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第百十一話

少し遡ること_____



 バルダザールの寝室にて___


 「アレクを幽閉だと?!」

 「本人が・・・そのように申し出ています」


 ラムレスはバルダザールにことの顛末を報告していた。

 アレクはその後、ファーレンハイトに金の竜の過去の話と身体を乗っ取られるかもしれないことを話したのだ。ファーレンハイトは驚き、もちろん何とかしようと国のお抱えの魔術師や神官に相談したが、結局どうにもならなかった。竜の魔力が人間の魔力を上回っているため、対処のしようがなかったのだ。

 

 アレクは自室のベッドに座り込み思案を巡らせていた。自分が自分でなくなっていくことに、考えれば考えるほど恐ろしくなり恐怖だった。


 『自分を制御できなくなるなんて・・・いやだ!あぁ、だけどどうしたらいいんだ!!』


 一体どうすればいいのかと悩んでいたが、以前バルダザールから渡された、アレクの手の中にあるものをジッと見つめていた。それは紫色の液体が入った小さな小瓶という最悪の手段が残されていた。だが、今はまだそれをする気にはなれなかったし、アレクもできればそれをしたくはなかった。


 『いやだ、こんなもの使いたくない!!』


 アレクは割れないように拳の中で視界に映らないようにした。そしてある考えに至ったのだ。


 『俺自身は、竜の魔力が強すぎるせいで、抵抗できないのならば・・・強固な入れ物に封印してもらえればいいのでは?』


 考えた末、自分を閉じ込めるというものだった。

 





 「幽閉しろだなどと・・・」


 バルダザールは頭を抱え込み苦虫を嚙み潰したような顔になっていた。


 「ですが、今はこれより最善の策が見つかりません。魔術師たちも匙を投げましたからね。王族用の幽閉に使う塔があります。それに外側から強固な結界を施します。」

 「むぅ・・・。」

 「ただこれも、気休めかもしれませんが・・・」


 ラムレスの気まずそうな顔に、バルダザールは責められなかった。


 「やらないよりはマシというやつだな」

 「・・・その通りです」





 こうして、アレクは王宮の少し外れたところにある北の塔の最上階の部屋に幽閉されることになった。だが、ラムレスの言っていたことはすぐに現実のものとなった。


 北の塔では、アレクが生活しやすいようにと、部屋の内装は贅沢な作りになっていた。だが、その内装も一瞬で意味のないものになってしまったが。


 ベッドで寝ていたアレクは目を覚ました。

 だがその瞳の色は、金色で、瞳孔は縦長だったのだ。


 「くく、無駄なことを」


アレクは部屋を見回すと一瞥し、金色の目には塔に施されている結界が見えていた。


 「ふん、人間にしては頑張ったようだが、我には意味がないがな」


 アレクは塔の壁に手をかざした。すると金色の魔法陣が空間に現われた。。


 「消えろ」


 言葉と共に魔法陣は大きくなったかと思うと金色の光となった。その光は部屋の外にまで漏れていた。するとどこからかバリーンという何かが割れたような音が聞こえた。それは結界が破られた音だった。


 「他愛のない。しかし・・・このままではやりにくな」


 そういうと、アレクは自分の身体を変化させた。

 元々あった金の鱗の範囲が一瞬で身体を覆い、頭には角が生え、背中には蝙蝠のような金の羽が現われた。そして腰の下辺りから大きく長い尻尾が生え、金の鱗の生えた腕の先には鋭い爪があった。

 辛うじて顔にはアレクだったころに名残はあるものの、それもよく見なければわからないものだった。


 「まだ、完全とはいかぬか・・・もう少しならさないとだな」


 アレクはそう言うと、準備運動かのように、自分が幽閉されていた塔を、鋭い爪をもつ拳で塔の壁を貫いた。衝撃は瞬く間に伝播し、塔に亀裂が入った。そして追い討ちをかけるように、雷の魔法を発動させ、塔の頂に稲妻が直撃。地を揺るがすような轟音とともに、塔の石造りの壁が崩壊していった。それはあっという間の出来事だった。




 「あぁやっと、やっと我は解放される」


 塔の瓦礫の中で、アレクは立っていた。そしてアレクは恍惚の表情を浮かべ、少し離れた王宮をジッと見据えた。そして口角を上げると、


 「忌々しい。だがそれももうすぐ終わる。」

  

 そして、迷いなくアレクは羽を広げ、王宮に向かって飛んで行った。


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