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3話

「まもなく本番でーす!」


ADらしき男が告げた


ネット番組らしく、スタジオも楽屋もお粗末な物で私は辟易した。

さらに個別の楽屋ではなく出演者10人全員同じ楽屋に詰め込まれている。

会議室の様な楽屋。全員分のイスもなければ飲み物すらない

メイクは自前。

衣装はいくつか用意されていたが

到底私が身に纏う価値がある衣装は無かった。


ー何なの、この扱いー

私は楽屋の隅で不機嫌を隠さず一瞥を送る


「緊張するね」「映像に出れるなんて初めて」


他事務所の新人モデルや、駆け出しのアイドルがほとんどらしい。

ーみんな人並ねー

私はすぐに周りを見下した。

しかしこの程度の奴らと同じ扱いという事実が私の神経を逆撫でた。


「きゃぴきゃぴうるさいわねぇ!しっかり番組を成立させなさいよ!」


いきなり楽屋に怒声が響いた。


「お、おはようございます!」「おはようございます!」


空気がピリつくと同時に一斉と挨拶が飛び交った

楽屋にいた新人は直立不動の姿勢をとっている。

私以外は


「あら、何あんた?」


すぐ後に知ることになるが

腰まで伸ばしている濃い金髪

元の切れ目とアイメイクでキツイ印象を与え、女性にしては高い身長そして私より尊大な態度の女。

私が今回出演するオールナイトフジヨの司会担当である

海麗であった。


バラエティに疎い私だけが知らなかったようで。

海麗はネットバラエティを席巻している売り出し中のタレントだった。


私は壁に寄りかかりながら腕を組み答えた。


「私? 音羽よ。あなたは?」


後に私はこの態度をひどく後悔することになる。


「なにその態度?あんた生意気ね」


海麗は切れ目をさらに尖らせながら私を見据えて言った。


「誰だか知らない奴に挨拶できないわ」

「ふーん。たまにいるのよね。あんたみたいな女」


海麗は私を足から頭まで舐め回すように見る。


「音羽ね。覚えておくわ。その衣装は自前?」

「そうだけど。問題ある?」

「いいえ。好都合だわ。本番よろしくね。」


海麗はヒラヒラと裏手を振りながら楽屋を後にした。


「えっと?お、音羽ちゃん?まずいよ」


さっきまで直立不動だった中学生の様な女の子が話しかけてきた。


「なにがよ?」

「海麗さんを怒らせたらやばいよ。番組の司会なんだから…」

「それがどうしたのよ?たかだかネット番組の司会でしょ?」

「音羽ちゃん知らないんだ。この番組、海麗さんが司会と演出を兼ねてるから海麗さん次第なんだよ。誰が負けるとか…内容とか…」

「負ける?内容?」


私は少し嫌な予感がしたが動揺を出さないように努めた。


「私も別の番組でやらされたんだ……」


嫌な記憶を思い出したかのように暗い表情を赤面させながら

その子は言った


「……コマネチを」




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