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異世界で王位継承争いに巻き込まれた  作者: しゃもじ
第二章 モニカの悩みとアルハロ男爵領の問題
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第七話 まさかの大発見

 無事、全員が討伐に成功したが、岩ゴーレムはまだまだいる。

 俺達は喜びを分かち合う暇もなく、次々やって来る岩ゴーレムを倒し続けた。

 少しずつ討伐にも慣れ、岩ゴーレム討伐が単純作業に変わっていく。

 次第に集中力が切れていくのだが、すぐにトーマスさんからの叱責が入り、集中力を取り戻す。


 そんなこんなで、午前中一杯岩ゴーレムを狩り続けた。



 ◇



「疲れた……」

「何体倒したんだ?」

「分からん」


 コリー、俺、ダミアンは、周囲の岩ゴーレムの残骸を見回す。

 やって来る岩ゴーレムを倒し続けた結果、周囲は岩ゴーレムの残骸だらけになっている。


「五十弱くらいですかね。今日はこのくらいで良いでしょう」


 トーマスさんが終了を宣言する。

 とりあえず、探知範囲にはいない。


「これだけ倒しても、一銭にもならないんだよね」


 コリーが岩ゴーレムの残骸を拳で叩きながら言う。

 アルハロ男爵領のことを言っているのだろう。


「まあ、頑張れ」


 俺がそう言うと、コリーは微笑みを浮かべる。

 決心はついたのだろうか?


「せめて魔石でも取れればな」

「首を切り落とすくらいしか手がないな」


 ダミアンの言う通り、魔石でも取れれば多少は金になるのだが、討伐の過程でどうしても砕くことになってしまう。


「火魔法で岩だけ溶かせないかな?」


 コリーは冗談めかした言い方で、砕けた頭部に指を向ける。

 指先からバーナーの様に、青い炎を出す。

 あそこまで収束させるのは凄い。

 コリーは火魔法の才能に秀でており、元々得意ではあったのだが、入学時よりも随分上達しているようだ。


「あ、溶けてきた」


 コリーの言う通り本当に溶けてきている。

 凄いな……岩って何度で溶けるんだっけ?


「あれっ?」

「どうした?」


 コリーが岩を溶かしながら不思議な顔をしている。

 コリーに近づくと、少し熱さを感じる。

 火は小さいのだが、温度は相当に高そうだ。

 本人には影響がないのが不思議だ。


「なんだろう? 溶けた岩の表面に何か出てきている」


 溶けた岩の表面を見る。

 確かに溶け落ちる岩の表面に、砂粒のようなものが浮かんでいる。

 火魔法では溶けていないようだ。

 トーマスさんとダミアンも近づいて覗き込む。


「溶けてないように見えるな」


 ダミアンが言う。

 岩が溶けるほど、その砂粒が表面に浮かんでくる。


「……ミスリル?」

「「「えっ!?」」」


 トーマスさんの呟きに俺達は驚く。


「これ、ミスリルなんですか!?」

「分かりません。ですが、岩ゴーレムが溶ける温度で溶けないとなると……」


 他に思い浮かばないということか。


「とりあえず一旦冷やして固めましょう」


 トーマスさんの指示通り、コリーは火魔法を止める。

 全員距離を取ってから、トーマスさんが水魔法を使う。

 一気に水蒸気が上がる。

 トーマスさんは水蒸気が収まるまで水魔法を使い続ける。

 岩は固まったようだ。

 トーマスさんは慎重に岩を手に取り、表面を観察する。


「……ミスリルだと思います」

「「「……」」」


 俺達は絶句する。

 大発見だ。


「……どうしましょう?」

「鑑定に出す必要がありますが、とりあえず他からも取れるか確認してみましょう」


 俺達は頷き、各々動き出す。

 しかし、問題が発生する。


「溶けないな……」

「俺もほとんど溶けない」


 岩ゴーレムはダミアンの火魔法では全く溶けなかった。

 俺の火魔法でもほとんど解けない。


「私も無理ですね」


 トーマスさんが首を振る。


「コリーだけか……」


 コリーだけは順調に溶かしている。


「コリー君、魔力の方は大丈夫でしょうか?」

「そうですね……少し厳しいかも知れません」


 コリーも厳しいようだ。

 トーマスさんが考える。


「……頭部を優先しましょう。他の部位も確認したいですが、それは後回しです」


 コリーが頷く。

 岩ゴーレムを溶かすコリーを見ながら、トーマスさんに話しかける。


「大発見ですよね?」

「ええ。ミスリルは本当に少ないですから。岩ゴーレムの価値が大きく変わります」


 トーマスさんの言葉に気持ちが高揚する。

 視線の先では、コリーが別の岩ゴーレムの欠片を溶かし終えた。

 先程と同様に冷やし固めて確認すると、表面にミスリルが確認される。


 トーマスさんが考え込む。

 俺達は黙ってトーマスさんの言葉を待つ。


「他の部位を砕いて持ち帰りましょう。持てるだけで結構です。コリー君には申し訳ないですが、明日以降の放課後の時間に、ご協力をお願いします」

「は、はい!」


 トーマスさんの依頼にコリーが返事をする。


「今日溶かした分は城で鑑定します。おそらく間違いないと思いますが」


 そう言うと、真面目な顔をしていたトーマスさんの顔が笑顔に変わる。


「ミスリルだと確認されれば、勲章物の功績ですよ」


 それは、そうなのだろうな。

 でもこの功績は――


「コリーの功績で良いですよね?」

「えっ、僕!?」


 コリーの功績に間違いないだろう。


「そうだな。俺もそう思う」


 ダミアンも同意する。

 意味あり気な笑みを浮かべている。


「……モニカも喜ぶぞ?」

「なっ!?」


 ダミアンの言葉に、コリーは顔を赤くする。


「アルハロ男爵も大喜びだろうな」


 俺もコリーを揶揄かう。

 コリーは顔を真っ赤に染めて何も言えない。


「では、報告書にはコリー君の発見と記載しましょう。我々三人は共同発見者とします」


 トーマスさんが笑顔でそう言う。

 俺とダミアンは笑って頷く。

 コリーはおろおろしていたが、最後には納得して頷いた。


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