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異世界で王位継承争いに巻き込まれた  作者: しゃもじ
第二章 モニカの悩みとアルハロ男爵領の問題
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第五話 実地訓練を終えて

 岩ゴーレムを倒した後は順調に進み、訓練時間に多少余裕を持って森を出た。

 広場には同級生達の姿が見える。

 その中にはリアの姿もあった。

 俺達の学年は三十人で、今日は六人ずつ五班編成だ。

 戻っているのは、俺達を含めて四班のようだ。

 班員から離れ、リアの元に向かう。


「リア、お疲れ」

「お疲れ様、アレク」

「本当に疲れているな」

「ええ。実戦って思ったより大変ね」


 微笑を浮かべるリアの顔には、少しだけ疲労感が見える。

 リアの班員を見ると、こちらはぐったりしている。

 とりあえず怪我をした学生はいないようだ。


「ただいまー」


 セラがやって来た。

 いつの間にか、セラの班も戻って来ていたようだ。

 これで全班戻って来たことになる。


「お帰り。セラは元気そうだな」

「私も疲れてるよ」

「そうは見えないわね」


 セラは元気一杯に見える。

 リアも俺と同じ感想のようだ。

 二人と会話をしていると、男性教員が大きな声で指示を出す。


「全員無事に戻って来たな。疲れているだろうが、すぐに持ち物を確認して馬車に乗ってくれ。暗くならない内に帰るぞ」


 今日は日帰りだ。

 朝から移動して、早めの昼食後に訓練を開始。

 訓練を終え戻ってきて、今は午後二時くらいだ。

 全員、重い腰を上げる。


「続きは帰ってからだな」

「そうね」


 リアが返事をし、セラは頷いて自分の班に戻って行った。

 俺も自分の班に戻り、すぐに班ごとに馬車に乗り込んだ。



 ◇



「三人だけで岩ゴーレムですか?」


 馬車の中で、トーマスさんに岩ゴーレム狩りのことを話した。

 以前、男子風呂で会話した内容だ。

 そのための訓練は続けていて、女性陣にも知られている。


「何でまた?」

「岩ゴーレムくらい簡単に倒せる男の方が、格好良いでしょう?」


 俺がそう言うと、モニカが顔を赤くして少し俯く。

 アンジェリカとレイチェルは、その様子をニマニマと笑みを浮かべて見ている。

 ダミアンが微笑を浮かべてコリーを見ており、コリーは無言で視線を逸らす。

 二人は最近、満更でもなさそうな雰囲気になっている。


「ああ……」


 トーマスさんが頬を緩ませる。

 モニカがアルハロ男爵令嬢であることは先程伝えているので、状況を察したようだ。


「まだ難しいのではないですか?」

「訓練は続けています。予定では一ヶ月半後くらいに挑戦しようかと」

「一ヶ月半後ですか……」


 トーマスさんが顎を触りながら考える。

 大丈夫だと思うけど……


「厳しいですかね?」

「装備は戦槌を使うのですよね?」

「はい」


 また考え込む。

 う~ん、そんなに難しいだろうか。


「宜しければ、私が訓練を見ましょうか?」

「トーマスさんがですか!?」


 思わぬ申し出に驚く。

 皆、目をまるくしている。

 近衛騎士が訓練を見てくれるなんて、普通はあり得ない。


「ええ、休日だけですが。アレク様なら騎士団の訓練場にも普通に入れますし、戦槌も貸し出し出来ます」

「それは何というか……良いのですか?」

「アレク様なら問題ありません。王族ですから」


 問題はあるだろう。

 王族も色々だから……ベンジャミンとか。


「但し、条件があります」

「条件ですか?」

「当日は私も行きます」

「え!?」


 まさかの同行依頼だ。

 驚く俺を見て、トーマスさんが肩を竦める。


「実際は訓練を見る条件ではなく、狩りを認めるための条件です。アレク様は目を離すと一人で魔物領域に行きますが、本来は駄目ですから」

「法律上は禁止されていませんし……」

「立場を考えてください」


 トーマスさんが小声で「特に今は……」と呟くのが聞こえた。

 今、俺に何かあると、色々大変だからな。

 皆にも聞こえたと思うが、何も聞かないでくれている。


「了解です。二人とも良いか?」


 ダミアンとコリーに尋ねる。


「構わない……というより、ありがたい話だろう」

「勿論良いよ。僕らに不利益は何もないもの」


 二人は了承してくれた。

 その後、トーマスさんと話し合い、今後の予定が決まった。

 明日の休日は休養を取る。

 来週以降の休日は、朝から夕方まで、騎士訓練所場でトーマスさんの特訓を受ける。

 平日の日は身体強化に注力して訓練する、と決まった。



 ◇



 翌日の休日。

 今日はリアと二人だけのお茶会だ。

 他の皆は実地訓練の疲労があるので休養を取っている。

 セラも用事があるらしく、王都のサザーランド伯爵邸に戻っている。


「騎士訓練場で近衛騎士相手に訓練ね」

「俺は王族だから構わないらしいぞ」

「権力の私物化よね、今更だけど」


 リアがクスクスと笑う。

 俺もリアもセラも、小さい頃からトーマスさん達に教わっていた。

 確かに今更ではある。


「それで、コリーとモニカは上手くいきそうなの?」


 リアが面白がるような視線を向けてくる。

 そういえば、リアとこの話はしていなかった。


「岩ゴーレム狩りに成功さえすれば、多分上手くいくと思う」

「二人の気持ちはどうなの?」

「二人とも満更でもないように見えるけど……もしかして反対か?」


 別の相手を見つけることには、同意してくれていたはずだが……


「賛成反対以前に、コリーのことをよく知らないからね」


 リアは俺以外の男子とは、適当な距離を取っている。

 コリーのことをよく知らないのも当然だ。


「良い奴だよ。真面目だし、才能もあるし」

「二人が嫌でなければ良いのだけどね」

「気になるのか?」

「自分の恋路のために他の男性を勧めるのだから……多少罪悪感はあるわ」


 リアはそう言って視線を落とす。

 その様子に顔が綻ぶ。


「大丈夫。コリーは自信を持って勧められる男だ。それに無理強いはしない」

「それなら良いけど」

「一緒に訓練するか? 人となりを知れば、安心出来るだろう?」

「止めておくわ。私がいたら、コリーもダミアンもやり辛いでしょう?」


 確かにそうかも知れない。

 少し考えて頷きを返す。

 代わりに、女性陣の探知魔法の訓練を頼んでおいた。


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