終:エピローグ
リョクは、レイリア達の帰りを待っていた。するとそこに、王宮の方向から飛んできた金色の小さな玉がリョクの前に現れた。リョクはその球を懐かしそうに見て、話しかけた。
「金のか・・・終わったのだな」
『緑の、世話をかけたな』
「構わぬよ。お主のおかげで私は番と会えたのだから」
『我もそれを利用させてもらったからな』
金の竜は、自分の意図を汲み取ってくれたリョクにお礼を言うためだけに、ここまで飛んで来たのだ。
「お前の呪いの連鎖は自分でもどうにもならなかった。だがこの世代で呪いを解呪できる『祝福』持ちが現れた。だから呪いの連鎖を断ち切るために、・・・」
『・・・・・』
金の竜の玉はそれについては黙ったままだったが、それは肯定を意味していた。
『そういうお主は、どうなのだ?』
「ん?」
『お主の番は獣人なんだろう。前世の精霊よりも寿命が短いではないか。・・・その辛くはないのか?』
「そうだな。それでも、潰えるその瞬間まで側に、一緒にいたいと思っている」
『そうか・・・お主は幸せものだな』
「あぁ」
リョクは嬉しそうに返事をした。
『我も・・・そういった者にあやかりたかったな』
「金の・・・・」
『さて、話はそろそろ終わりだ。そろそろこの形も保っていられなさそうだ』
竜は身体の寿命が潰える時、新しい身体を用意する。だけど金の竜にはそれがなくなってしまった。レイリアの祝福で金の竜を受け継ぐ血脈が断ち切られたからだ。入れ物がなければ魂は消滅するしかない、もちろん金の竜は百も承知だった。
リョクは少し考えたあと、口を開いた。
「よかったら私に委ねないか?」
『どういう意味だ?』
「私の中でしばらく眠っていればいい。そして私と番に間に子がなせたときに、身体を得ることができるだろう」
『!!』
金の竜の玉は驚いた。このまま静かに消えゆこうとしている自分に、まさかそんなことを言ってもらえるとは思ってもみなかったから。
『・・・我としては有難い申し出だがいいのか?』
「構わんよ。それに私だけ恩恵を受けたままでは気が引けるし。目覚めが悪い。どうだ?」
『その申し出有難く受けよう・・・』
「受け入れてもらえてよかった」
金の玉はリョクが伸ばした手のひらにフワフワ浮いたかと思うとリョクはそれをつぶさないようにやさしく包み、そして胸の辺りに押し込むと吸い込まれていった。
『緑の・・・ありがとう』
「ふふ、礼には及ばんよ。借りは返さないと、気持ち悪いからな」
リョクがレイリアをリンデルベルク帝国まで連れてきたのは、アレクに対する借りを返す恩返しだった。
そして今回は金の竜に対するリョクなりの恩返しだったのだ。
リョクは胸に手を当て、
「また、そう遠くない未来で会おう」
『あぁ・・・我はしばし眠るとしよう』
「あぁ。おやすみ」
『おやすみ・・・・・』
その後、イ・ベルディ獣王国にて、緑の竜と獣人の子との間には、金色の髪の女の子が生まれた。
その子は、リリアナと名付けられ、両親に愛されて育ったとか。
―完―
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