#1 旅立ちⅠ
やっと本編に突入しました。変わらず更新は不定期で遅くなると思いますが気長に読んでいただければ幸いです。
暖かい...?
最初はベッドにでも寝かされているのだろうかとも思ったが何故か床が堅い。
確かAOを始めた時は家にいた。流石にクリアまでこれだけ時間がかかっていれば病院とかに移動もされているだろうと思ったけどベッドにいるならこの感触はおかしい。
そんなことを思っていると徐々に意識が覚醒し目をこすりながら体を起こす。
「んぁ...え。ここどこ?」
周りを見渡すが視界に入るのはどこまでも続く白い空間。いや、もう白すぎて部屋なのかどうかも分からない。
「なんだろうこれ。え、もしかしてまだゲームの中?少なくとも現実じゃなさそうだけど」
ふと自分の身体を見下ろせば見慣れた装備に相棒の武器。やはりゲームの中なんだろうか?
ラノベの転生モノみたいな状況だなぁと困惑していると
「ω・`)ノ やぁ!目が覚めたんだネ!」
「うぇわぁ!?」
すごい変な奇声をあげてしまった。声のかかった方をみると何やら浮いている光がいる。
「何驚いてるのさ( *´艸`)」
「いや、そりゃいきなりこんなところで声かけられたら驚くよ!誰もいないと思っていたし。というか進行形で光に話しかけられてるっていう意味不明な状況なんだけど」
「光?あぁそっか。今僕は光だったネ」
変なことを言う目の前の光は何度か明滅する。「ちょっとまってネ」と言うと一段と眩しくなり、思わず目を閉じてしまう。
少しすると光は収まったようで、「もういいよ~」と声がかかる。
先程光がいたところを見るとそこにいたのは少年のような姿をした人が立っていた。
何処かで見たようなメルヘンチックな格好にチェック柄の帽子。そう、まるで不思議な国のアリスに出てくるチェシャ猫と帽子屋を混ぜたかのような...
「..!?」
「どうしたんだい急に身構えたりして( ゜д゜)」
「...君のその格好の声、どこかで聞いたことがあると思ったらAO開始時にデスゲーム宣言したGMだよね?てことはここはやっぱりまだゲームの中で君が本当のラスボスなのかな?」
「(*´∀`*)アハハ!覚えていてくれたんだね~、でもあれには事情があったんだよ?その辺含めて話すから取り合えず武器から手を放してくれると嬉しいナ☆」
彼がそう言い軽く手を振るとどこからともなくソファとテーブル。お茶菓子のセットが出てきた。
「いやこの状況で厳しくない?」
「まぁまぁ。とりあえずキミに害をなすつもりはないから。ネ?」
と言いつつ紅茶を飲みだす。仕方なしに警戒しつつボクもソファに座る。
「さてさて、じゃあどこから話したものカナ?」
~30分後~
「取り合えず話を整理すると、この空間は彼方と呼ばれる無数に続く空間に浮かぶ世界の1つ。で貴方はその彼方を管理者達の1人で自称娯楽と悪戯の神だと」
「自称とは酷いなァ(´∀`*)でもまぁそんな感じだネ」
「うんまぁ信じがたくはあるけどこんな状況だし。仮に真実だとして貴方がデスゲーム主催してたのは?ちゃんとした理由もないなら斬るよ」
「キミを呼んだのは僕の世界に招待したいからサ!」
「斬るね」
「待って待って ( ̄□ ̄;) 勿論それだけじゃないよ!あのゲームは元々デスゲームになるように設計されてたんだ!製作チームの一部が裏切ってネ。それを僕が横から掠め取っただけさ!」
「いや、それもどうかと思うんだけど。というかそれができたなら止めることも出来たんじゃない?」
「それじゃつまらnゲフンゲフン。勿論出来たけどそれじゃキミも面白くなかったんじゃない?」
「む、その言い方まるでボクが望んでたみたいに..」
「まぁそれはいいとして!少なくとも彼らがそのままGMをしてたんじゃ色々と途中で細工する可能性もあったんだしまだよかったと思ってもらえると嬉しいな!」
会話を途中で切られ少しむっとするが、確かに話が逸れてた。仕方なしに会話に戻る。
「はぁ。それ貴方がしてない理由にはならないと思うんだけど。それで招待したいって言うのは何故?何でボクなの?」
「それはキミが一番面白くなりそうだったからサ、といっても実は他のPLにも何人か声もかけてはいるよ。僕以外の管理者がね。テスターは複数人いた方がいいし他にも頼みたいこともあるからネ」
「まだ何かあるの?」
「さっき僕達は管理者と言った。それは間違っていないけど実は他にも管理してくれる者達がいる。それが旅者、旅する者達サ」
その単語を聞いた途端ドクン、と心臓が跳ねる。
「旅者?」
「そ、彼らは僕達が依頼して複数の世界を回り、異常や問題を解決してくれる存在。管理者だけでは手が足りなくてね~。素質がありそうな者をこうして呼んでなってくれないかお願いしてるんダ!」
「ボクもその1人だと?」
「そーいうこと( *• ̀ω•́ )b!返事は僕の世界を見て回ってくれてからで構わない!」
「断ったら?」
「その時は元の世界に返すこともできる。けどキミは断らないんじゃないカナ?」
確かにこの話が真実ならボクは行ってみたいと思ってる。将来的に旅をしたいとは思ってたしそれがファンタジーなような世界だとしたら夢のような話だ。でも
「ごめんね、行きたいのはやまやまだけど家族を待たせているんだ。だから...」
「そっかぁ。まさか君に断られるとは意外だったナ。あ、そういえばミュウって子から手紙を預かってるんだった!」
そういうと彼は懐から手紙を出し手渡してくる。ミュウから?なんだろ、というかこいつミュウにも声かけていたのか。そう思いながら手紙を読む。
そこにはありきたりな挨拶や内容と共に気になる言葉が書いてあった。
『薙は家に来てから昔から旅をするのが夢だって言ってたよね。やっとゲームをクリアしたと思ったら突然神様みたいな人に連れてこられてびっくりだよね!
