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戻りつつある記憶

景色が戻った。

私の……ミユの部屋。

涙がボロボロと流れてくる。

なぜか、私を抱きしめている人がいる。黒い髪が頬にかかってくすぐったい。

魔王さんだ。


「……ミユ」

優しい声だ。

「安心しろ。全部終わったことだ」

「で、でも、誰かが魔王さんを殺そうと……」

「……昔の話だ。もう、勇者はいない」

「……いない?」

「ああ。転生できないように人間は全て滅ぼしたから」

「でも、私はこの世界に……」

「勇者がこの世界に生まれていると?」

魔王さんは体を離した。そして私の目を覗き込む。

「心当たりがあるのか?」

「……私の運命の人だと……言う人が現れて……」

「それで?」

「私のことを……いえ、マナ、さん……のことを知っていました」


話しているうちにどんどん嫌な予感がしてくる。

そう、あの人は私をマナと呼び、自分のことをサイラスだかサイアスだと言っていた。

サイアスは確か……さっきの映像に出てきた勇者の名前だ。

見た目も牧内さんに似ている気がする。


「……そうか」

「……わたし、どうしよう……」

牧内さんと魔王さんが対立しない方法はないんだろうか。

この世界で出会わなければ、2人とも平和に暮らせるんだろうか。


「ミユ。よく聞いて欲しい」

「はい」

「勇者からは距離を置け」

「……魔王さんが、死んじゃうからですか?」

「違う。貴様の命が危ないかもしれない」


命。

思わず息をのんだ。

にわかには信じがたい。


「私のことは信じられないかもしれない。それでもいいが、これだけは信じてくれ。勇者は……前世で何度も貴様を殺している」

心が冷える。

牧内さんが、私を?

なぜ?

「でも、さっき、勇者と聖女は共にやってきたって……それに牧内さんも、私たちは幼なじみだと……」

「……お前の力のせいだ」

「力?」

「お前は魔王を封印する力を持っている」

「私が?」

「あぁ。だが、その力はお前が死ぬときに発動する。……だから、勇者は、お前を殺した」

牧内さんはそんなこと一言も言っていなかった。

混乱する。どうしたらいいのか。誰を信じれば……。


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