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異世界で王位継承争いに巻き込まれた  作者: しゃもじ
第四章 アンジェリカの希望とバミンガム侯爵家が求める婿
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第二話 アンジェリカの質問とオフィーリアの回答

 アンジェリカの唐突な質問に、一瞬全員が黙り込む。

 アンジェリカの視線はリアに向いている。

 リアは微笑みを浮かべ話し始める。


「何のことかしら?」

「勿論オフィーリア殿下とアレクの婚約についてです」


 予期していなかった質問に俺は驚く。

 アンジェリカは、俺とリアが婚約していると疑っているのだろうか?

 事実みたいなものだが……


 リアの表情を伺う。

 特に動揺しているようには見えない。


「婚約した、という事実はないわね」

「正式な発表がないことは知っています。ですが、何かしらの約束や合意が出来ているのでしょう?」


 アンジェリカは確信を持っているような話し方だ。

 とはいえ、リアを責めている感じも受けない。


「何故そう思うの?」

「殿下、アレク、セラフィナの三人は、共通認識で動いているように見えます。このお茶会にしても、三人はホスト側、わたくし達はゲスト側の立ち位置です」


 よく見ている。

 その認識は正しい。

 リアは心なしか嬉しそうな表情に見える。

 隠す気がないのかも知れない。


「それにセラフィナの態度が、殿下ともわたくしとも争っているように見えません」

「私?」

「先程の態度も変でした。あれは、わたくしと競い合うのではなく、わたくしに諦めさせようとしている態度です。セラフィナらしくありません」

「あ~」


 セラが納得してしまっている。

 確かにセラは、正々堂々競い合うタイプだ。

 入学前もそんな発言をしていた。


「ですから、既に内々に婚約が成立しているのではないかと考えました。多分、アレクに二人が嫁ぐ形で」


 ほぼ正解だ。

 リアは満面の笑みに変わっており、セラは軽くため息をつく。


 これまでだな……


 リアが俺とセラの方を向く。


「二人とも良いかしら?」

「……うん」

「まあ、皆なら構わないだろう」


 セラと俺が同意する。

 アンジェリカから「やっぱり……」という声が漏れ聞こえる。

 リアはアンジェリカに向き直る。


「アンジェリカの推測でほぼ正解。親に報告したわけではないから正式な婚約ではないけれど、三人の間では結婚の約束は済んでいるわ」

「報告していないのですか?」


 リアの説明を聞いて、アンジェリカが不思議そうに尋ねる。


「私の母に伝えると、侯爵に話が漏れそうだから……」


 リアが苦笑を浮かべる。


「ウェルズ侯爵ですか……」


 アンジェリカは、「なるほど」という表情を見せる。

 特に怒った様子はない。


「黙っていてごめんなさい」

「お気になさらず。理由は想像がつきますわ。……王位継承争いに巻き込まれないようにするためでしょう?」


 リアが頷く。


「黙っていて悪かったな」

「ごめんね」

「構いませんわ。状況は理解出来ているつもりでしてよ」


 俺とセラの謝罪にも笑顔を見せてくれる。

 本当に申し訳ない気持ちだ。


「皆も黙っていて悪かった」


 他の友人達にも謝罪する。


「だ、大丈夫です」

「気にしていませんよ」

「俺も気にしていない」

「僕も同じだよ」


 モニカ、レイチェル、ダミアン、コリーも謝罪を受け入れてくれる。

 リアとセラも、ホッとした表情に変わる。

 友人に恵まれたな。


 和やかな雰囲気になったところで、アンジェリカがため息をつく。


「そうなると、アレクをバミンガム侯爵家の婿にするのは難しいですわね」

「すまん。無理だ」


 申し訳ないが、アンジェリカの婿にはなれない。


「アンジェリカはどういう男性が良いの?」

「そうですわね……」


 セラの質問に少し考えるアンジェリカ。


「バミンガム家の婿ですから、当然魔法の才能が最優先ですわ。家柄も必要でしょうね。結婚生活を送る相手ですから、人柄も重要です。気兼ねなく話を出来る間柄が良いですわね。出来れば顔立ちが整っていることが望ましいですわ」

「要求が厳しすぎるし、そんな人いないよ!」

「あら、いますわよ?」

「アレクはなしよ」

「思い当たる人はおりませんね」


 セラとアンジェリカの掛け合いに、周りは笑い声をこぼす。

 そんな簡単に見つかるなら苦労はないな。

 すると、コリーが余計なことを言う。


「アレクのお兄さんは駄目なんですか? 殿下との話が出たのだから、未婚ですよね?」


 その質問は駄目だ。


「あり得ませんわ」

「あり得ないわね」

「論外よ」

「ええっ!?」


 アンジェリカ、リア、セラに即座に否定されて、コリーがたじろぐ。

 リアとセラだけじゃなく、アンジェリカもベンジャミンを嫌っている。


「あんなのと婚約するくらいなら、家を出ますわ」


 言い切るアンジェリカ。

 コリーが「すみません」と小声で呟く。

 可哀そうに……


 すると、アンジェリカは何か考える素振りを見せる。


「でも、……それもありかも知れませんわね」

「えっ、ベンジャミンと婚約!?」

「違いますわ!」


 セラの言葉を即座に否定するアンジェリカ。


「家を出てアレクの妻になるのもありという話です」

「バミンガム家は?」

「妹が継げば良いですわ。同い年にアルフ殿下がいますし」


 アルフ殿下はリアの弟だ。

 オーウェン殿下やカール殿下同様、優秀な魔法の才能の片鱗を見せ始めている。


「それはありなの?」

「良いお相手がいれば別ですけど、同年代には見当たりませんわよね?」


 セラの質問に、アンジェリカが答える。

 セラが考え込んでいるが、俺の知る限り同級生には見当たらない。

 アルフ殿下は年下だし、それなら妹の方が良いのかもしれない。


「カールお兄様も去年婚約したしね……」


 リアが呟く。

 カール殿下は十六才で、去年の末に婚約し、今年の初めに発表された。

 来年あたりに結婚だろう。


「勿論、アレクの気が変われば大歓迎ですわよ」

「それは却下よ」

「なら、わたくしもアレクに嫁入りですわね」

「それも仕方ないかしらね」


 何故かリアは受け入れる方向に向かっており、セラは良い案がないか考えている。

 コリーはまだショックから立ち直っておらず、モニカが慰めている。

 ダミアンとレイチェルは笑みを浮かべて、完全に楽しんでいる。


 別にアンジェリカが嫌なわけではないが、納得出来る婿がいればその方が良い。

 アンジェリカの希望に合う婿の、心当たりがないわけでもないのだ。


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