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通勤電車で

作者: 杠煬

気になっている女性がいる。

といっても、やましい気持ちがあるわけではない。

なんとなくだが、気になっているのだ。


2年前に職場で部署異動があり、通勤電車に乗る時間帯が変わった。それまでは始発で通勤しておりホームは閑散としていたが、1時間も後の時間帯になったため、電車を待つ人達が少し増えてきていた。

その日、ホームで電車を待っていると、隣の列に彼女が並んだ。そして、ロングシートの反対側に、彼女が座ったのだ。

勤務場所の変更により、これまでより幾駅か早く降りる。

うとうとして乗り過ごさないよう、しかし暇なので車内を、車内の他の客を観察していた。

当然、目の前に座る彼女を見ることになったのだ。

彼女は、見た感じ40台半ばといったところで、高価そうな生地の淡い黄色のロングコートを着ていた。髪の毛はやや茶色に染め、肩にかかるぐらいの長さで先は緩くカールしている。体格はスマートで、年齢的には少し痩せぎすかもしれない。

やや大きめのバッグから日経紙を取り出し読んでいた。いかにも仕事の出来そうな管理職といった感じだ。左手の薬指に指輪が無いため、独身の可能性がある。

どこか大きな商社の部長だろうか?

などと考えつつ、私は電車を降りた。


それからも彼女は同じ車両に乗っていた。

いつも日経紙を真剣な表情で読んでいた。

いつしか私は彼女に興味を失っていた。


そんなある日、いつもの駅へ向かう途中で彼女を見かけた。

少し前を歩く彼女は、1人ではなかった。

隣には、小型犬を連れた背の高い男性が並んで歩いていた。

「彼氏かな?」

いささか古い言葉を呟き、2人を観察する。

彼女はいつものように隙の無い服装で背筋が伸びている。

対して男の方は、いかにも犬の散歩に適した上下トレーナーで、ゆったりとした雰囲気だ。まだ髭もあたっていないようだ。

2人は楽しそうに語らいながら、改札まで来ると軽く手を振って別れた。

お互いを見送ることもなく、彼女はホームへ、男は犬を連れて来た道とは別の方向へのんびり歩いていった。

私は改札をくぐりながら、寝起きの頭でボンヤリと考えた。

恋人同士なのは間違いないだろう。

同棲しているのか、別に住んでいるのかは分からない。もうすぐ結婚するのだろうか。

そして、彼の職業は何なのだろうか。

「できれば医者、とかだといいな。」

隣接する総合病院を見上げながら、思わずそう呟いていた。




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