第10話 感嘆の声
木々羅の部屋から出たものの、どうすることもできずに廊下の壁にもたれかかっていたら、しばらくしてから茶々林がやって来た。
「少女よ。少年は深く傷ついていたぞ」
茶々林はニヤニヤ笑いながら、ズボンのポケットから鍵を取り出した。
「それはしょうがないと思います」
正直このカササギ荘から出ていきたいくらいの気分ではあったが、そうすると本当に行くあてがなくなる。
カササギ荘も、案内してくれたのがこの髭男だと言う時点で十分怪しいが、野宿するよりはまだマシだと言えるだろう。
というか、おばあちゃんのせいで、こういうことになるのは慣れっこだから、もうあまり驚かない。慣れとは恐ろしいものである。
「次はあんたの部屋を紹介しようかね」
そういえば、木々羅は同じ階の住人なのだなぁとぼんやりと思う。ということは、木々羅の部屋の造りと、同じなのではないだろうか。なんか、嫌だ。
あたしが顔をしかめると、茶々林はからからと笑った。
「そんな可愛いかね。その顔。なんだっけ、エキゾチックなんとか的顔だったよな」
「エキゾチックショートヘアです。昔から、不貞腐れたときの顔に似てるって言われていて……」
「確かに、似てるなぁ」
茶々林は、あたしを先導しながらぼんやりと呟いた。この階に部屋は三つだけらしいが、あたしを哀れに思ったのか、木々羅の部屋から一番遠くにしてくれるらしい。カササギ荘では、部屋と部屋同士が地味に離れているらしく、そのためエレベーターからもそこそこ遠いそうだが、
背に腹はかえられない。
変態と近くの部屋より、エレベーターから遠い部屋の方がマシだ。
「さ、ここがあんたの部屋だよ」
茶々林は、鍵を鍵穴に差し込むと、クイッと軽めに回した。カチャン、と音がなり、ドアが開く。
部屋を覗き込んだあたしは、感嘆の声を上げた。