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蛍火(けいか)<辺境伯の息子と異世界転移者>  作者: 柴崎りょう
1章:ルーク編(辺境伯の息子)
3/33

2-神格者

龍神の血を継承する者は龍神石に干渉することで無から有を造り出す

「天福」を引き起こすことできる。


しかし、悠久の時の流れにより龍神の血を継承できる者は減少傾向にある。


歴史の転換点に立たされた

僕たちの物語


語録

「龍神」→唯一神

「龍神石」→龍神の血を継承するものが干渉することで天福を引き起こすことができる

「龍石」→龍神石の略称

第2部


「ええっと、龍神石には龍素含有量によって名称が学術的に区別されています。含有量90%以上では無煙龍石と呼ばれ、皆さんもご存知の通り国宝に指定されています。また、龍素含有量が高いほど威力規模、龍素容量、石の硬度の数値も大きくなります。現に戦争時に無煙龍石が使用された際、反乱軍の街は煙も残さず一瞬で全てが無に帰したと報告されています。まあそれだけものすごく希少価値がありまして、現存しているのは帝都にひとつのみです。残りは消費されてただの石ころに成り果てました。まあ、新たな無煙龍石の発掘待ちですね。皆さんもご存知の通り、今はもうただの石ころですが聖火教会にも展示されていますので機会があればぜひご覧になってください。」


先生はでっぷりとした指にはめてある指輪をわざとらしく皆に見えるように掲げると一人の生徒が「わぁっ!!」っと感嘆の声を上げた。


ぶくぶくと白く太った顔がニヤリと笑い、甲高い声で堰を切ったように話し始めた。

「ああ、わかりますか!この龍神石の輝きを!価値を!これはなんと龍素含有量が65%もあるんです!亜瀝青龍石ですよ!皆さんもご存知の通り、我が家は代々鉱山監督役を仰せつかっておりますから・・・・・・・・・」


いつものように講義とは名ばかりの自慢話に花を咲かせる”先生”のお話を生徒たちは右から左へ受け流し、クラスの友人たちとのコソコソ話を楽しんでいる。


ルークは周囲を見渡すとドンと体に重みが増していくのを感じ不愉快な気持ちになったが、すぐに呼吸を整えることだけに意識を集中させた。


考えてみれば当然なのかもしれない。

ロゴス帝国は500年という悠久の時の流れによって龍神石に干渉できる人間は、現在進行形で減少傾向にある。

昔は実績や試験も必要だったようなのだが、今では龍神石に干渉できるという一つの理由だけで”神格者”と呼ばれ讃えられる。このクラスは先生を含め”神格者”のみ集められたいわば、世間知らずのお坊ちゃんお嬢ちゃんたちが集う社交場に過ぎないのだ。


「悲しい現実だ」


乾いた笑いがこぼれた。

父上は僕が次期当主となることを表面上は快く思っているが、おそらく本当のところは文武に優れ部下たちの人望も厚い兄上たちのどちらかを当主に据えたいことぐらいわかりきってる。

龍神石に干渉できる”神格者”という名誉だけが僕の個性なのだから。


いや違う!勢いよくかぶりを振り拳を握り締め、なん度も心の中で強く唱える。

「皆に、兄上に認められたい!」

でまかせ?根拠の無い言葉を吐くな?自身の原動力になるんだったらかまうものか!だからこそ失敗は許されないのに、あぁぁぁ! 食堂の出来事を思い出すと恥ずかしくなって顔が真っ赤になった。


 ♦︎♢♦︎


カランカラン 今日の授業の終わりを告げる鐘の音が学院内に響き渡ると、話の途中にもかかわらず、

「今日の講義終わり!」

ドアを開きながら言い放つと、脱兎のごとく退出していった。


「今日のおっさんは風貌に似合わず素早いな」

背の低い短髪の黒髪の青年は、腕を上げて大きなあくびすると「お疲れさん」と言葉を付け足し、僕の机に座った。


「おっさんじゃなくてブランクトン先生だ」

ルークはいつものようにロックの雑言を注意すると、反芻するようにブランクトン先生が慌てて退出した理由をロックに説明する。

「無理もないだろう、今日は”神格者”のみ限定で招待される特別なサロンが開かれるらしい。自慢が大好きなブランクトン先生もそのサロンに遅れたくはないだろうな」


ロックは「人の事言えねじゃねーか」とぼやくがルークは物思いに耽っており、聞こえはしなかった。


先生もそこにしか居場所がないことを理解しているのだろう。僕たち”神格者”は同じ”神格者”としか関わりがない。教室も離れにあって他学級とは絶対に関わりがない、これも全て”龍の教え”に書かれているのだ。

そのため”神格者”のみのコミュニティーに執着する。


これは仕方がないのだろうか?


ふと窓を見上げると、雲ひとつない青天が広がり、木々の葉が春の心地よく吹く穏やかな風に揺られ気持ちよさそうにその身を預けていた。


我に帰ったルークは遠くの方からレッドワイン色のロングヘアの女生徒を囲んで、複数の生徒たちが羨望を含んだ興奮した口調で話し込んでいる会話の内容が耳に入ってきた。

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