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第百六話

 アレクは意識の中で、目を覚ました。

 

 「この感じ・・・は?」


 アレクは、その場所を初めてとは思わなかった。この感覚は以前に覚えがあったからだ。 そして声がした。


 『小さき者よ、久しぶりだな』


 その声は金の竜だった。


 「金の竜?!!ここは・・・あっ!」


 アレクの足元は地面に付いている感じはなく、周囲はいろんな色が重なり合った空間に浮遊していた。アレクは思い出した。「深層意識の世界」にまた連れてこられたのだと理解した。そして、金の竜が目の前に現れた。


 「金の竜・・・」

 『小さき者よ、あの時のことを覚えているか?』

 「・・たしか代償がどうとか言っていたな」

 『そうだ。今回は前回の続きを見せてやろう』

 「続き?」

 『そうだ。我が赤子産んでからどうなったのか、その目で確かめよ』


 そしてアレクの目の前は真っ白になったが、やがて視界は拓け、そこは以前見た、金の竜の人間の姿となった女性の姿と赤ちゃんを抱いている場面になった。


 『そうだ・・・あの時の・・・フィン王子、いやもう皇帝だったか。二人の子供だったな。俺の祖先か・・・』


 金の竜こと、リリアナは赤ん坊を愛おしく見つめていた。赤ん坊もそれにこたえるかのように、キャッキャキャッキャっと母親に対して手を伸ばしていた。

その場面だけを見ていれば、親子の微笑ましい場景だった。アレクはその光景に自分の母ベアトリスを重ねて見ていた。


 『母も、きっとあんな風に・・・』


 アレクがそんな風に思ったのも束の間、場面が変わった。さきほどの光景とは全然違うそれは、金の竜であるリリアナが相変わらず戦争に駆り出されていた場面だった。

 他国の兵士の屍の中、金の竜佇んでいたのだ。

 

 『そんな・・・まだ利用していたんだ・・・』


 アレクは驚いていた。てっきり子を産んだことで、落ち着くのだろうと思い込んでいたからだ。だが金の竜をよく見ると違和感があった。


 『あれ?気のせいか??以前と何かが違う??』


 違和感はわかるものの、それが何なのか、はっきりとわからなかった。だがその違和感の正体は次の場面で判明した。そこは王宮の中で、先ほどの赤ん坊と一緒にいた部屋だった。そこには先ほどとは違い、フィンがいた。


 「力が弱まっているだと?」


 金の竜の人間体であるリリアナが頷いたが、フィンはそれを聞いて怪訝な表情を浮かべた。


 「そうです。私の力は、弱まっています。」

 「なぜそう言いきれる?」

 「前回の戦いの時に、私は傷を追いました・・・」


 それを聞いてアレクは納得した。子を産んだ後の金の竜は他国を相変わらず圧倒はしていたものの、前回では見られなかった傷を追っていたことに気が付いた。


 『そうだ。以前見た時は、身体に何もなかった。むしろ矢など普通に跳ね返していた!なのに、今回はあきらかに金の竜は矢傷を追っていたし、血も流れていた!』


 「恐らくですが・・・私が子を産んだことで、私の力が子に継承されてしまったのでしょう。私はこれから・・・だんだんと力は弱くなっていく・・・」


 リリアナが震えるような声で話した事実は衝撃だった。そしてそれはリリアナも予想外のことだったのだろうということが、声と表情から読み取れた。


 「竜の力が弱まり、そしてそれが我が子に継承されたと・・・」

 「はい、この件はどうかご内密に・・・」


 それを聞いたフィンは少し考えているような素振りを見せた。


 「わかった。胸に留めておこう」


 フィンはそう言って踵を返し母子のいる部屋から退出した。

 リリアナは、我が子を抱き、話しかけた。


 「お前に私の力が・・・それはいいことなのか、そうでないのか・・・」


 リリアナはそう言っていたが、その表情は後者を示しているのだろうと、アレクは何となく感じ取っていた。


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