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エピローグ1

「あれだけのことがあったけど、学院はもう日常を取り戻しているようね」


 隣を歩くアリスが、辺りを見回していった。

 学院内で魔族による襲撃があったが、その二日後にはすでに日常を取り戻していた。被害が著しかった闘技場周辺も土魔法を使える魔導士の手にかかればすでに何事もなかったかのように修復がなされている。

 襲撃の翌日である昨日、俺はクラス担任のヴィンチ先生から事情聴取を受けていた。

 てっきり俺の力を警戒していた学院長が裏から手を回してヴィンチ先生を通じて俺になにか仕掛けてくるんじゃないかと警戒していたが、これといって普通の事情聴取だった。

 俺は肩透かしを喰らってホッとしていたが、エクセリオンの読みではこのまま何事もなかったかのように終わるわけがなく、学院長はこれから必ず仕掛けてくるだろうとのことだ。

 どんな事があっても俺は正体を明かすつもりはないが警戒しておくに越したことはないだろう。


「まあ、マスターたちが奮闘したお陰で奇跡的に犠牲者はいなかったからな」


 右肩の上を飛ぶエクセリオンが俺たちの努力を評価してくれている。

 みんなの意見を総括するなら、日常が戻ったのは俺たちのお陰で間違っていないと思う。

 だというのに、


「けどなあ、これはおかしいんじゃないか」


 学院の敷地内に入って教室に向かう途中、俺は校舎前でまだ名前すら知らない男子学院生数人から「よう」と気軽に挨拶をされてしまった。

 しかし、だ。続く言葉が問題なのだ。


「童帝の魔法は最高だったぜ、正直クラス代表試合であんなことができる度胸には驚嘆した」

「うん、あんな魔法見たことがないよ。僕も正直人族って大したことがないと思ってたけど、童帝君のあの試合を見て感動しちゃった」

「マジそれな。怖いもの知らずとかそういう次元じゃなくて、人族っていうのは俺の小さな物差しでは測れないような次元で生きてるってのがよくわかったぜ。いや、いままでロクに相手しなくて悪かったよ童帝君、いや、童帝さん」

「誰が童帝だこのヤロ――――――――――――っ!?」


 どうやら俺のクラス代表試合でファナさんを全裸にするまでの過程が一部の男子学院生に大うけだったらしく、童帝として祭り上げられてしまったらしい。

 ちなみに童帝の由来は、じつは闘技場の外まで聞こえていた「おっぱいなんて揉んだことがないんだよ~~~」という俺の童貞発言が原因らしい。しかし俺がエルフの王族を闘技場で全裸にする度胸も持ち合わせていたことから「貞」ではなく「帝」の字を当てて尊敬してくれているんだとか。

 ここは日本じゃないから漢字が存在しないはずなんだけど、異世界の言語で訳すとこうなるんだよと捉えてほしい。


「まあ、なにはともあれ人族の評価が上がったんだからいいんじゃねえか?」

「ちっともよくないっ!? なんで俺は男にモテるんだよっ!? 俺は女の子にモテたいんだけどっ!?」

「諦めなさいよシモノ。あんたはやりすぎたのよ。人族がエルフ族に勝ったっていうのはとても誇らしいことなのに、手段があれだったようね」


 いちおう第二魔法を発現して邪神の眷属を倒すという格好いい見せ場もあったんだが、邪神の眷属絡みの事案は七種族連合によって口外禁止にされているので、関係者以外はそのことを知らない。


「よう童帝」

「そんなに偉くはないわっ!?」


 からかってきたエクセリオンに言い返し、俺は教室に入り席に着いた。


「ねえシモノ君」

「ク、クロードっ!? お前は俺をヘンなあだ名で呼ばないようだなっ!?」

「当然だろ。あれはシモノ君に失礼すぎるよ」


 さすがクロード、俺の大親友だ。


「でも、いくら大事な試合だからってやり方はもっと工夫しようね。女の子を傷つけるような真似ってよくないと思うよ」


 やっぱりやり方がよくなかったか。アレクシア様と同じことを注意されるなんて。でも、あれをしないと負けていたかもしれないしな。そうだ、


「わかった。なら今度は全裸にするんじゃなくて下着姿にする方法で考えてみる。着エロのほうこうで考えろとは、さすがクロード。俺の親友だけあってなかなかいいアドバイスだな」

「いや、そういうのが一切合切ダメだからっ!? シモノ君、僕の言ってることぜんぜんわかっていないよねっ!?」


 突然訳のわからないことを言い出したクロードに俺が首を傾げていると、教室の雑談が一気に止んだ。その後ざわめきが生じる最中「通してもらっていいでしょうか」とクラスメートたちに断りつつ、マイアさんを連れたファナさんが俺たちのもとに向かってくる。


「ファナ」


 ぽつりとつぶやくアリスの前で、ファナさんが足を止めた。


「話がありますの、ここではなんですから屋上に来てもらえないでしょうか」

「だってさアリス、どんな話をするかわからないけど殴り合いの喧嘩とかは絶対にするなよ」

「なに言っているのよ、そんなことするわけないでしょう」


 よし、わかってくれたか。さすがに王族とこれ以上トラブルを起こそうとは思わないようだな。


「ファナと一緒にいてするなら魔法での喧嘩でしょう。殴り合いなんて低レベルの喧嘩するわけないじゃないの」


 ぜんぜんわかってもらっていなかったっ!? むしろ俺の予想の斜め上だったっ!?

 そんな俺たちのやり取りに動じることなく、ファナさんが言う。


「なにか勘違いなさっているようですけど、わたくしはお二人にお話がありますの」


 えっ!? 俺もっ!?



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