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ピンクブロンドの悪魔

ざまぁ回につき、後半、残虐・猟奇的な描写があります。

ご注意下さい。

ケイオス様に言われて眠り、翌朝はスッキリとした目覚めを迎えた。

聖女に任命されてからずっと感じていた身体の重さが取れて絶好調だ。

結界の中に残された人達が心配だから、すぐに魔獣の森を浄化したい。

「クリーン」で身支度を整えてケイオス様の姿を探すと、昨日より更に大きくなって、服のまま温泉に入っていらっしゃった。

「身体は休まったか?

この、温泉というのは良いものだな。浄化とエネルギーの補充になる。」

「おはようございます、ケイオス様。

お陰様でゆっくり休めましたので、これから魔獣の森の浄化に行って参ります。」

「ならば儂も参る。」

ケイオス様は、3メートルくらいに巨大化しているように見えたけど、立ち上がったら昨日より小さくなっている。淡い白色に発光していて明らかに神様だけれど、サイズだけは人間らしくなった。

「そなたらは儂の知る人類より身体が大きくて、適正サイズがわからんのだ」

「今くらいが『体格の良い成人男性』のサイズなので、人間のサイズに合わせるならちょうど良いと存じます。」

「そうか。ではしばらくこのままでいよう」

私達は家を出て森に向かった。

森は広くて一度で全ての浄化は無理そうだったので、4部分に分けて清炎で浄化していった。

瘴気は晴れ、魔獣は砂のように崩れて消えた。

私が浄化を終えると、ケイオス様が結界をぐにゃりと溶かした。

中は少々空気がどんよりしているように感じた。

「それでは、新たな結界を張る。

瘴気と魔獣、その元凶となる人間をこちらに入れないための結界だ。当面、こちらからあちらには制限なく行ける。

あちらからこちらには、腹を空かせた者、16歳以下の者、一度でもそなたが祝福を授けた者が来られる。動物も通れる。

それで良いか?」

昨日、良い行動ができなかっただけで根は悪くない人を救済して欲しいと言ったから、ケイオス様が確認してくれる。

「負のオーラに包まれている者を一律弾くのが手っ取り早いのだが、迫害されてそうなる者も居るだろうから、空腹で判別することにした。」

なるほど、善悪で判別というのも基準が難しいだろうし、良いのかな。

「異存ございません。」と答えると、ケイオス様がパンっと一つ手を打った。

その瞬間、ガキン!と白銀の結界が現れる。

元あった、人間の魔法で作った結界より清らかで強固だ。

「さて、家に帰って中の様子を見るとするか」

ケイオス様が言い終わると、そこはもう家の茶の間で、ケイオス様は座椅子に座っている。

私は日本にいた時の習慣で緑茶を淹れ、ケイオス様の前にも置いた。

昨日出したスクリーンはそのままになっていて、今の王宮前広場の様子が映っている。

そこには群衆が詰めかけているように見える。

ケイオス様が「音も出すか」と音声付きにすると、

王后陛下と王太子御一家の訃報を聞いた人々が混乱して集まって来ているとわかった。

他国から嫁いでいらした方だったけど、王后陛下もそのお子様の王太子殿下も国民に慕われていたのね。

亡くなったという発表も無いまま「犯人」の処刑をしようとして、その犯人に逃げられた状態なので、パニックが起きかけている。

第二王子が悪いのだが、怪我人が出ないかハラハラしてしまう。

「王宮の中に切り替えよう」ケイオス様がスクリーンの映像を切り替える。

お茶を啜りながらテレビのリモコンを押すようなノリである。

王宮内では、王妃が頭を抱えて苦しみ、コーデリア様に助けを求めていた。

コーデリア様が

派手なキラキラを王妃に当てるが、全く効いている様子は無い。あれはただの照明でしかないから効くわけがない。王妃は苦しみ続ける。

「あの者は王族殺しの呪いと儂が突き返した穢れを受けて、人の身では耐えきれない邪気を溜め込んでいるな。

あのまま死ねば良いのだが、悪くすると魔物になるかもしれん。」

王族を害すると呪いがあるのか。

王太子殿下は2カ国の王族の血を引いているから呪いが倍になりそうね。

「何か特別な加護を受けて生まれたようだが、それを私利私欲の為だけに使い、先代国王と王太子も殺している。

加護の強さが災いして今まで生き延びてしまったが、それももう終わりだ。」

事故や心労で亡くなったと聞いていたけど、現国王の親兄弟にも手をかけていたのね、あの女。

王妃の苦しみように怯えたコーデリア様が私の髪と爪を取り出して

魔力を補充しようとしている。

「ここの人間の魔力のことはよく知らないが、あれで魔力を補充しようとするのは意味が無いと思うんだがなあ。身体から切り離したら垢と変わらんだろう?

