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蛍火(けいか)<辺境伯の息子と異世界転移者>  作者: 柴崎りょう
1章:ルーク編(辺境伯の息子)
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5-コロシアムの噂

異世界語録

「龍神」・・・唯一神

「龍神石」・・・龍神の血を継承するものが干渉することで天福を引き起こすことができる

「龍石」・・・龍神石の略称

「神格者」・・・(現在では)龍神石に干渉できるもの

「龍造人形」・・・神格者の手によって産み出された人工物

「収録」・・・龍造人形に人が意図した指示を出す行為

第5部 コロシアムの噂


フリージアは思い出したかのように「あっ」と手を打ちふたりに尋ねた。

「そういえばご存知ですか? 近日に教会主催のコロシアムが行われるのはお聞きになっているかと思いますが、そこにはなんと!グレン殿下がわざわざ帝都からお忍びでおいでになるそうなのです」


コロシアムは演劇と同じように娯楽場であったが、年齢制限があり18歳以上でなければ観戦することは禁止されている。ルークたちは今年で17歳になるため、コロシアムの出来事は人聞きでしか知らないのだ。


ルークは眉をあげて「へっ?」と驚きのあまり変な声が出てしまった。

「それは確かな情報なのですか?僕も初耳なのですが」(父上からも聞いてない・・・)


フリージアは「えぇ!」と何度も頷くと、ルークとロックに顔を近づけて小声で語り始めた。

「私も昨夜お兄ちゃ(ん)・・・お兄様のフクロウ(龍造梟)から直通で緊急速達されて来たのです。ご存知でしょうけれど、お兄様はルーク様の令兄の従者として今帝都に滞在していますの、それで・・・」

頬を赤らめながら恥ずかしそうに話を続けた。

「私の兄は極度の心配性で二日に一度は必ず手紙を送ってくるんです。返事を書くネタを探さなくてはいけませんから正直面倒なのですが、帝都で起こっている現地の情報がすぐに入ってくるので重宝はしているのです」


仰向けになったルキの腹を撫でながらロックは対話に入った。

「そういえばルーク様の世話係の付き人って、コロシアムの健闘でパウロ辺境伯のお眼鏡にかなったから雇われたんだよな?」

「ああ、よく覚えてたな」

ロックの言う通りだ。13年前サルウィンはコロシアムで勝利し、「平民出身の者が、貴族に仕えることのできる最高の栄誉に与ったのだ」と、以前恥ずかしそうに話してくれたことを記憶している。


フリージアは「さすがですわ」と呟き、思案するように両手を合わせると、寄りかかったシェパードを見つめて再びふたりに向き直った。

「コロシアムの出場資格には、3つの品格が備わっていなければならないとされています。お伽話に登場する大英雄ガルバートのように勇敢かつ高潔で崇高な精神を審査されるのですわ」


「品格を審査する御方々はさぞご立派で聡明な人たちなんでしょうね」

ロックはフリージアの話を鼻であしらいながら嫌味を言ったつもりだったのだが、フリージアはその嫌味には全く気づいてないようで「ええ、その通りです!」と頷き、眉をあげて目を大きく開かせながら、これは良いアイデアに違いないと確信するようにルークが全く思いもよらなかった次の提案をした。


「私たちでコロシアムに出場してみませんか」

ルークは驚きのあまり無意識に口を半開きにしてしばらく放心したが、首を左右に振ってフリージアに諭すように穏やかに語りかけた。

「フリージアさん・・・待ってください、出場者は皆平民ですよ。僕たちにはそもそも出場資格なんてありません」


そのような問題は取るに足らないどうでもいい些細なことだと言わんばかりの調子でフリージアはルークたちを説得した。

「問題ありませんわ!年齢制限はありませんし出身を適当に偽ってしまえば・・・後は、ただ品格の審査をクリアすれば出場できますわ!」


「いや・・・、観客席にいる見知った人達に見つかってしまいますよ。加えて、グレン殿下もいらっしゃるとなれば父上も必ず観戦にきます」

「仮面をつけて、鎧を纏えば気づかれません、ご安心を私が3人分の装備を用意しておきます。今は、バレるバレないといった話は一旦あちらの箱に放り込んで一度考えてみてください・・・コロシアムで勝利すれば最高の名誉が手に入るのですよ!」


ルークは兄たちが「よくやった」と自分の頭を撫でて、一緒に剣の修行に励んでいる情景を思い浮かべた。


「私だけに向けられる賞賛の声がずーっと・・・永遠に鳴り止まず、あまりの大歓声で収拾がつかなくなって・・・皆を落ち着かせるため、グレン殿下が私の名を訊ねるのです。そこで私は堂々と仮面を外して名乗りをあげる『私はフリージア・ヴァルファルド!バロバロッサ卿の一番槍』と!」

恍惚とした表情でその先の未来について想像する。

「コロシアムで勝利したという噂はあっという間に広がって、社交場ではその話題で持ちきりになってうふふ・・・」


ロックはあぐらをかきながら片手に顎を乗せてニヤリと笑って頷いた。

「いいんじゃね?滅多にない機会だ、参加しようぜ。」


 

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