第2話 鮮やかな手際
「ただいま~、ってうわぁ!」
ある日、学校から帰ってきた私は、リビングを覗いて大声をあげた。
そりゃ誰でも、おばあちゃんと二人暮しの部屋に、十人ほどのおばあさん達が列座していたら、そうなると思う。
「どうしたの?」
リビングの一番手前にいたあたしの正真正銘のおばあちゃんに尋ねると、おばあちゃんは座っていた座布団からゆっくりと腰をあげた。
「あのね、弥生ちゃん。話があるのよ」
真剣な面持ちでそう言うおばあちゃんに、つられてあたしも頷いた。
周りのおばあさん達も、一斉に頷く。異様な光景だ。
「弥生ちゃん、あのね、おばあちゃん、老人ホームに入ることになった。ここにいる、友達と」
老人ホーム、と一度言い慣れない言葉を口の中で転がしてから、考える。老人ホーム。もうおばあちゃんもそんな歳か。
周りにいるのはどうやらおばあちゃんの友達らしく、おばあちゃんがそう言うと女子高生のようにキャッキャとはしゃいでいた。
時が過ぎるのは早いなぁ、となんだか寂しい気持ちになって、ふと気づいた。
あれ? あたしはどうなるの?
「それでね、弥生ちゃん。この家に一人は危ないし、寂しいでしょ。だから、あそこにいる美代子さんの知り合いに頼んで、下宿させてもらうことになったのよ」
あそこにいる美代子さんは糸のような目が印象的な、優しそうなおばあさんで、あたしと目が合うとにっこり笑って会釈してくれた。慌ててあたしも頭を下げる。
けれどもおばあちゃんの話はまるで頭に入ってこず、呆然とする。
下宿? ホームステイみたいなのとはまた、違うんだよね。
そのうちに、おばあちゃんはさっさと荷物をまとめてしまい、友達を引き連れて玄関まで行ってしまった。
「下宿先には今日から行くって連絡してあるからね! じゃあね!」
ちょっと待って、という間もない鮮やかな手際。
玄関には、相変わらず唖然としたままのあたしが残された。