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第四話(レイリアの過去①)

 それはレイリアとじっちゃんこと『ヴァン』との、初めて出会った日のことだった。

 


 深夜の森の中、それは幼いレイリアがまさに殺されそうになっているところだった。


 「嬢ちゃん恨むんなら、俺達じゃなくこんなことを依頼した親を恨むんだな!!」


 『かあさま!!』


 男は幼いレイリアの肩を刺した血の付いた剣をかかげ、レイリアを目掛けて振り下ろした。だがその時___

 

 「ぎゃぁあああああ!」


 本来振り下ろされるはずの剣は、男の悲鳴と重なって振り下ろされることはなかった。


 「え??」


 レイリアを殺そうとした誘拐犯は、そのまま膝から崩れ落ちて、地面に倒れてしまった。


 「あ、兄貴??!!」


 もう一人の誘拐犯は、後ろの気配に気付き、とっさに幼いレイリアを掴み、盾にした。


 「いたっ!」

 「だ、誰だぁ??!!」  


 誘拐犯の残った片方はレイリアを人質にする形となり、気配のする方に問いかけた。すると木々の合間から、二人の大柄の男が姿を現した。


 「うわっヴァン、死んじまってるんじゃねぇか?!」

 「しょうがねぇだろ。距離あったんだから。助ける方が先決だろうが?」

 「まぁそれもそうだな。」

 

 「な、なんだてめぇら!!」


 誘拐犯は虚勢を張ったが、近づいた男たちの体格差は一目瞭然で、一人は年は30代半ば、黒髪の短髪で顔の頬には大きな傷があるのが特徴の男と、もう一人は元はブラウンの髪に白髪が混じった短髪に口髭のある老齢の男だった。さらに、背中には斧を腰には大剣を装備しており、対戦することになれば誘拐犯が不利なのは明白であった。ただヴァンと呼ばれた老齢の男は体に包帯を巻いていた。

 

 「ちっ、手加減できなかったな。」

 「仕方ねーよ。こちとら仕事終わった帰り道だ。まっヴァンの場合はじじいと怪我のせいもあるかもな」

 「フンっ、言うようになったな。」


 などと、二人は軽口を叩いていたが、人質をとっている誘拐犯を改めて凝視して、ヴァンは驚いた。


 「っと、おい!くだらねぇこと言ってる場合じゃねぇ!あの子供、よく見たら大怪我してるじゃねぇか!」

 「うわ!ホントだ!お前らこんな小さい女の子に何してんだ!!」


 幼いレイリアは肩に傷を負っているせいで、左側にはべったりと服に血が付いていたからだ。


 「う、うるせぇ!!お、お前ら、ち、近づいたらこのガキ殺すぞ!」

 「「!!!」」

   

 もともとレイリアを殺害する予定だったことから、その脅しはおかしなものだが、たった今現れた事情を知らない二人の男には効果てきめんであった。


 「ちっこんなことなら、ついでにあいつも殺っとけばよかったな。」 

 「おいヴァン、どうすんだよ!」

 「まぁギード、落ち着けって。俺に任せときな。」


 そう言うとヴァンは誘拐犯に向き合った。


 「まぁーなんだ。俺らもさ、いきなりで悪かったけどよ。けど普通に考えたら、こんな小さな女の子が殺されそうになってたら助けるだろ?」


 「あぁ!!何言ってんだてめぇ?!」

 「おいおい落ち着けよ。」


 言うなりヴァンは誘拐犯に近づいた。


 「おい!近づくなって言っただろ!」

 「おおっと。すまんすまん。年寄りだからよ、うっかり忘れちまっうんだよなー」


 ヴァンはわざとらしく素っ惚けていた。

 

 「くそぉ、なんで俺がこんな目に!」


 誘拐犯は焦っていた。依頼通り貴族の子供を殺せばそれだけで終わる仕事のはずだったのに、まさかの助っ人?という想定外のことに、必死でこの場をどう切り抜けるか考えを巡らせていた。


 『そ、そうだ!確か・・・、アレを兄貴が持ってたはず?!』


 誘拐犯は何とかこの場を切り抜ける手段を思い付いた。しかしそう思ったのも束の間、




 「なーんてな。」


 ヴァンはそう言うや否や、相手の間合いに一瞬で詰め寄った。

 

 「て、てめっ!!」

 「ふん、隙だらけだな。」


 ヴァンは詰め寄ったかと思えば体術で、誘拐犯の顔面に肘鉄を食らわせた。

 

 「ぐぇっ!!」

 「ほいっと」


 誘拐犯が、痛みで両手を離したことでレイリアは解放され、ヴァンは瞬時にレイリアを抱え、後退すると同時に誘拐犯の腹にケリを食らわせた。


 「がっああぁ!!」


 「話になんねーな」 

 「あーあ、相手が悪かったなー」

 

 ギードの呑気な声と共に誘拐犯は後ろ向きに地面に吹っ飛んだ。


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