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Alternative World  作者: ねこまんま
▼第0章 Alternative online
4/14

#0 旅の終わり

本編が始まる前の前日談のような物です。飛ばしても問題はありません。

※専門用語

COD(コード)隊=通常デバイス装備の部隊

SED(イクシード)隊=意志を持つ進化デバイス装備の部隊

 20XX年春。日本でのVRブームは凄まじく科学、医療、戦争。様々な所で利用されるようになりついにそれは娯楽やゲームにも使われるようになった時代。


 とあるVRMMOが発売された。タイトルの名は【Alternative online】

 当時そのゲームの正式サービス時にログインしていた八桜薙と戸野塚美羽は悲劇に見舞われることとなる。



 ────────2年と半年────────

 ◆【第100層 終演の間】


 GRAAAAA!!!


 最後のボスである黒き龍の大気を震わすような咆哮に、本能的な恐怖がこみ上げてくる。

 彼らを吹き飛ばさんと高熱のブレスを吐き空中に描かれる魔法陣から魔法を放ち攻撃を仕掛ける。

 だがCOD(コード)隊の後衛が補助魔法で援護、前衛が防御へと回り地を踏みしめなんとか耐えることに成功する。


「もう少しだ!もう少しでこの惨劇に終止符をうてる。いくぞぉぉぉ!!」


 共に戦うCOD(コード)隊の団長が鬼気迫る表情で声を張り上げ突撃する。

 続いて他の仲間達もスキルや魔法で攻撃していく。

 止まらぬ斬撃が龍を襲い、立て続けに爆炎、雷撃、氷晶と様々な魔法が龍を襲い、その身体を包み込む。

 だがそれすらも漆黒の鱗が堅硬な鎧の如く団長達の攻撃を阻み続ける。


「おらぁ喰らいやがれっ!」


 彼らの1人が怒声を発しながら武器である鎖のついた大きめのダガーナイフを投擲し攻撃を仕掛けるが甲高い音を立て弾かれてしまう。


「ちっ、やっぱ効かねぇか。野郎瀕死になった瞬間硬くなりやがった。この場に及んでまだ死にたくねぇってかおい。お前らなら貫通できるか!」


「「「無理!」」」


 彼が仲間達にも確認をとるが残念な答えしか返ってこない。

 通常の攻撃方法ではあまり効果がないと判断したSED(イクシード)隊の一部が龍と一旦距離を取り作戦会議の為に彼の元に集まる。


「ねぇザック?ボク達の攻撃効いてないみたいだけどなにか策とかあったりしない?」


「ほらほらー。ザック君はそういう策考えるの得意じゃん!」


 黒の軽鎧とコートを合わせた様な装備をした少女と白き鎧に包まれた聖騎士のような少女の二人組もザックと呼ばれた一見ガラの悪そうな銀髪の青年に近寄り話しかける。


「あぁ!?ナギとミュウか。別に得意じゃねぇよ。..幸いダメージが全く効いてないわけじゃねぇ。地味にだが削れてる、がこのままじゃらちがあかねぇ。

 俺が拘束して時間を稼ぐ。ナギ、てめぇにラストアタックは譲ってやるよ。お前なら大技ぶつけりゃなんとかいけんだろ」


「え、いいの!ほんとにぃ?後からあの時は~とか言われても困るよ?」


「いわねぇよ、いいから早くやれ!」


「りょーかい!しかし何処を狙った物かなぁ」


 ナギ、ミュウと呼ばれた少女達は戦いながらそう考えていると先程の団長が此方に近寄り話しかけてくる。


「何か策があるのだな?援護しよう。」


「一応ねー。ただ大技当てるにも皮膚は硬いし何処を狙えばいいかな?」


「それならば先程奴の頭部にコアらしき結晶のような物が見えた。そこならばダメージを与えることも可能なのではないか?」


 団長が龍の頭部を指差すと確かに結晶のようなものが見える。


「遠!?え、あそこまで飛べっていうの?」


「奇策は君たちの得意分野だろう。なんとかしたまえ。我々の攻撃ではいささか時間がかかりすぎる。その分被害も増える。頼んだぞ」


「はぁい。あ、そうだ団長。ザックが(あいつ)拘束するみたいだからそれに合わせて魔術隊にも動くように伝えてもらっていい?」


「了解だ。」


「ねぇねぇナギ!私、思いついたことがあるんだけど!」


 そういうとミュウは耳打ちをし簡単な作戦会議を終えると団長はまた前線へと戻っていき、ザックは自らの召喚獣である金と銀の狼を呼び戻していた。


「なんやご主人、今忙しいねんけど!」「どうしたの..?」

「スコール、ハティ。リミテッドアーツを放つ。準備をしろ。」

「あいよ!」「わかった..」


 狼達は返事を返すと左右に分かれ敵へと向かい、ザックは何やら詠唱を唱え始める。


「いつまでも上から目線で見てんじゃねえぞこのトカゲ野郎。喰らいやがれ....其は天からの戒めが1つ<ドローミの鎖>!!」


 彼が詠唱を終え最後の言葉を発すると同時に狼達は遠吠えをする。

するとザックと狼達の足元から巨大な鎖が出現し龍を拘束、同時に魔術師達も氷の魔術を使い動きを封じていくが、龍は拘束を解こうと暴れまわりその反動で一部の氷が砕け、邪魔な前衛を薙ぎ払おうと衝撃破が前衛を襲い吹き飛ばす。


