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祝福の鉛筆  作者: 暮伊豆
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松島から出された宿題は文字の式ってとこだった。

5a+9aだと?

つまらん問題だ。

こんなのボクが本気を出すまでのない。あの鉛筆を使えばいいさ。


5a+9a=14a


やはり手が勝手に動く。ボクが手を下すまでもない問題はこいつに解かせればいい。あいつら四本(よんもと)の成績がよかったのはこれを使ってたからだな。卑怯な奴らだ。

よし、10問終わり。ふふ、やはり10分とかかっていない。

もうすぐ夏休みだし、うざい奴らと会うこともないな。今年の夏はハワイに行くって言ってたな。暑い時に暑い所に行くってうちの親はばかだ。


そして次の日。

1時間目は数学。一次関数? 何それ?

y=ax+bだと?

英語じゃん! 数学じゃないじゃん!

なんで誰も気付かないんだ?

ばかな教師や教科書がデタラメを教えてるって。


「x=4のとき、y=8です。」


「よーし正解! ええのぉ! バッチリじゃあ!」


葛原が何か言ったようだ。習ってない問題を正解できる私ってすごーいとでも思ってるのか? 誰でもできるだろ。


「おーし! ちぃと時間は早ぇけどのぉ、この5問を解いたモンから休憩じゃあ! 出来たら持ってこい!」


ふっ、ボクの力を見せてやる。


「おっ? 我利田、出来たかぁ! どれどれ……? お前よぉ、全問正解やけど途中計算が全然ねーのは何でじゃあ? 暗算かぁ?」


「そうです。」


「……まあええわい。休憩してええぞ……」


四本達はぽかんとした顔でボクを見ている。ふふん。これが実力だよ。さて、トイレでも行こうかな。


ボクが教室を出て1分もしないうちに葛原も出てきた。そんなにボクに会いたかったのかな? お前みたいな顔がいいだけの貧乳女に興味なんかないんだがな。


「我利田君、さっきのプリント見せて。」


「…………き、教室にある……」


「じゃあ戻ろう? 教えて欲しい所があるの。」


ふん、ようやくボクの実力に気付いたのか。しかし嫌だね。お前みたいな凡人にボクの解き方が理解できるはずがない。無視してトイレに入った。


いつもは誰かが入ってて騒がしいトイレも今はボクの貸切だ。


『……なべ……』


ん? 何か聴こえた? 気のせいかな。

ふふ、誰もいないトイレの個室でのんびりと『芸夢暴威(げいむぼうい)』をする。最高の時間だ。この最新式立体映像携帯ゲームを持ってるのなんてこの学校でボクぐらいだろう。もちろん誰にも話してない。誰にも貸してやらない。


そろそろ1時間目が終わるかな。教室に戻ろう。


『……なべ……』


ん? 隙間風かな? ボロトイレかよ。


2時間目の社会も後半はプリントで全問正解したら休憩していいタイプだった。もちろんボクはすぐ終わらせて、またトイレ。今日はいい日だ。


3時間目の理科、4時間目の英語も同じ。明日が終業式だから最後の仕上げとか言ってたな。そして給食を食べたら帰れる。結局葛原もあれこれ言ってこなかったし。あんな貧乳に用はない。体育の女教師、石神ぐらい大きい胸でないとな。あれはきっとボクを誘っているんだろうな。教師のくせにはしたない女だ。


くそ、今日も松島から宿題を出された。

方程式? 意味が分からん。こんな計算できなくたって生きていけるだろ。そんなことも分からないからどいつもこいつも必死に勉強してんのかね。世の中ばかばっかりだ。

でもばかに合わせることもたまには必要かな。ボクは心が広いからな。この鉛筆を使えば、15問が10分ぐらいで終わった。やはりこの鉛筆はボクに相応しいな。




そして翌日。


「おらぁガリベン! 見してみろや!」


「…………はい……」


「どれどれ……」


相変わらず松島は解答を見ずに答え合わせをしようとする。お前はばかだから間違っても知らないぞ?」


「全問正解かよ……」

「マジかよガリベン!」

「いくら1年の問題やけぇって、やるのぉ!」


ふふ、当然だろ? こんな問題ボクが本気を出すまでもない。


「我利田君……お願いだから鉛筆に注意して。世の中に都合のいい話なんてないんだよ?」


「…………よく分からない……」


鉛筆に注意ってばかなことを言うよな。これだから勉強しかできない女は。




終業式も終わり、通知表が配られた。ボクは全て2。こんな学校の教師程度じゃあボクの実力なんて分からないよな。

ばかな四本(よんもと)達は「オール5を逃した」とか「音楽だけ4だった」とかくだらない話をしていた。

さーて、明日からハワイか。こんな奴らに土産なんか買う気もないし、誰にも言わない。宿題なんてハワイから帰ってからあの鉛筆を使ってやればいい。







「なぁなぁガリベンの奴さぁ、マジでこの鉛筆パクりやがったなぁ。」

「ぷぷっ、あいつマジ馬鹿だよな。欲しけりゃ防人府(さきもりのふ)天満宮にいきゃ売ってんのによ。高いけどな。」

「天神様は不正が嫌いって話も理解できねーんだろうな。馬鹿だから。」

「全くじゃのー。普段から必死こいて勉強したやつだけが定期テストん時のみ加護を貰える鉛筆だってのによ。」


「それをあいつ普段から使いまくってやがるぜ?」

「葛原が一生懸命注意してんのにな? あいつ葛原がどこでバイトしてるかも知らないんだろうぜ?」

「土日とかバイトしまくりで俺らより成績いいって参るよな。」

「あいつはあいつで睡眠時間削って勉強してんだろうよ? 俺らも夏休みで挽回しようぜ。」


「馬鹿を見物するのも悪くねぇが、馬鹿すぎると笑えなくなりそうだよな。」

「その点よぉ、松島達はお人好しだよな。殴ってでもあいつを更生させようとしてんだからさ。」

「先生達ですらもう相手にしてないもんな。きっと内申最悪だぜ? 附属中なのに行ける高校ないだろうな。」

「まああいつんち金持ちだし、どうにでもなるんじゃねぇの? よくこの中学に入れたよな? ここって国立だぜ?」


「色々あるんじゃねぇの? 実は反面教師枠とかよ!?」

「ギャハハ! マジかよ山本! 国立でそんなんあるかぁ!?」

「おいおい、馬鹿の話なんかやめようぜ? で、明日から4日ずつそれぞれの家で合宿じゃんな。」

「おう、まずは海本んちからじゃったな。世話んなるぜ。打倒葛原じゃのぉ!」




時は天暦21XX年。日の本の国、とある地方、とある中学校での出来事である。

この国では古来より霊的な信仰があり、神や霊、妖怪の存在は当たり前だと認識されている。もちろんそれを信じない者もいれば積極的に信仰する者もいる。

今回のケース、神や霊などを全く信じない少年『我利田 ベンジ』には一体どのような運命が待っているのであろうか。

なお『ベンジ』と名付けられた理由は、祖父が『ベンジー』と呼ばれる(いにしえ)のミュージシャンのファンだったからである。

両親はベンジに愛情を注いでいるのだろうか?

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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生
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