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異世界で王位継承争いに巻き込まれた  作者: しゃもじ
第四章 アンジェリカの希望とバミンガム侯爵家が求める婿
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第十話 久しぶりのお茶会

 俺達が王都に戻ったのは土の日の夜。

 その日は各々邸に泊まった。

 翌日は休日だ。

 俺とアンジェリカは午後に寮に戻り、談話室に向った。

 恒例のリア主催のお茶会だ。


「ただいま」

「ただいまですわ」


 部屋には皆が揃っていた。


「お帰りーって、その様子だと上手くいったんだ?」

「勿論ですわ」


 隣を歩いていたアンジェリカは、俺の腕に抱き着いてセラの質問に答える。


「近すぎ!」

「近すぎるわ」


 セラとリアが指摘する。

 アンジェリカは笑顔で、「では離れますわ」と言って、自分の席に座った。

 俺も自分の席に座る。


 メイドさんが紅茶を入れてくれるのを待って、遮音壁を展開し、皆を見回す。


「色々あるが、何から話す?」

「時系列で良いんじゃないかしら」


 リアの答えに頷き、順を追って話し始める。

 出発から順に、森に侵入した所まで話を進める。


「――で、クラリスと話をして、何かおかしいと気づいたわけだ」

「あ~、クラリスちゃんか~」

「それは予想出来なかったわ」

「ハズレちゃいましたね」


 セラ、リア、モニカが楽しそうだ。

 レイチェルに顔を向けると、苦笑を浮かべて教えてくれる。


「アレクさんがいつ勘違いに気付くか、という話をしていたんです」

「そんな話をしていたのか……」

「昨日の話ですよ! 討伐が無事終わって、死亡者もいなかったって情報が届いてからの話です。それまでは皆ずっと心配していました」


 レイチェルが必死に弁解する。

 でも、討伐の話が出る前も楽しんでいたことは知っている。


「まあ、分かった。話を続ける」


 探索中に魔物の咆哮が聞こえ、森から脱出したこと。

 トーマスさん達がドラゴンを連れて来たこと。

 サーペントの乱入があったこと。

 皆が必死に戦って、ドラゴンを討伐したこと。


 皆が真剣に聞いている。

 Aランクのドラゴンだからな。

 逆の立場なら、俺も興味津々になるだろう。


「――で、結果的にだけど、誰も死なずに済んだ。侯爵の話では、重傷者についても時間を掛ければ治るし、後遺症が残るようなこともないらしい」

「ドラゴンが出てその結果は奇跡だね」


 コリーが感想を述べる。

 同感だ。


「キングボアに続いてドラゴンか……アレクは引きが強いな」

「呪われているんじゃないかと思うよ。メア子爵領に向った時も、丁度魔物の氾濫が起きたし」


 うんざりしながらダミアンの指摘に答える。

 魔物の氾濫、キングボア、ドラゴンと、行く先々で何かが起こる。


「アレクがいなくても全て起こったわ」


 リアが慈愛の籠った笑顔を向ける。


「むしろ、アレクがいたから被害がなく終わったのよ」

「そうだね。アレクがいなかったら、魔物の氾濫の情報はあんなに早く届かなかった。サザーランドに被害が出なかったのはアレクのおかげだよ」


 セラも優しい声でリアに同意する。


「ブリスト伯爵領も、アレクが行かなかったら村民に大きな被害が出ていたな」


 ダミアンがそう言うと、レイチェル、コリー、モニカも笑顔で頷く。


「バミンガム侯爵領もですわ。アレクがいなければ、お父様はサーペントに襲われて死んでいたかも知れません。ドラゴンを倒せたのもアレクがいたからですわ」


 アンジェリカも俺を励ますように言う。

 何か皆を心配させてしまったようだ。


「え~と、その……ありがとう」


 皆が笑顔を向けてくれた。

 なんだか恥ずかしい。


 俺は咳払いを入れて話を進めた。

 侯爵邸に赴き、クラリスとローレンスさんが婚約したこと。

 クラリスが後を継ぐこと。

 アンジェリカと婚約すること。

 その他諸々のこと。


「――で、帰ってきてお茶会をしている」


 話が終わり、皆一息つく。

 落ち着いてから、リアとセラに婚約の話をする。


