第6話 もう一人の入居者
チーン、と古臭い音が鳴って、あたし達は、無事三階に着いた。
部屋はホテルのように三つほど並んでいて、一応部屋としては、ここが最上階らしい。さっきエレベーターの中で、茶々林が言っていた
ちなみに部屋は二階からあるそうで、一階は食堂、そして四階はお風呂になっているそうだ。なんというか本当に、ホテルみたい。
ただ一つ、ホテルと違う点は、それらの作業ーーつまり、ごはんを作ったり、お風呂、というよりも、大浴場のお湯を沸かしたり、掃除をしたりーーを全て入居者達がしなければならないということ。茶々林は、特に何もしないということだった。つまりは、今までずっと、先にここに入居していた人がそういう家事を回していたということになり、あたしは今からその人に会うのだと思うと、とんでもなく緊張した。だって、家事分担とかどうしたらいいか分からないし。
「ここですよ」
茶々林がそんなあたしの緊張を見透かすように、一番エレベーター側にあった部屋を指さした。
金属製の、部屋番号の書かれたプレートがドアの前にかかっていて、茶色い木製のドアの横には、インターホンが備え付けられていた。高級感のある部屋のつくりに、ますます茶々林の謎が深まる。だってこの人、映画館で清掃をしてるって、言ってたよね。入居者一人で、どうやって稼いでたんだろう。話を聞く限り、家賃ばか高いとかいうわけじゃなさそうだし。
まあとにもかくにもあたしは、このカササギ荘の謎と緊張に包まれて、インターホンを押した。できれば、最低限の関わりだけで済むような人がいい。めんどくさいから。
「はい!」
すぐに聞き覚えのある声がして、しばらくしてからガチャリ、と扉が開いた。この声は確か……
「あれ、もしかして、深澤さん?」
出てきた人物を見て、あたしは苦虫を嚙み潰したような顔をした。
今日は今までの人生で、一番最悪な日かもしれない。
だってもう一人の入居者は、あの木々羅 早都だったから。