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祝福の鉛筆  作者: 暮伊豆
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夏休みも終わりに近付き、我利田一家はハワイから帰ってきた。二学期まで残り5日。ベンジは宿題を終わらせることができるのだろうか……




さてと、サマーワークか。まずは数学からやるとするか。中1の復習とか無駄なページ使ってんじゃないよ。ボクは中2だぞ? ばかなことさせるなよ。まあいい、この鉛筆があれば。


ふふ、1時間ちょっとで1冊が終わった。さて、鉛筆削って次は英語だ。痛っ、ちょっと勉強しすぎたかな。やーめた。芸夢暴威でもするか。ハワイでもやり込んだし、今のボクは無敵の芸夢暴威使いだ。本格アクションゲーム『ツインドラゴン』でボクに勝てる奴なんか絶対いないな。


おっと、夜更かししてしまった。もうすぐ朝じゃないか。まあ夏休みだから関係ないけど。寝るとしよう。




うーん、よく寝た。昼ぐらいかな。部屋が騒がしいぞ? げっ!?


「おーガリベン! いつまで寝てんだぁ?」

「宿題見せてみろや!」

「おらぁ! さっさと出せやぁ!」


「…………こ、これ……」


くそ、ママのやつ、なんでこんな奴らを部屋に入れたんだよ……


「あぁ!? オメー数学しかやってねーじゃねーか!」

「馬鹿かよ!? おらぁ! さっさとやれや!」

「まずぁ英語じゃあ! キリキリやれぇ!」


くそが……ボクの実力を見て驚くなよ? この鉛筆さえあれば……


「おーおー、バランスのええ字ぃ書くじゃねぇか!」

「俺が見とくけぇ松っちゃんと梅ちゃんは遊んどいていいぞ?」

「すまんな竹ちゃん。なら俺ぁ芸夢暴威でもするかのぉ。おっ、ツインドラゴンじゃん!」


梅島の奴、ボクのツインドラゴンを始めやがった。お前みたい脳なしヤンキーにできるような簡単なゲームじゃないんだぞ?




そして1時間。英語のサマーワークが終わった。


「どれ、見してみろやぁ。」

「見た感じ正解っぽいぜ?」

「俺もクリアしたぞ。」


なっ! 梅島の奴。いや、嘘だな。ボクでさえまだ半分も進めないのに。


「おう! 全問正解じゃあ! ガリベンのクセにやるじゃねぇか!」

「おらおら次行けやぁ! 今度は理科じゃあ!」

「今度は俺が見とくぜ? 竹ちゃんもこれやんねーか?」


くそっ、今度は竹島がボクの芸夢暴威を……


「おらぁ! さっさとやれやぁ! その鉛筆使うんじゃろうが! 早よぉ削れや!」

「おっ、ツインドラゴンか。俺これの最初のやつ持ってるぜ!」

「俺の記録を抜けるかぁ? おらぁガリベン! 集中してやれやぁ!」


痛っ、くそ、鉛筆を削るだけで手が痛いぞ……




夕方になる頃、残っていた四教科のサマーワークが終わった。


「おーしガリベン、今日はこんなとこじゃのぉ。残ってんのぁ絵と感想文じゃの?」


「…………う、うん……」


「そんぐれぇならオメーだけでもできんだろ?」

「できなかったらぶち殴るけどのぉ?」

「こいつが課題図書じゃあ! 読んだらオメーが返しとけぇ! ええのぉ?」


「…………う、うん……」


くそが……梅島の奴……ボクに返しておけだと? 舐めた口ききやがって。


それから奴ら三島(さんしま)はバイクの音を響かせて帰っていった。ノーヘルでバイクなんか乗って。事故って死ねばいいんだ。くそ、手が痛い。




8月31日。明日から学校なんて最悪だ。絵も感想文も終わってない。あんな奴らに言われてやるなんて冗談じゃない。ボクはボクがやりたい時にやるんだ。

あれからツインドラゴンもクリアできないし。ぜったい竹島と梅島のせいでコントローラーに変なクセが付いたんだ。


絵か。鉛筆で描いて色は無視だな。ボクの心は白黒だって言えばいい。感想文だって弟のやつを丸写しでいい。勘違いして課題図書を間違えたことにしよう。


ふふ、1時間もかからず終わった。さーてゲームの続きだ。





今日から学校か。嫌だなぁ。明日はいきなりテストだし。あーあ。まあこの鉛筆があるからいいか。どうも勉強しすぎたせいか指が痛いんだよな。






テストから一週間。今日返ってくる。ボクの実力見せてやる。


「おらぁガリベン! 見せてみろやぁ!」

「100点いかんかったらぶち殴るけぇのぉ!」

「どーれどれ?」


ふふん、お前らみたいな脳なしヤンキーと一緒にするな。


「500点……満点……!」

「ガ、ガリベンが満点……!」

「マジかよ……マジじゃん……」


山本達、四本(よんもと)も集まってきた。お前らみたいなテストの点しか取りえのない奴が、ボクに負けるなんてかわいそーにね。


「鉛筆見せろ!」


山本がボクの筆箱をうばい、鉛筆を取りだした。それはボクのだ。見せてやるぐらいならいいが。


「ガリベン……お前……」


どうした山本? そんなにボクに負けたのがショックか?


「もう半分もねーじゃねーか! どうすんだよお前! 今すぐ防人府天満宮に行け! 行って宮司さんに事情を話してこい!」


ばかな奴だ。何をあわててるんだ?


「お前の寿命、半分以上なくなってんだぞ!? 分かってんのか!?」


寿命が半分? だめだな、ばかな奴には付き合いきれない。帰ろう。帰ってツインドラゴンをクリアしないとな。




「ガリベンの奴……葛原? どうにかならんのか?」


「無理だよぉ……我利田君、神様との約束を破った状態なんだから……」


「ほら、お前んとこの先生に頼むとかさ?」


「先生にも言ったし、先生も我利田君ちに行ってくれたんだよ。でも話にならない上に詐欺師扱いされたって……」


「くそ、あいつ……あそこまで馬鹿だとは……」


あれはただの鉛筆ではないのだろうか。そのような鉛筆が普通に中学生でも買える現実。

おかしいのは山本か我利田ベンジか、それとも現実か。ベンジの身に何か起こるのだろうか。

次で終わりです。

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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生
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