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異世界で王位継承争いに巻き込まれた  作者: しゃもじ
第三章 レイチェルの不安とメア子爵領の問題
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第五話 魔物領域の状況

「交代の時間です」


 馬車の外からバートさんの声がかかり目を覚ます。

 トーマスさんとダミアンもすぐに起きた。

 時間は深夜。

 外はまだ暗く、かがり火の光が辺りを照らしている。

 もう一台の馬車からは、レイチェルが降りてきている。


「では、よろしくお願いします」

「はい、おやすみなさい」


 バートさん達と見張りを交代する。

 かがり火の近くに行くと、少し離れた場所にボアの死体の山が置いてある。


「寝る前より少し増えているな」


 ダミアンが言う通りボアの山が少し大きくなっているが、思っていたほどではない。

 夜なのでそれほど活動しないのかも知れない。


「まあ座りましょう」


 トーマスさんの言葉に頷き、俺達はかがり火を囲んで座る。


「眠れたか?」

「うん。横になってすぐに眠れた」


 ダミアンとレイチェルが話をしている。

 レイチェルも良く眠れたようだ。


「バートさん達が起きたら直に出発です。今日は昨日より長距離を移動することになりますから、皆さんは体力を温存してください。魔物が来たら私が倒します」


 トーマスさんに言われ、俺とダミアンは素直に頷く。

 俺達は静かに会話しながら時間を過ごす。



 ◇



 日の出前だが、少し明るくなってきた。

 結局魔物は一体も来なかった。

 やはり夜は魔物も活動しないのだろう。


「一体来ました」


 トーマスさんはそう言うと、剣を持って立ち上がる。

 表情が少し真剣だ。


「ボアではなさそうですね……」


 トーマスさんの言葉に俺達は緊張する。

 トーマスさんの視線の先を窺う。

 何か近づいてくる魔物が見える。

 俺も探知魔法で捉えた。

 ボアよりも反応は強い。


 少しずつ近づいてくるその魔物は――


「ボア?」


 レイチェルが呟く。


「いいえ。ビッグボアです」


 トーマスさんが訂正する。

 魔物の姿がはっきり見えてきた。

 形はボアと同じだが、明らかに大きい。


「お手本です。ビッグボアは普通のボアに比べ、全体的に倍くらいの大きさです。重さは八倍ですね」


 トーマスさんは土弾を放つ。

 ビッグボアに直撃するが物ともしない。

 勢いは変わらず突っ込んでくる。


「このように顔に当てても倒れづらいです。ですから足を狙いましょう」


 トーマスさんは土弾をビッグボアの足元に放つ。

 土弾は右前足に直撃し、ビッグボアは大きな音を立てて転倒する。

 その直後、いつの間にか近づいたトーマスさんは、あっさりとビッグボアの首を刎ねる。


 トーマスさんが俺達の方に向き直る。


「一撃で倒せない場合もありますから、攻撃したらすぐに離脱。ビッグボアが立ち上がるようなら、再び足を攻撃します。出来れば二人以上で戦った方が良いでしょう」


 トーマスさんの説明に頷く。

 すると、バートさん達が起きてきた。


「大きな音がしましたが……ああ、ビッグボアですか」

「起こしてしまいましたね。申し訳ない」

「いえ、日の出のようですし、丁度良い時間ですよ」


 バートさん達は何でもないような態度で活動を開始する。


「ビッグボアに驚かないですね?」

「Cランク魔獣が出るのは聞いていましたからね」


 俺の疑問にトーマスさんが答える。

 そうか……ビッグボアでCランクか。

 巨大なビッグボアの死体を見る。


「手順通りやれば、二人なら大丈夫ですよ」

「「はい!」」


 俺達はトーマスさんに力強く返事をした。

 トーマスさんは笑みを浮かべて頷いている。



 ◇



 朝食後、街道を進み始める。

 昨日同様ボアが襲ってくる。

 遭遇間隔は明らかに短くなってきている。


 偶にビッグボアが混じるようになってきた。

 一体だけ俺とダミアンで戦わせてもらった。


 まず、俺が土弾で足を崩す。

 それを見てダミアンが突撃し、戦槌を振るう。

 大きなダメージを与えたようだが、ビッグボアは立ち上がる。

 俺はすぐさま二発目の土弾を放ち、再び転倒させる。

 ダミアンが再度戦槌を振るい、討伐に成功。


 トーマスさんからは「上出来です」とのお言葉を貰った。

 Cランク魔獣でもなんとかなることが分かりホッとする。


 昨日より速度を上げて進む。

 魔物はバートさん達が短時間で倒し、ひたすら進む。


 そして正午前。

 街道の中間付近――魔物領域に最接近する地点に到達した。



 ◇



「酷いですね……」


 バートさんが周囲の状況に眉を顰める。

 遭遇間隔はどんどん短くなり、五分に一度は遭遇する。

 ビッグボアに遭遇する頻度も増えている。

 探知魔法の範囲には常に魔物がおり、普通の冒険者が護衛では進めないだろう。


「周囲の調査は必要ないでしょう。このまま先に進みます」


 バートさんが馬車を進める判断を下す。

 反対意見はない。


「昼食は馬車の中で各自取ってください。夜にはメア子爵領の村に辿りつけるでしょう」


 街道の途中。メア子爵領に入った辺りに村がある。

 レイチェル曰く、交易で使われていた村なので、宿もあるそうだ。


「レイチェル。村は魔物の被害を受けていないのか?」

「被害を受けたという話は聞いたことがありません。領境に大きな川が通っているので、そう簡単に魔物は来ないです」


 村の被害が気になって聞いたが、問題はないようだ。

 俺は安心したのだが、トーマスさんは気になるようだ。


「子爵に言って避難させた方が良いかも知れません。ボアはともかく、ビッグボアなら大きな川でも越えますよ」


 トーマスさんの指摘にレイチェルは焦った顔を見せる。

 レイチェルは心を落ち着ける様に息を吐く。


「父に伝えます」


 レイチェルはトーマスさんに返答し、トーマスさんは頷きを返した。

 直後、トーマスさんが魔物領域の方を向く。

 その顔には焦りの表情が見える。


「トーマスさん?」


 トーマスさんに声をかける。


「……魔物領域付近の魔物の動きが、急に活発になりました」

「えっ、それって――」


 俺が疑問の声を発すると同時にーー


 周囲一帯に正体不明の咆哮が響き渡った。

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