第3話 怪しい男達
おばあちゃんには下宿先がどこかも知らされておらず、あたしはどうしようもなくなって玄関で三角座りをきめこんだ。だって、本当にどうしようもない。
一分、二分と時間は過ぎていって、おばあちゃんが家を出ていってから十五分経ったときのことだった。
「こんにちは~。深澤さんですか~。貴女のおばあ様から依頼を承りまして~」
微妙な高さの声が聞こえてきた。ていうか、インターホン押してくれたらいいのに。
「はーい」
とりあえず返事をしてドアを開ける。
明らかに変だったし怖いけど、おばあちゃんはあんな性格だし、たまに家にはこういう変わった人が来るのだ。
「何ですか?」
ドスの効いた声で睨みをきかせると、ドアの前に立っていた、何故か髭を異様に伸ばして頭に巻いているその人物は、ずかずかと家に入り込んできた。え、普通に恐い。
「うんうん。おばあ様の仰った通りですね。ほらほら、早く入ってきなさい」
その髭を頭に巻いた男が玄関に向かって手招きをすると、さらに何十人もの同じような髪型の男たちが家に乗り込んできた。しかもタンクトップに短パン。何これ恐すぎる。
あたしはといえば、死にたくはないし、変なことをされたくはないしで、こっそり家を出ていこうとしていた。気分はコソドロ。
が、あと一歩で外の世界へ、というところで、首根っこ捕まえられて家に連れ戻される。
「さぁさ、荷物を車に運びますよ」
「はい!」
男が振り向いてそう言ったので、あたしもつられてそちらを見ると、男達が各々荷物を抱えて立っていた。そのままあたし達の目の前を通り過ぎて、乗ってきたと思われる超巨大トラックに詰めていく。
「お嬢さん、カササギ荘へ行かれるんですよね?」
「はい?」
男に尋ねられたが、そんなに話は知らない。
もしかしてカササギ荘っていうのは、あたしの下宿先なのだろうか。
よく分からないけど、おばあちゃんがこの男達に何やら頼んだということだから、それしか考えられない。
だけど明らかに怪しいよな。
ちょっと考えさせてくれ。
そう言おうとしたが、無情にもあたしは、男達によって荷物とともにその汗臭いトラックに詰められてしまった。
後ろでバタン、と扉が閉まり、辺りが真っ暗になる。
しばらくしてトラックは動き出し、あたしはその暑苦しさに顔を歪めながら、カササギ荘まで、揺られることになったのだった。