そなたの身体の一部でも強い浄化力があるから、あの場の空気は軽くなっているかもしれんがな。」

頭を抱えていた王妃がコーデリア様に飛びかかって、私の爪を取り上げた。

王妃はそれを抱きしめるように持ってじっとしている。

そして、それを口に入れた!

「「うわあ……」」私はもちろん、ケイオス様もドン引きで声を上げる。

爪を飲み込んだっぽい王妃が床をのたうち回る。

ケイオス様は害虫の巣でも見つけたような目で成り行きを見ている。

王妃の苦悶の表情は般若の面のようで、実際牙と角が生え始めているようだ。

「うわぁ……」ケイオス様がもう一度呟く。

しばらくすると、苦しんでいた王妃が血を吐いた。

ここでケイオス様は3度目の「うわぁ……」

のたうっていた王妃は動きを止め、肩で息をしている。

「邪気を溜め込んだ人間が聖女の肉を喰らって魔王になってしまうかと思ったが、身体が耐えられず吐き出したようだな。

なんとおぞましい……」

ケイオス様が映像の場所を変えて、

玉座に座る国王陛下が映し出された。

魔道具で他国の人と話しているようだ

「この度のこと、誠に申し訳ございません。

わたくしの命をもって償いますので、戦で国土を蹂躙する事だけはご容赦いただけませんか」

国王陛下が敬語で話している。

「儂としても民を巻き込むのは本意では無い。申し出は受け入れよう。しかし、まずは犯人をこちらに受け渡してもらおうか。

我が国において最も残虐な方法で処刑してくれる」

「仰せのままに」

国王陛下は通信を切り、側近に魔力封じの魔道具を用意させると、王妃を呼び出した。

王妃がコーデリア様に支えられてやってくる。

国王陛下がその額に人差し指を当てた。

王妃が気を失って崩れ落ちる。

陛下はその両手に魔力封じの手枷をつけながらコーデリア様に話しかけた。

「コーデリアよ、この者はジルの故郷に引き渡す。

そこで、石打ちか鋸引きか……とにかく苦しみ抜いて殺されるだろうよ。

お前も命が惜しければ、聖女の髪と爪を神殿に持って行って大神官に渡せ。必ず直接手渡ししろ。

間違ってもお前の父親には渡すなよ?」

コーデリア様は怯えた顔でカーテシーをして「かしこまりました」と言うと部屋を出て行った。


その様子を見ていて、ケイオス様が

「聖女よ、王妃が惨い殺され方をすると、逆恨みで悪霊になるかもしれん。

移送される前に浄化しろ」

悪霊化するとかどこまでも迷惑な!と驚愕しつつ

「承知致しました」と答えると

王妃のすぐそばに転移していた。

国王陛下が目を見開いて驚いてる。

ケイオス様の人ならざる雰囲気に気づくと平伏して

「わたくしは東王国が王、アルフレッドハファムと申します。

御名をお教え頂けますでしょうか、尊いお方。」と言った。

「我が名はケイオス。新たな天地を開くものなり。

この者が悪霊化する兆候を感じたゆえ参った。

先程聖女の血肉を口にし、魔王になりかけておったが、身体が耐えられず吐き出した。

しかし、処刑により恨みを残すと悪霊となって人々の害になるであろう。」

「恐れ入ります。

して、どうすればよろしいのでしょうか?」

「聖女に浄化させるので少し待て」

ケイオス様が

「ここまで来ると改心して大人しくなったりはせぬから、全力で浄化しろ。」

と言うので、魔獣の森でやったように清炎を思い切り放った。

王妃は苦しげに目を覚まして、手枷に驚き、

「アル?どうしてこんなものが付いてるの?」と騒いだ。

国王陛下は答えずに、

「ケイオス様。もう、よろしいでしょうか?」とケイオス様に聞く。

「よかろう。また、『その時』には儂も様子を見に行こう」

「恐れ入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。」

国王陛下は近衛騎士団を呼び、王妃を魔力封じの檻に入れて 移送を命じた。

国王陛下が憔悴しきった様子だったので、私とケイオス様は家に帰った。

「俺は悪魔を王宮に招き入れてしまったのだな。」

国王陛下はそうつぶやくと、再び先程の通信相手を呼び出した。

義父上ちちうえ、ただ今罪人を移送しました。

また、お手数ですが、見届けをお願いできますでしょうか?」

義父と呼ばれた相手が「あいわかった」と頷くと、陛下は毒杯をあおって、倒れ込んだ。

見届け人から「ジルとクロードがあちらで待っておろう。ゆっくり休むがいい。」と声をかけられると、優しすぎて王族に向かなかった元第二王子は、少し微笑んで家族の元に旅立って行ったのだった。

ここまでお読み下さりありがとうございます。

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