「長くは持たねぇ早くやれ!」


 ミュウと呼ばれた少女は龍との距離を置き1つのスキルを発動し持っていた盾を振りかぶりナギへと合図を送る。


「準備できたよ!ほら乗った乗った!」


「オッケー、いつでも!」


「<シールドスイング>!」


 なんとミュウはナギをその盾に乗せたまま薙ぎ払うように振りぬきその勢いを利用して空へと舞いあがるが龍の頭部には届かない。


「そぉい!いっけぇー!!」


 ミュウが予測でもしていたのだろうかという絶妙なタイミングで掛け声と共に下から盾が投げる。

 それを踏み台にすることで龍の頭より高い位置まで飛ぶ事に成功し彼女は、止めを刺す為に1つのスキルを発動させる。



 ッ!!?



 他の仲間を相手に暴れていた龍は突如自らの視界を横切る影を捉え驚愕するが時すでに遅し。


「もう遅い!行くよエクスマキナ 『yes master』 武装転換(モード)第2形態(ツヴァイヘンダー) はぁぁぁぁぁ!!!」


 彼女が持つどこか複雑な形状の片手剣は主人の掛け声と共にその形状を両手剣へと変化させスキルを発動させる。

 紫の軌跡を描きながら目標のターゲットに向けて全てを破壊する一撃を穿つ。

 龍も残った力を使い妨害しようとするが、それらも破壊し一直線に落下。そして


  "一閃"


 天井にまで届くかというほどの高さからの狙い澄ました一撃がコアを両断する。

 攻撃の余波で龍の身体を覆っていた氷や鎖をも壊し龍の身体に亀裂が入り崩壊していく。


「やった...のか...?」


「おい馬鹿それはフラグだろ!」


「ふぅ」と着地したナギは龍の体力ゲージを確認。亀裂が入るごとに体力が削れていきついに....



 A...Ga...a?



 龍の身体が甲高い音を立てながら砕け、徐々に粒子となり消えていく、この現象はこのゲームでの死の瞬間に起こる現状である。

 その光景は美しくもどこか儚げに感じる。

 

 【ゲームはクリアされました】


 龍が全て粒子と化し消滅した瞬間アナウンスが繰り返し広間に反響する。


「「「う、うぉぉぉぉぉぉ!!」」」


「やった、やったんだ俺たちは!はははは!!」


 誰かが発した歓声から徐々にその場にいる者達にも広がっていく。


「なーに黄昏てんだよ英雄様」


「いたっ。なにするんだよザック」


「あ...あはは。やった、ついにやったんだね私達!やったよナギ!」


「うん。そうだね...これで、終わったんだよね。」



 皆が歓声を上げている。喜ぶべきはずことなのに、何で。この心に穴が開いたような感じは....



 暫くするとアナウンスの内容は変わり初期の街にある広場に全PLが転送される。


 【ゲームがクリアされました これよりログアウトの処理を行います コンソールの案内に沿って操作してください】


 目の前にコンソールが自動的に開き、ログアウトの文字が表記されている。

 広場に集まっていたPL達(プレイヤー)達が次々と淡い光に包まれてこの世界から消滅していく。

 知り合いや同じギルドに所属していた仲間達もボクや隣にいるミュウに一声かけて消えていく。


「行かないの?」


「うん..折角だから最後にもう少し、この世界を見てたいかなって」


「そっか。じゃあ、先にいくね。待ってるよ?」


 そう言ってミュウも消える。


 ふと気が付くと既に周りには誰もいなくなっていた。見渡せばあるのは懐かしい街並みとNPC。

 あれだけいたPL達がいなくなるとこんなにも静かに感じる。

 初めてこの世界に降り立った時から他のVRMMOとは何か違うと感じていた。

 今までボクがやってきたどのゲームより選択手も多く、美しく、全く新しいシステムだった。

 ふとパートナーの事を思い出す。


「ねぇマキナ。もう少しでこの世界も終わっちゃう。どうだった?ボクとの旅は」


『...貴方との旅は実に愉快でした。貴方に出会えて、貴方の役に立てて光栄でした。1つ残念な事があるとすれば今後貴方の力になれないことでしょうか』


「君、日本語話せたの?そっか。楽しかったなら嬉しいな。ボクも君と出会えて一緒に旅が出来てよかった。もうちょっとここに居たい気もするけど、そろそろ行くね。またどこかで」


『Good luck』


 最後の会話を終え、ログアウトのボタンを押す。

 あぁ、あの時感じたものはこの世界が終わることを、この旅が終わってしまうことに少し寂しさを感じたからかなぁ。

 意識が途切れる間際にそんなことを思っているとボクの視界は光に包まれていき意識は徐々に暗闇に落ちていった。

「ボク達の旅はこれからだ!」

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