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はじまりの闇

…落ちる、と思った。


「…っ!」

目を開けると、浮遊感が、そして落下していく感覚が止まる。


しかし、視界に移るのはどこまでも広い闇でしかない。

何も見えない。

真っ暗な世界。


「…なによ、ここ」


思わずつぶやく。だが、返ってくる返事はない。ただ、ひたすらに静寂と闇が広がっている。

私は、ただその空間に浮遊していた。


…もしかして、私は死んだのかな。


そうして、段々と思い出す。

牧内さんに「少し、お眠り」と手をかざされた後、気が遠くなった。

そして、目覚めたらここにいた。

殺されたってことなのかな。


…どうせ殺されるなら、もっと魔王さんと色々話せばよかったなぁ。


そう思った瞬間。

なにかがちかっと煌めいた気がした。

…錯覚だろうか。



「…だれか、いたりする?」

声に出してみるが、返事はない。


そもそも、死んだあとってどうなるんだろう。

物語だと、天国と地獄があったり、神様みたいな人がいて、転生させてくれたりするけど。

ほんとはずっと、こうして闇を漂うだけなんだろうか。


…いや。

牧内さんは言っていた。

私は、生まれ変わりなんだと。


信じていなかったけど、もし、それが本当なら。

きっと、生まれ変わる時間がくるんじゃないだろうか。


「あ」

少しだけ希望を抱いた私の脳裏に、魔王さんの言葉が思い出される。


『この刻を665年待ったのだ』


つまり、生まれ変わるには600年待たないといけない…?

それまで、ずっとこんな暗闇にいなきゃいけないの…?

絶望的だ。


「そんなの絶対に嫌!!! 誰かいるなら出てきてよ!!!」

思わず大声をあげるが、ただ静寂だけが私に答える。


牧内さん…。ゆるせない…。

本当に私が聖女の生まれ変わりだっていうんだったら、この状況なんとかしてよ!

誰か!!!!


「…あなたは、自分が聖女だと認めるのですか?」


声がした。そして、世界は開けた。

一面の白に。


…黒の次は、白? 忙しいな。なんだか。

さっきまでの絶望感はどこへやら、私は暢気にそんなことを思った。


「誰?」

私は、声に向かって問いかける。

「…マナよ」


…牧内さん曰く、マナって私じゃなかったっけ。

結局、私とマナって別人だったの?

それなら、なにも覚えてないのは納得だ。


「…マナ?」

「そうよ」

「ここはどこなの?」

「私とあなた…私たちの心の中よ」


「私たち…?」

「そう。私たちは、今眠っている」


「待って。結局マナって何者なの? 私たちってどういうことなの?」


「私たちは同じ魂を共有している。だから、私とあなたは同じなの」


「…よくわかんないわ。同じなのに、私とマナが会話できるのはなぜ?」

「…言わば、私はおおもとの人格よ。そして、今のあなたは派生した人格なの」

ちんぷんかんぷんだ。マナの言うことはすごく漠然としている。


「多重人格ってこと?」

「いいえ、転生ごとに人格が少しずつ違う…って言ったらわかるかしら。本当は私はあなたの人生には存在しなかったの。でも…」


そう言って、声は途切れてしまった。


「…! ちょっと! マナ!? いなくならないで!」


そう言うと、私の目の前に女性が現れた。

なんというか…日本人ではない。北欧系って言ったらいいんだろうか。

色白の透き通った肌をした、栗毛の女性。

瞳はグリーンで、顔立ちは正直…絶世の美女ではない。多分、「普通」って言われるタイプの女性だと思う。でも、すごく包容力のありそうな、やさしそうなタイプ。

白い薄布…ローブっていうんだろうか。お伽話の魔法使いが着ていそうなマントとワンピースを身に着けている。

そして、何より…初対面なのに、ひどく懐かしい気がした。


「…マナなの?」

「そうよ。どうにか姿を具現化できたみたい」


そう言って、マナは微笑んだ。

その微笑みを見た瞬間、ほっとして力が抜ける。

「よかった…。ずっと暗闇の中、独りぼっちかと思ったの…」


「不安になるわよね。あの暗闇、怖いもの。すごく」

その言い方がひっかかり、私はマナに尋ねてみる。


「…あなたもあの闇を知っているの?」

「ええ。閉じ込められたのは、私が最初よ」

最初。その言葉にドクン、と胸がざわめいた。



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