第4話 カササギ荘
「お嬢さん、着きました。カササギ荘です」
例の男はそう言うと、あたしと荷物が詰まったトラックの扉を開いた。
途端に目の前が明るくなり、あまりの眩しさにあたしは目を細めた。視線がぼやける。
男が手を差し伸べたのを振り払い、手をかざしておそらくカササギ荘だと思われる建物を見る。
それはデデニーランドのシンデレラ城のような感じで、下宿先と言うにはいささか、いやかなり違和感を感じるような代物だった。
女の子だったら間違いなく夢と希望を抱くのだろうけど、状況が状況すぎてそんなことも感じられない。
男にトラックから降りるように言われ、ステップを踏んでアスファルトへと飛び降りる。
すると今度は振り払うまでもなくがっしりと腕を掴まれ、建物へと連行された。
「すみませんが、一体あなた達は何なんです?」
門の前であたしは立ち止まり、男に尋ねた。
我に返ったのだ。
今まで雰囲気に流されて彼に着いてきたが、もうそんなことをしている場合ではない。
本当におばあちゃんに依頼されてるんだとしても、どういう経緯でそうなったのか聞き出して、おばあちゃんには二度とこんな変な人に引越し作業を頼まないようにと、忠告しなければ。
「何でも屋です。『ヘアオブヘッド』という名前でね。貴女のおばあ様は、初めてのお客様なので、みんな喜んでますよ。あ、普段は映画館でスタッフをしています」
聞いて納得した。
おばあちゃんには普段から、客の出入りがない店に入るなと言っているのだけど、おばあちゃんはそういう店にロマンスを感じるらしく、全然聞いてくれないのだ。
「分かりました。ちなみに、ここには何人いらっしゃるのですか?」
「貴女を含めて二人ですよ」
目が飛び出るかと思った。
二人きりでこの城に住むのは、かなりハードモードじゃないだろうか。
気、使うだろうし。
「ま、大丈夫ですよ。あんた根性ありそうですから」
口調を変えた男は白い歯を見せてニカッと笑うと、あたしを引きずって、建物のホールまで連れていった。