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蛍火(けいか)<辺境伯の息子と異世界転移者>  作者: 柴崎りょう
1章:ルーク編(辺境伯の息子)
11/33

10-アンチコード(後半)

異世界語録

「龍神」・・・唯一神

「龍神石」・・・天福(龍神の与える幸福)をもたらすための触媒

「龍石」・・・龍神石の略称

「神格者」・・・(現在では)龍神石に干渉できる者

「龍造人形」・・・神格者の手によって造られた人工物

「収録」・・・龍造人形に意図した内容をインプットする行為



        アンチコード(後半)

第10部

*シェパード=龍造犬の通称名


シェパード、この一体の撹乱によって戦場は大きく転換する。

逃げ出した戦士たちを猛追するシェパードはひとり出遅れた男に狙いを定め、「ガルルル」と唸りながら鋭い牙を剥け、跳躍するために身体を下ろした。

「させません!」

シェパードが地面を蹴った・・・その一瞬の隙を逃さず振り上げた大斧でフリージアはシェパードを真っ二つに切り落とした。

(先ほどの恥ずべき行為、騎士を志す者ならルーク様のように助けることが至極当然!それなのに、私は祈っていた・・・いえ、それ以上にタチが悪い・・・殺される瞬間を見たくないから目をつむっただけですわ)

「この失態の責任は果たさねばなりません!」


真っ二つに切り落とされたはずのシェパードに、神格者が龍神石に干渉する際に発せられる()()()()光と同様の現象が起こった。切断された岩石がみるみると結合をはじめ、ものの数秒で瞳に光が蘇りフリージアの前に立ちはだかったのだ。

「え?なぜ?」と、狼狽するフリージアにルークは大声で叫んだ。

「フリージアさん、核を狙わないとダメだ!龍造人形の龍素が尽きるまで再生する!」


フリージアは蘇ったシェパードの尾刀をいなしながら、低位になり下から上に大斧で切り上げる。

頭部を切り落とされたシェパードが再生する少しの間、ルークの顔を見ると己の無知を恥じているような硬い口調で尋ねた。

「核・・・ごめんなさい!私、彼らのことほとんど・・・いえ、何も知らないんです」


王立学院でシェパードの性能を友人に嬉々として語るフリージアの姿を脳裏によぎったが、ルークは頭を横に振った。

(フリージアさんは恥を忍んで僕に尋ねたんだ。そんな彼女の勇気をからかうなんて最低な行為だ)

「わかりました!説明は省きますが、身体の中で最も安定性がある部位に核があります。シェパードなら胸深か骨盤付近に!」


「わかりましたわ!」

フリージアは屈託のない笑顔で答えた。

(これでルーク様に知ったかぶりのペテン師女だと思われても仕方がないでしょうね・・・でも今は龍造人形を倒すことだけに集中しないと。私はバカなんだから・・・せめてみんなを守る強さだけは誰にも負けてはいけない)

フリージアは細く長い息を吐くと大斧の柄を強く握りしめた。

「足を切り落とさなくとも、頭部を切断すれば再生中は動けなかったわ。ならば!核を直接を狙わなくても後で叩き切ってしまえばいい!」


シェパードはバネのある素早い動きで縦横無地に駆け回ると最後にはフリージアの死角に回り鋭い牙を剥けてうなじを狙った。

「素直な動き」

このシェパードは私の視線を注意深く観察し、私が追えなくなれば必ず仕掛けてくる。それならわざと視線を遅らせて攻撃を誘えばいい。

フリージアは背後から襲ってくるシェパードを軽やかにかわすと真っ二つに切断した。


 ♦︎♢♦︎


ひかめく光を発しながら再び身体を結合させようとするシェパードに、フリージアは歩み近寄ると大斧を構えた。

「何度もごめんね」

シェパードはボロボロに崩れ落ちると最後には灰となって消えていった。

フリージアは手をラッパのように口に当てて、ルークに聞こえるように大きな声を出した。

「核は骨盤にありましたわ!」


ルークは大きく頷くとコロシアム中に響き渡るよう全身を使って叫んだ。

「皆さん!一歩もそこから動かないでください、この龍造人形は攻撃を仕掛けるか、逃げなければ襲ってきません」


(大量製造されたものであれば全てのシェパードの核位置も同じはず)

「ロック、僕の護衛は大丈夫だ。今はフリージアさんのおかげで皆僕のことを信じて立ち止まってくれた。でも、龍造人形がじりじりと身じみ寄ってきたら怖くて逃げ出してしまう人だっていると思うんだ。彼らを守ってくれ」

「了解。だがお前はどうすんだ?」

「戦士の中に混ざって収録のアンチコードを打つさ。龍造人形の無力化を図る」

「”あんちこーど”やらを打てばあいつら動かなくなるのか?」

ルークはかぶりを振った。

「いや機能を完全に停止するのは無理だろう、龍造人形に攻撃を仕掛ければやり返してくる。でも、逃げる人を襲うようなことは出来なくなる。そのあとは僕達でゆっくり対処すればいい」


(なるほど、以前やったフリージアさんのシェパードのように停止出来ないってわけだな)

「もし、お前がヤバい状況になったら俺は迷わず龍神の力を使う。いいな?」

ロックはルークの返事を待たずに逃げ出した戦士たちが立ち止まっている場所まで移動した。

ご愛読ありがとうございます!!


そろそろ2章の異世界転移者視点からの物語を投稿できそうです。楽しみにお待ちください!!

感想、評価良かったらお願いします。めっちゃ喜びます!!(笑)

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