ることになるだろう。そしてその体験で竜の力を増幅させることができる。だが・・・「金の竜は」は決して君に連なる人に対して好意的ではない。だから安全の保証ができないのだ。もちろん私としては、協力はしてほしい。だが、これは協力レベルで済まないことは私もわかっている。だから強制はしたくない・・・』


 リョクは、本当は協力はしてほしいが、かといってアレクの安否に関わることゆえ、リョクも心配していた。


 「・・・だけど、それをしないとリョクあんたは孵らないし、お姫様も眠ったままなんだろう?」

 『・・・・・』


 リョクは何も言えなかった。そしてレイアリ自身もアレクに危険が及ぶなら、頑張ってほしいとは、到底口には出せなかった。


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