第六十三話
アントニーも応接室のソファに座ったところで、
「悪いけど、さっきのもう一回こいつらに話してくれるか?」
ギードの言葉にアントニーは心得たとばかりに、頷いた。
「自分は、女王の使いでこのサザの町まで赴きました。それは占いでそう啓示を受けたからです。」
「占いの啓示?」
レイリアがどういう意味かと問うと、
「イ・ベルディ獣王国では、年に二度、国にまつわることを占い、その啓示で事を進める事があるのですよ。今回こちらに伺うことになったのも、占いの内容がそうだったからです。そうですね、わかり易く言うと、人間で言うところの、神官が女神からの啓示を承る、みたいな感じでしょうか。」
「確かにそういうのがあるのは聞いたことあるわ。」
そう、言われてみればこちらにも似たようなものがあること言われレイリアも納得した。
「占いの話に戻りますが、占いの啓示に出たのです。サザの街に眠り姫を目覚めさすことができる竜に関する何かがあると。」
「「「??!!」」」
竜というワードに思わずレイリア達は一斉にテーブルに鎮座している卵を見た。そしてもう一つの気になるワードについて、レイリアが質問した。
「えっと、眠り姫っというのは?」
「はい。実は女王には王女である娘がいるのですが、それが一ヶ月ほど前に突如、眠りから目を覚まさなくなってしまったのです。」
「一ヶ月前・・・?」
レイリアとアレクは一ヶ月前というワードに引っ掛かりを覚えた。それは報告にあった、ブリュネ村の異変が始まった時期と一致していたからだ。
「はい、王女は気絶するように崩れ落ちて、そのまま眠ったままなのです。いろいろ見てもらいましたが、呪いのようなものではないかと。」
「呪い?!」
レイリアは、自身がもつ呪いを払うことができる祝福の出番かと思い、思わず声が大きくなった。
「あ、いえあくまで呪いのようなものではないか、という憶測ですので、確定ではないのです。」
「あ、そうなんですね。」
「自分を含め数名が、その占いにある内容を解き明かし、王女を何としても目覚めさすようにと命を受けて、ここに参った所存です。」
「な、そういう話だから、俺がここに連れてきた意味がわかっただろ?」
そう、ギードが言うと、納得しコクコクとレイリア達は頷いた。
「女王、ミルネス・ツェスラヴァ様と言うのですが、基本奔放な方なのですが、娘であるレベッカ王女には惜しみない愛情を注いでおられます。どうか王女を眠りから解放するために、皆様のお力添えをいただけないでしょうか?」
そういうと、アントニーは立ち上がり、深々とお辞儀した。




