第百二十話
あの時___
リョクが最後まで聞いて欲しいという話の内容は、レイリアが思ってもいないことだった。
「呪い?!」
リョクの言葉にレイリアは驚いていた。
「『竜紋』とやら、あれは呪いだ。私の見立てでは金の竜本人でさえ、どうすることもできない呪いと化している」
「え?でも今まで全く気が付かなかったけど・・・」
レイリアは呪いを見ることができたからだ。アレクと一緒にいる時は、全くそんな気配はなかったので、驚いていた。
「うむ、アレクの場合、リンデルベルク帝国に行ってからだからな。私の主観だが・・・アレクの身体がここではまだ子供だったせいかもしれない。アレクは十四歳まではここにいたのだろう?今十九なら、ほぼ成長期は終わっているだろうし・・・」
「それって何か関係あるの?」
「子供の身体では呪いに耐えられない。大人の身体なら呪いが耐えられる、といったところだろう。だから身体が成長してから呪いが顕現したのだろうな」
リョクの物言いに、レイリアは少し腑に落ちないものを感じた。
「ん?それって、なんかアレクの身体を気遣ってるように聞こえるけど、呪いが気を使っているってこと?」
「・・・まぁそんなところだ」
「???」
リョクがほぼ肯定したものの、レイリアは疑問が残ったままだった。
「で、でも呪いなら、国のお抱えの魔法使いや神官がいるのでは?皇族ならそれこそ、高位の粒ぞろいだろうし・・・」
「残念だが、人間が手がけた呪いならそれで充分だが、竜の呪いはその次元ではない。恐らく呪いとさえ気付いていないだろう。何せ竜の鱗が発現して跡継ぎだというような風習のある国のようだからな。私からすれば滑稽な話だがな」
リョクは呆れたように、やれやれのポーズをしていた。
「・・・そっか。呪いで喜んでるみたいなもんなんだから」
「だからこそ、女神の加護を受けた君にしか解呪はできない。だからアレクを救ってほしいのだ」
「リョク・・・」
リョクが頭をさげる様を見て、
「当たり前じゃない!頼まれなくても、事情を聞いたからには、アレクの首に縄をかけてもを連れて帰るわ!」
「ふふ、君ならそう言ってくれると思ったよ」
「任せて!」
「それに、金の竜も・・・」
「え?」
「いや、とにかく頼む。時間がないから、私が君を直接あの国まで連れて行こう」
「あと、あの剣豪にも手伝ってもらったほうがいい。レイリア、君の祝福は動き回る相手ではできないだろう?」
「そうね。動き回られると、解呪できないわ。」
「そういうことなら、任せな!!」
応接室のドアがいきなり開いたかと思うと、ばばーんとヴァンが部屋に入ってきた。
「じっちゃん!!」
「剣豪か、聞いていたな」
「まぁ途中からな。仕事から帰ってきたらアニタが急いで部屋に向かってくれっていうもんだから」
「さすがアニタね!」
ヴァンも入室し、三人で話し合いが行われた。
「相手は大人しく解呪はさせてくんねぇだろ?動きを止める必要がある」
「大人しく・・・じっとしてくれるわけないよねー・・・」
「それはそうだな・・・」
皆の返答にヴァンはニヤッと笑い、
「俺に心当たりがある。知り合いに頼んで、特注のアーティファクト(魔道具)を作ってもらってくらぁ」
「あ、そうよね!」
レイリアも思い出したかのように、同意した。
「そんなことができるのか?」
「うん。たまのたまーにだけど、厄介な依頼な時があるのよね。そういう時には、こちらもそれ相応の装備をしなきゃいけないから特注で作ってもらうのよ。その武具屋はこちらがこういうの欲しいって希望出して、その時の状況に応じた魔法を付与した武具だったり、装飾品を作ってくれるのよ。とっても腕のいい職人の親父さんよ。」
「それはすごいな。鍛冶職人なのに魔法も長けているとは・・・」
「あーそれはちょっと違うの!魔法付与は別の人だから!それに耐えうる武具を作ってもらうの!」
「あぁそういうことか」
「まーただそれなりに、少々お高めだかな!」
そういってヴァンは笑っていた。
「リア、今回は特に失敗は許されねぇ。だから念には念を入れて、装備はケチってる場合はじゃねぇだろう。」
「うん、わかった!」
「リョク、すまねぇがその金の竜の特徴を教えてくれ。属性とかわかるなら、対処しやすいからな」
「わかった。私の言える範囲でならば」
こうして、レイリア達は、アレクを連れ戻すべく、金の竜の攻略の装備を急ぎ、リンデルベルク帝国まで来たのだ。