『あっち側』
ターン 一発の銃声が廃墟に響く
歩いている男の直ぐ側で、コンクリートが割れる。
ターン 二発目の発砲音が聞こえた。
今度は足元近くで、コンクリートが銃弾で割れる。
しかし、男はお構い無しに近くに見えるあるものを目指して直進する。
ターン 三度目の銃弾は歩く男の脹ら脛に命中した。
「あぁぁぁぁっ」悲鳴をあげる男を700ヤード以上離れた場所からライフルのスコープで覗く女狙撃手がいた。
ザーザー 女は無線で連絡をした。
「こちら、Dポイント レッド2班 陽子・羽山です。霧に向かう男は2発の威嚇射撃でも引き返えさかった為 左足脹ら脛に一発命中させました。肉は削げましたが骨は大丈夫のもよう 救助班を向かわせてください」
ザーザー「陽子・羽山准尉了解しました」
ザーザー「任務に戻る。通信終る」カチ
陽子・羽山は元自衛隊でオーストラリア海軍の大尉を夫に持つ。別姓だ。
今は、有事のためオーストラリア軍在籍の傭兵をしている。
「ふぅ。まだ、今日の任務を初めて2時間なのに、11人目…日に日に増えてる。あっち側にいったい何があるって言うの?生きてる事に疲れたからって…」言葉に出しながら自分の矛盾と格闘していた。
1342日前に地球の文明は滅んだ。
温暖化の影響だったのか?グリーンランドの氷河が全て溶けた。いや、北半球の氷が全て溶けた。そして地球の磁力も変化してしまった。
それと同時にアラスカを中心に突如霧が発生したのだ。971日で北アフリカ、ユーラシア、北アメリカ、北半球全てが霧に包まれた。包まれた都市と連絡が途絶え世界中がパニックになった。今では南半球の3分2近くが霧に包まれた。
霧に包まれたら終わりだ。霧の中は謎に包まれてる。調査隊も行ったきり帰って来ない。
1つ最近になって分かった事があった。
人口が減った事と比例して霧の進行速度も遅くなったのだ。
残された人類は、人口を減らさずに、霧の中に人を入れない事が最大の任務になっていた。
陽子・羽山は、スコープ越しに聞こえる声を無視してた。
それは、霧の中から祖国日本の家族が羽山陽子を呼ぶ声が聞こえるのだ。
『陽子、陽子』
『陽子お姉ちゃん』
『陽子おいでよ』
様々な声が陽子を呼ぶ。
霧への最前線にいるせいなのか、日増しに声が大きくはっきりしてくる。
気が狂いそうだった。
「行かない。行けない。お母さん、ごめんなさい」
陽子たちは、こっち側 が あっち側 にならないようにスコープを覗くことしかできなかった。
読んで頂き誠にありがとうございます。
久しぶりに今日Twitterトレンドに入っている『あっち側』を題材にいたしました。
なんか、ホッとするw
妄想してる話はあるけど、しばらくはTwitterネタでいこうかな?
以前のように毎日は無理だけどねw
それでは、また読んで頂けたら幸いです。
木尾方
さっき、投稿手順を間違ってしまいました。m(._.)m