2話
私は自信を持っている。
自分の可愛さに
自分の綺麗さに
自分の容姿に絶対の自信を持っている。
そんな私が芸能界に憧れを持つのも当然の話だ。
もちろんスカウトされた事はある。
それも多種多様な方面から。
全てを断ったのは私が所属するには知名度が低かったからだ。
誰もが知っている有名事務所でないと私にはふさわしくない。
だからといって所属オーディションを受けたことはない。
私のプライドが許さないからだ。
あくまでスカウトされて仕方なくという体裁が絶対条件だった。
努力はしている。
ダンス、ボイトレに始まり滑舌やお芝居の稽古。芸能界に役立ちそうなスキルは惜しみなく磨いてきたつもりだ。
しかし今考えると焦っていたのだと思う。あの頃の私は
いつまでたっても満足できる事務所からのスカウトが来ない状況に
正常な判断ではなかった。
何度か声をかけてもらった事のある事務所に
「大きいから」という理由で所属を決めた私が後悔をするのにそう時間はかからなかった。
「音羽ちゃんデビューが決まったよ!」
私の担当マネージャーの梨々香が告げた。
「当たり前よ、遅すぎるくらいだわ」
「また、音羽ちゃんはそんな態度とって~」
梨々香が頬を膨らませて注意をしてくる。
とても成人しているとは思えない中学生の様な見た目のマネージャーから注意されると
どうも落ち着かない。
「うるさい。早く仕事の説明して」
「もぉ~、そんな態度だといつか痛い目見るよ」
私は梨々香の小言をいつものように無視する。
「音羽ちゃんの最初のお仕事は新人モデルやアイドルが出演する。オールナイトフジヨだよ。」
「ネット番組じゃないの」
「贅沢言わないの!デビューの仕事が映像バラエティなんてすごい事なんだよ」
「バラエティなんて出たくないわ」
私のバラエティ番組に対する認識は最悪だった。
芸人がバカな事をやる低俗なもの。それに出演する女性タレントも私が目標とするモデル像とはかけ離れていた。
何より嫌悪権を持つ最大の原因は以前たまたま見たテレビ番組で行われていたこと。
罰ゲームだ。
売り出し中のアイドルの女の子が頭からパンストをかぶせられ男芸人に引っ張り回されていたり
流行りの芸人のパフォーマンスをやらされていた。とても女の子がやるような事ではなかった。
極めつけは、汚らしい見た目のADの足の臭いを嗅がされている子もいた。
潔癖症の私にはありえない行為だった。
私はそんな汚れ仕事絶対にやりたくない。
これは私が芸能界で生きていく上で絶対だった。
「もう出演は決定事項なの。断れないわ」
梨々香は当然の様に言った。
「はぁ?この私が出たくないと言っているのよ?」
「音羽ちゃんはまだデビューもしていない無名モデルだよ?選択権なんてないよ」
「……チッ!」
梨々香は子供のような見た目から厳しい言葉を吐く。
「分かったわ。不本意だけど出てあげる」
私は腕を組み溜息混じりに答えた。
それとこれは念押ししなければいけない。
「罰ゲームなんてないわよね?私は絶対にやらないからね」
これは譲れない条件だった。
「もらった台本にはそういう演出は載ってないよ」
「そう。ならいいわ。」
「じゃ打ち合わせしよっか!」
後日、私はスケジュール通りにスタジオ入りした。