「もう報告が入っているだろうけど、婚約の話をするってことで良いのか?」


 二人に確認すると、揃って頷く。


「今の状況だと、黙っている方が変な期待を持たせることになるわ」

「公にして、王位に興味はありませんって言った方が良いよ」


 リアとセラの見解だ。


「セラは城の状況を聞いているんだろう。そんなに酷いのか?」

「酷いって言い方はおかしいけど、アレクに王位を期待し始めているのは、ウェルズ侯爵周辺だけじゃないから」

「俺が王位を望んでいないことは、昔から公言しているんだけどな」

「貴族学園に入学したことで、気持ちが変わったと思っている人もいるみたい」

「まあ、俺の入学はそう思わせる意図があったからな」


 元々そう思わせて、リアとベンジャミンの婚約を回避させたのだから当然だ。

 軽く息を吐く。


「分かった。俺から面会の依頼を出す。全員の両親で良いな? アンジェリカの所は侯爵しか来られないと思うけど」

「お母様にはバミンガムで報告していますし、問題ありませんわ」


 アンジェリカが了承する。


「私の両親も王都にいるから丁度良いよ」


 セラも大丈夫なようだ。


「私も大丈夫よ。お母様も多分来ると思う。あとは、余計な人達が来ないことを祈るだけね」

「一番来そうなのはお婆様だな」


 呼んでもいないのに来そうなのはお婆様だ。

 俺の言葉にリアが微笑を浮かべる。


「俺の両親も来ると思う。来週の休みで良いか?」


 三人が頷き了承する。

 バミンガム侯爵も来週ならいるはずだ。


「なら、それで決まりだな」


 話が終了した。

 それを待っていたかのように、コリーが話しかけてくる。


「アレクも大変だね。三人もお嫁さんを貰うなら相当稼がないと」

「男爵の年金だと厳しいな」


 平民からすれば十分裕福だろうが、婚約者三人は、王女、侯爵令嬢、伯爵令嬢だ。

 そこまで落差のある生活はさせられない。


「ブリスト伯爵領でボア狩りでもするかな。頑張ればビッグボアも刈れるようになるかも知れない」

「ドラゴンを倒した人が何を言っているのさ」

「アレクなら単独でキングボアも倒せそうだな」


 コリーが笑い、ダミアンが無茶を言う。

 ……いや、近衛騎士の訓練を受け続ければ、無茶でもないのか?


「私も戦う!」

「そうね。冒険者生活も悪くないわね」

「わたくしももっと強くなりますわ」


 セラ、リア、アンジェリカが、令嬢らしからぬことを言う。

 彼女達の言葉に思わず顔が綻ぶ。


「アレクさんなら近衛騎士にもなれそうですけどね」

「あっ、確かにそうですね」


 レイチェルとモニカの言うように、近衛騎士になれればそれもありだ。

 近衛騎士は一代男爵や一代子爵よりも、ずっと給料が良いというのは有名な話だ。


「近衛騎士ならもう一人くらい増えても大丈夫そうだね」


 コリーが余計なことを言う。

 三人の笑顔がちょっと怖くなった。


「他の女性を妻にする気はないよ」


 俺がそう言うと三人の表情が緩む。

 ホッと胸を撫でおろし、コリーに仕返しをする。


「領地貴族はそういう人も多いけどな」


 領地貴族には複数の妻を貰う人が多い。

 俺達の親はリアを除き一夫一妻なのだが、領地貴族の多数派ではない。

 前ブリスト伯爵も三人の妻がいた。


 コリーなら複数人の妻を貰っても平気じゃないか?という意味で言ったのだが、モニカだけでなくレイチェルの笑顔も固まった。


 ――すまん、ダミアン。


 しかし、ダミアンは容易にこの状況を脱する。


「そういう人も多いな。でも、俺は婿だし、レイチェルがいればそれで良い」


 レイチェルの目を見てそんなことを言うから、レイチェルが赤面して俯く。

 ダミアンは、こんな甘いことを言う男だったろうか。


「ぼ、僕もモニカちゃんだけで良いよ!」

「だけ『で』?」

「モニカちゃんだけ『が』良いんだ!」


 モニカに指摘され、コリーが言い直す。

 多少は仕返しになったな。


 リア達三人はその様子を見て、クスクスと笑う。

 その後は和やかなお茶会となった。


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