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第7話 貞操の危機

「あれ、深澤さん?」


 木々羅は不思議そうな声で言い、目を見開いた。


「入居者って、深澤さんのことだったんだ」


 ふわふわとした笑みを浮かべる彼に、あたしは無表情を貫き通した。こういうところが、無愛想で可愛くないって、言われるんだろうな。

 木々羅はダボっとした白いベストに、黒いチノパンを履いていて、おそらく家着なんだろうが、おしゃれだった。人気者特有の洗練された雰囲気をお持ちでいらっしゃる。

 当然のごとく部屋も綺麗なんだろうな、と思ってあたしは軽く部屋を覗いて、ぎょっとした。


 リビングの壁中に、写真が貼ってあったのだ。まるで、漫画や映画に出てくるヤンデレの部屋みたいに。


 目を見開くあたしを見て、あたしがその存在に気づいたことに気づいたのか、木々羅は、じゃね、これからよろしく、と言って、慌ててドアを閉めようとする。

 なんだか人気者のクラスメイトの闇を覗いてしまったようで、非常に気まずい。

 これからどうすっかなぁと悩みながら何気なく彼の玄関へ目をやったあたしは、驚き、それから全力でドアをこじ開けようとした。


 玄関の靴箱の上に置かれた写真は、例のエキゾチックショートヘア的顔をし、運動会でぶすくれている去年のあたしを写したものだったのだ。

 エキゾチックショートヘア的顔とは、さっき茶々林が言っていた、あたしが顔をしかめた時になる顔だ。

 おばあちゃんによると、あたしは顔をしかめた時、ものすごくその種類の猫に似るらしい。まぁ、茶々林も言ってたしな。


 しかも、そのぶすくれた顔をかなりアップにして、切り抜いてある。

 これはヤバい。ヤバいぞ。人気者の闇とか言ってる場合じゃない。

 今にも閉じそうなドアを必死に引っ張るが、高校生男子の力に勝てるわけもなく、そのまま押し返される。ドアが閉まった瞬間、ガチャリ、と鍵が閉まる音がした。

 その拍子に後ろにいた誰かにぶつかり、あたしは救世主となってくれそうな男ーー茶々林の存在を思い出した。


「貞操の危機」


 涙目鼻声で彼に訴えかけると、彼はどこからか合い鍵を取り出し、木々羅の部屋の鍵穴に差し込み、ぐるりと回した。いとも簡単にドアが開く。

 中からは開かれると思ってなかったのか、豆鉄砲を食らった鳩のような顔をした木々羅がいた。

読んでくださってありがとうございます。

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