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第二十二話

 アレクは驚いていた。レイリアがここまで怒っているのを初めて見たからだ。


 『自分が話していないのに、詳しく聞いたら不公平だと思って、聞いてなかったけど、リアねぇさんも・・・そうか俺と同じように、身内に殺されそうになってたんだな・・・』


 レイリアが以前に『自分も似たようなものだ』と言っていた言葉に、本当に似た境遇だったのだなと納得した。

  

 「で、どうするんだ?」

 「なにが?」


 レイリアはギードがいう意味がわからなかった。


 「だから、あっちに帰るのかってことだよ。」

 レイリアは只でさえ怒っていたのに、さらに憤慨して、


 「おじさまふざけないでよ!ありえない!!私の家はじっちゃんのところだけよ!」

 「だよなぁ。」


 ギードも苦笑いだった。


 「だが、やっこさんには帰らないではすまないと思うがな」

 「じっちゃん、どういう意味?」

 「今まで、ほったらかしで気にもしていなかったのに、急な帰還要請だ。間違いなくリアに利用価値がでてきたからだろう。もしくは・・・」

 「もしくは?」

 「お前さんの力についてじゃないか?」

 「「あぁ・・・」」


レイリアとギードはそれを聞いて腑に落ちた。だがそれを聞いていたアレクは、理解ができず、疑問を口にした。


 「リアねぇさんの力って・・・どういう意味??」

 「うーん、実はね。私とある『祝福』があるのよね。」

 「祝福??」


 アレクは驚いた。何故なら今まで一度もレイリアから、祝福持ちだと言うのは聞いたことがなかったからだ。


 「普段使う機会はあんまりないんだけど、『呪い』に有効なの。」

 「呪いに!?」

 「そうよ。例えば・・・そうねぇ『呪い』で病気だったりとか死に至らしめるとかね。そういうのを『解呪』することができるのよ。」

 「リアねぇさん、それってレアスキルなんじゃ・・・!」


 この世界には『祝福』と呼ばれる個人特有の『ギフト』持ちが非情に稀にいるのだ。国によって『祝福』であったり『ギフト』という呼び名になるが、基本それらの能力は、個々によって違う。空を飛べるモノ、人の心を読むモノ、動物と話せるモノなど、その種類は千差万別で能力によっては国の保護対象になりえる場合もある。そういったモノを『レアスキル』と呼ぶのだ。しかしそれらはあくまで申告と確認によって成り立つので、『祝福』持ちが全て国に申告するわけではない。


 「うーん、そうかもね。でも申告とか面倒だし、公にはしていないの。だからアレクも内緒にしててね。」

 「い、いいけどそんな簡単に言っちゃってよかったの?」

 「信用してるから問題無し!」

 

 そいうとレイリアはニカっと笑った。


 「俺がリアに出会った頃、実は呪われててな。その時にリアが解呪してくれたんだよ。それで発覚したんだ。」

 

 「そうそう。あの時に初めて『祝福』に気が付いたのよね。じっちゃんがずっと包帯しているから、怪我してるなーって思ってたんだけど、まさか呪いだったとは驚いちゃった」


 レイリアは当時のことを思い出していた。

 ヴァンとギードと出会ったばかりの頃、あの時二人はギルドの依頼が終わった帰宅途中だった。だが依頼先で怪我を負わされていたヴァンは包帯をしていたが、レイリアを攫った荒くれ者との一悶着のあと、ヴァンは苦しみだしたのだ。するとヴァンの身体から黒い靄が出現した。いかにもよくないモノだというのは、幼いレイリアにもわかった。レイリアは自分を助けてくれたヴァンを何とかしようと、必死で黒いモヤのような霧を手をブンブンと振り回して、


 「やめてよ!このひとはわたしをたすけてくれたの!どっかいってよーー!!」


 そう叫んだと同時に、レイリアの身体は突如光り、その光の勢いに押されたかのようにヴァンの周りにあった黒い霧は霧散してしまったのだ。するとヴァンの身体から痛みが消えた。

 この出来事で、レイリアが『祝福』持ちだと言うことが発覚したのだ。

 


 しかしヴァンは怪訝な顔をしていた。

 

 「ただなぁ、そうするとなぜ『祝福』を知ってるんだって話になるからな・・・」

 「そうよねぇ?」

 「なら、ヴァンが言ってた前者じゃねぇの?リアに何かしらの利用価値があるってことだろ。」

 

  三人は考え込んでいた。しかしそこでアレクが手を上げた。


 「も、もしかしたらなんだけど」

 「?」

 「俺の勝手な想像なんだけど、他から何か言われたんじゃないかなって」

 「どういう意味だ」

 「リアねぇさんの家族は、多分だけど逆らえない人。例えばもっと身分の高い人から何か言われたのかなって。でないと急に呼び戻すなんてことなかったはずでしょ?」

 

 レイリアもヴァンもギードも驚いてアレクを凝視していた。


 「なるほど、外的要因がってことか。ありえるな!」

 「アレクやるじゃねぇか!」

 「まぁ・・ね」


 アレクがこれを思い付いたのは、皮肉にも自分がそうだったから。アレクは自身の体験からあたりをつけたのだ。

 そしてレイリアは見逃さなかった。アレクが少し物悲しい顔をしていたことに。だからレイリアは、アレクの頭をいつものようにわしわしと撫でた。


 「アレクありがとうね。」

 「リアねぇさんの役に立ちたかっただけだから。」


 「ふふ、頼もしいわ。」

 

 アレクは照れつつも、嬉しそうに笑みがこぼれていた。


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