私もまだ信じられないけどその神様の言うことがもし本当なら、私達のことは気にしないで行ってきて。私も絶対後で追いつくから!』
衝撃だった。ボクは戦争孤児でミュウ、美羽の家に引き取られてから夢が出来た。元々の両親が話してくれていた旅の話。それをいつか自分の目で見て回りたいと思っていた。
でもさみしがり屋で昔からべったりだった美羽がまさかこんなこと書くなんて。確かに戸野塚家以外には特に未練はないけど。
あ、ある。ゲームやアニメが見れなくなるのは困る。でもそれがなくなっても余りあるほどロマンもある話だ。それに色んな世界に行けるというのならいつか地球に戻ることも出来るのだろう。
そう思いボクの決意は固まった。
「1つ確認、この手紙本当に美羽が書いたものなんだね?」
「本当さ!この瞳が嘘をついてる瞳にみえるかい!?.*.(o'∀'o).* 」
「見えるから言ってるんだよ、今の所貴方に信用できる要素欠片もないからね?」
「Σ( ̄□ ̄;)ガーン」
「...でも、いいよ。その話乗ってあげる。もし嘘だったら許さないよ」
「え?てことはいーの!?いやぁ助かるヨ!ヽ(≧▽≦☆)ノ
うんうん勿論だとも、もし嘘だったら僕を殺しても構わないし何でも言うこと聞くヨ!」
あからさまにその気もないことを言ってる気もするがまぁいい。
「手紙には美羽も後から来るみたいなこと書いてあったけど出来るの?」
「そこは問題ないヨ!それに彼女の家族もAO事件に巻き込まれて大変そうだったからね!よかったら家族ごと来ないかとも言ってあるんダ!
あのゲームの製作チームのメンバーだったみたいだし面白い話も聞けそうだしね。あの世界と君達のそのデバイスというシステムを作った人達だ。実に興味深い!」
そっか、確かにあの親達ならこんな話聞けば喜んで食いつきそうだなぁ。騙されてないといいけど。
「あ、一応これは転移扱いになるからネ!それと言い忘れていたけどAOでの君がそのまま君になるからネ!じゃないと速攻で死んじゃうしネ!見た目は現実に戻すかい?」
「そんな捲し立てられても聞き取れないよ。あー、いや。このままのアバターでいいよ。うん、これがいい。」
そうだ。今は眠っているようだけどまた相棒と旅ができるんだ。しかもずっと。
まだ見たことのない世界が、終わらない旅がボク達を待ってる。
そう思うと期待に胸が膨らむ。
「そうそう、キミのデバイスに色々つけておいたよ!翻訳機能とか僕への連絡手段とか封印とか!でも字は読めないから覚えてね!さぁ!そこの扉を潜ればもう異世界だ!」
このメルヘン野郎、いつの間に人の相棒に変なの付けてくれてるんだ
「はぁ、じゃあそろそろ行くよ。長居しても悪いし、いつでも連絡できるなら分からないことあったらまた聞くよ」
「ウンウン!まぁ出れないことが多いと思うけど気にしないでネ!」
「そうだ、一個言い忘れてた。その話す度に顔文字が浮かびあがるのうっとおしいからやめた方がいいよ」
「Σ(゜д゜lll)ガーン」
さて、行きますか!と意気込むとボクはその扉を開け
....ん?待ってそういえばあいつ封印がどうとか言ってなかった?
ふと思い出した時には既に扉に入り意識が途切れていた。
「ところで名前聞きそびれてたんだけど」
「僕の名前はロトだよ!☆彡」
「古っ。というかキャラ被ってない?」
「そんなことないヨ!分かりやすく僕とボクで分けてるじゃないカ!」
「メタいよ。とりあえず一発殴らせて」■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ
・次回かその次辺りにside管理者の視点が入ります。