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第十八話

 晴天の中、森にあるログハウスの庭で、アレクはヴァンに木刀を持って剣の稽古をつけてもらっていた。



 「たぁああああっ!!」

 「ほいっと」

 「げっ!」


 アレクは上段の構えでヴァンを切りつけたが、あっさりと足払いをされてコケてしまい、そのまま勢いよく地面に倒れていった。

 

  ズササァアアアッ


 「いたたた・・・っ」

 「バカか。そんなわかり易い太刀筋でどうする。そういう構えは、そこそこできるようになってからだ。」

 「くっそう!もう一回だ!」


 そう言って、アレクは起ち上ってヴァンに向かっていった。その様子をレイリアは微笑ましく見つめていた。


 ヴァンが帰宅後は、ヴァンが直々にアレクに鍛錬をしてくれるようになったのだ。


 「じじいの世話にはならねぇ!」


 と、アレクは初めこそは威勢よく啖呵を切ったものの、そもそもレイリアもヴァンの家に住んでいるので全く説得力はなく、レイリアからも拳骨をくらっていた。

 

 ゴン!!


 「リアねぇさん痛い・・・・」

 「痛いように殴ったんだから当たり前よ。そもそもここはじっちゃんの家なの。寝言は寝て言いなさい。あとね、せっかくじっちゃんが鍛錬に付き合ってくれるって言うんだから、そこは素直に甘えておきなさいな。」

 「でも・・・俺はリアねぇさんに・・・」

 「アレクは強くなりたくないの?」

 「!も、もちろん強くなりたい!」

 「だったら、鍛錬は受けなさいな。じっちゃんはね、私よりも強いし、実際に私はじっちゃんに稽古をつけてもらって、今の私があるの。ここまで言えばアレクにはわかるでしょ?」

 「うっ・・・」

 

 レイリアはしゃがんでアレクと視線を合わせると、


 「それに、もちろん私の鍛錬も引き続きするわよ。だけど先生は一人より、多い方がいいでしょ?」

 「た、たしかに・・・」

 レイリアが強いことは、アレクも充分に理解していた。そしてそれはヴァンの力が大きいことも、アレクは素直に認めたくないながらも理解はしていた。


 「小僧、お前が俺を気にくわないのは別にいいさ。だがな、お前さんは強くならないと不味いんだろう?だったら、四の五の言わず俺に教えを乞うんだな。それが最短だと思うけどねぇ」 

 「だから、小僧じゃない!」

 「おいおい、忘れたのか?的のど真ん中に当てたら、名前呼びしてやるよ」

 「くそっ!」 


 ヴァンは半笑いで、アレクの出方を見ていた。

 アレクはしばらく悔しそうに俯いていたが、


 「リアねぇさん、俺ちゃんと鍛錬するよ!そして絶対強くなる!」

 「ふふ、その意気ね。」

   

 レイリアがアレクの頭を嬉しそうにわしわしと撫でると、アレクはまたもや照れくさそうにしていた。


 「あ、でもアレクのじっちゃんへの口の聞き方は・・・・」


 アレクは相変わらず、レイリアとヴァンに対する口調はわかり易く違っていた。だがヴァンはさほど気にしていなかった。


 「ふふん、元気なくらいが調度いい。」


 ヴァンがそう言うならと、レイリアもあっさりと気にしないことにした。


 「ふふ、アレク頑張って!!」

 

 レイリアの声援に、アレクは嬉しそうに手を振って答えていた。

 ヴァンは小さな声で、


 「こうも俺のところには、ややこしいのやら筋がいいのが集まるのは何の因果かねぇ。」


 と、ニヤリと満更でもないようだった。 






その頃______


 とある貴族の一室にて・・・





 「ど、どうしてですか?!!」


 中高年の男は焦っていた。とある約束が反故されそうだったからだ。だが、そもそも反故というのもおかしな話だったのだ。


 「ん~だって、そもそもそういう約束だったでしょ?」

 「だ、だからうちの娘を!!」

 「あのねぇ~バカにしないで欲しいなぁ」

 「!?」

 

 その男の顔は、はっきりとは見えないが、中高年の男よりは年若くそして身分が高かった。当然着用しているものは洗練された高級な衣装を纏っていることから、高位貴族であることが窺えた。 


 「僕は知ってるんですよ?」

 「い、一体なにを・・・?」 

 「正当な娘ではないでしょう。」

 「!!」


 中高年の男は焦った。なぜそれを知っているのかと、そしてその男は続けた。 


 「ふふ、なんで知ってるんだって顔してますね。だけどそんなことぐらい、ちょっと調べれば誰でもわかることですよ。」


 「で、ですがオルガは器量もいいですし・・・っ!」

 

 男はわざと大きくため息をついて、中高年の男の話をさえぎり、椅子の肘掛けに肘をつき頬杖をついて、組んでいた足を組み換えた。

 

 「僕が婚約者にと望むのは・・・真のバルミングの継承者である令嬢ですよ?」

 「!!」


 中高年の男は焦っていた。ただでさえ、噴き出ていた汗はさらに止まらなかった。頬杖をついている男が言う言葉の意味を中高年の男は理解していたからだ。

 だからこそ、この場をどう切り抜けばいいのかと、必死に頭の中で考えをめぐらせていた。


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