第五十二話
「じゃ、アレクお仕事探しといてね。」
「わかった。」
レイリアは、ヴァンの言いつけでギードに渡すものがあるということで、ギルドマスターの部屋に向かった。その間にアレクは次の仕事を物色すべく、依頼書がある掲示板を見ていたのだが、カルロッタは受付から出てきて、アレクの傍にやってきた。
「ねぇねぇ、アレクくん、次はどんな仕事がいいの?いつもお姉さんとかヴァンさんとしかお仕事してないみたいだけど、パーティは組まないの?よかったら私、知り合いいっぱいいるからパーティ紹介するよ?」
「事足りているから結構だ。話は終わり。」
「えぇ~~アレクくん連れないよぉ。もう少しお話しようよ~♪」
「あのさ、俺は別にあんたに用事はないから、構わないで欲しいんだけど。」
カルロッタはアレクに積極的に話しかけるが、当のアレクは塩対応である。
「えーと。アレク君が依頼書決めたら、すぐに処理してあげようと思って♪」
「・・・・決まったら、受付にいくし、アニタさんもいるから別に側にいなくていい。つか鬱陶しいし。それにサボってるようにしか見えないよ。」
「えーどうしてそんなこというの?」
カルロッタは緑の目をウルウルとして、アレクに訴えていたが、アレクはガン無視で引き続き仕事を物色していた。しかし、周りの反応は少し違った。なぜならカルロッタは、見た目は儚げなフワフワなピンクの髪の可愛い女の子なので、ギルドではそこそこ人気者になっていたのだ。カルロッタへのアレクの塩対応は、カルロッタの信望者から反感を食らうものだった。
「カルロッタちゃんに話かけられているのに、なんだよあいつ。生意気だな!」
「カルロッタちゃん俺ならあんな態度とらないのに、可哀想~」
「カルロッタちゃん今日もかわぇえ~」
などと、言っている声がちらほら聞こえていたが、
『じゃお前らが構ってやれよ。』
と言いたいところではあったが、そうなるとまたややこしくなるのが分かっていたので、アレクはだんまりを決めこんでいた。
「だってぇ・・・私諦めきれないんだもん・・・」
カルロッタは、しょんぼりした様子で、未練があることを吐露するも、アレクは、はぁーと盛大に溜息をつくと、カルロッタに向き合った。
「俺はっきり言ったよね。付き合えないって。」
「聞いたけど・・・でもアレク君、今は誰とも付き合っていないんでしょ?なら私を知ってもらえば、まだチャンスはあるんじゃないかなーって♪」
そう言って、アレクを上目遣いに見るも、アレクには全然響いていなかった。
「ごめん。説明不足だったようだな。俺には好きな人がいる。だから付きまとわないでくれ。以上。」
「え?」
アレクはそう言うと、スタスタをカルロッタから離れていった。残されたカルロッタは、一瞬呆然としていたが、思考を取り戻した。
「アレク君・・・好きな人いたの?」
前回は交際できないと言われただけだったので(そしてその時も、アレクは言うだけ言ってとっとと去っていったのだ。)アレクに好きな人がいるとは思わなかったのだ。またもや置いて行かれたカルロッタであったが、思考を巡らせていた。
『ふーん。ちょっと意外。そんな素振りなかったし好きな人いないのかと思ってた。でも、女っ気なかったから、可愛い私がちょーっと構ってあげたら、落とす自信あったんだけどなー。だけど好きな人いたんだ・・・・そうなると、話が変わってくるわけで、本気でやるしかないわよねぇ。まずは誰が好きなのか、探りをいれちゃうかぁ』
そんな思惑でカルロッタは意味ありげに、アレクの後姿を見つめるのだった。
ギルドマスター部屋にて___
「はっくしゅん!」
「ん?リア風邪か?」
「うーん、なんか悪寒が走った気はしたけど・・・誰かが噂してるとか?」
「ほぉーリアもいよいよ色気づいた話が出て来たってか!」
ギードがニヤニヤするも、レイリアは一瞬考え込んで、
「・・・・・言われてみれば全然そういう話なかったわね。」
「・・・リア遅すぎだろ・・・・・お前さんらしいといえばそうだけどよ」
レイリアが気付いていないのは無理もない話で、レイリアに好意があった輩はアレクが秘密裏に排除していたからだ。
「ま、でも今の生活に満足してるし、別に困ってないからいいのよ。」
「とはいえ、そろそろ気付いてやってもいいと思うんだがな。」
「気付くって??」
「まぁいいや。俺から言うことじゃねぇからな。」
「??」
アレクの恋心は、アニタやギードには筒抜けであったが、肝心のレイリアは毛ほども気付いていないのであった。




