幽体離脱を通じて外界の惑星を旅行した人間の生存話
第四話 お父さんの処分に従います
華永はどうしても達遜の女になりたいという話を口にすることができなかった。 朝鮮王朝時代に女には三從之道と呼ばれるくびきがあった。 幼い頃はお父さんに随順して嫁に行っては夫に従順、夫が死んだ後には息子の意思に従わなければならないという 慣習がそれだ。 子供もなくひとりになった華永は父親の意思に従うのみ選択の余地がないと思った。
「お父さんの処分に従います。」
金有瓚は娘の本音を読んだ。 両班の家では未亡人になった娘が一生守絶したり、自ら夫のそばに葬られることを美徳と思うが、それは人間的にとても残忍なことだ。 彼は家に烈女が起こったという音を聞くことよりは娘が生きて幸せを享受したらいいと思った。 両班家で守らなければならない規範がと言うが娘が一人で夜を過ごすしたり、両親より先に死ぬ姿をどのように見守ることができるかな?
幸か不幸か情合の対象も発生したので、これを機に、誰も知らずに遠くに送って新しい人生を持つように助けるのがいい。 そして自ら選択するように任せたことで、心理的葛藤するように作ることより父の命令に従うようにすることで、尹基升と、夫の実家に対する心の負担を軽減するのがましと判断した。
「分かった。 私が知って、処分するつもりだから軽挙妄動しないで待ちなさい。」
今まで華永は達遜を呼ぶ度に亡くなった夫を裏切って夫の実家をないがしろにしているみたいで心がつらいた。 そして自分の家門の名誉を失墜させるのではないか心配した。 ところが父が達遜との関係を気づいて何かを決心したから、一方では心が軽くなった 決心した。 華永は父が自ら命を止めろと命じれば、 その命令に従うことで達遜と一緒に遠く去りなさいと命じれば、その処分に従うことに決心した。 いずれの場合にしてもこの家に滞在できない。 これまで親からもらった恩と愛について爪の垢ほども応えられず、離れるのが悲しいけど達遜と共にする未来が期待される点もある。
金有瓚はその日から華永の問題をどう処理するか苦慮した。 娘と下僕の不倫関係が知られれば、ことが複雑になるから先ず、二人が会うのを防がなければならない。 ちょうどその時に華永の母方の祖父が他界して母方の祖母も病気で倒れたという知らせがきた。 金有瓚は妻の実家に行く道に達遜を連れこみ刈り入れが終わるまでそこに残って仕事を助けるように言いつけられた。 そして一人で家に帰って来てからはそれなりに戦略を構想した。 両班の家で前例があったかどうか密かに調査して二人をどこに送るか工夫を重ねた。
二ヶ月が過ぎた晩秋に達遜が返ってきた。 彼が門屋に滞在していたある日、有瓚は彼を密かにの客間として呼び出した後、指示した。 明日の夜に華永を誰も知らないように'七福寺'と呼ばれる寺に連れて行って隠して来いと命令した。 娘が滞在する部屋の日常品はすべてそのまま置いたまま体だけ離れなければならないと話した。 達遜は目が丸くなった。 もしかして華永の父親が自分と華永の関係を気付いたのか。 彼は怖かったが、慈愛に満ちた大人が心から愛する娘を過酷に放り出すことはないだろうと考えて華永に、父親の命令を伝えた。
翌日、真夜中に華永は、普段着姿で小さなつつみ一つを持って達遜の後を付いた。 達遜が誰も知らずに自分の母親が、荒仕事をしている寺に華永を隠して戻って来たら突然彼女が滞在した部屋で号泣が聞こえた。 家族たちは皆驚いて華永の部屋に向かっているが、慟哭していた有瓚の叫び声が聞こえる。
「華永が自ら命を絶った。 誰も近付かないでな。 父である私が遺体を処理することだ。」
金有瓚は、家族たちの接近を防いで、予め用意したわらと布を編んで偽の遺体を作った後、布団で覆った。 家族皆が瞬間的に発生したことに、訳も分からないまましゃくりあげて泣いているので、達遜だけこの大人の考えを看破した。 ついにの金有瓚は華永の偽の遺体を作る仕事を仕上げた。 その後達遜を呼んだ。
「達遜がどこにいるのか? 私の指示に従え。」
「小人ここにあります。 おっしゃってください。」
「夜が明けると、すぐに長さ五尺、幅二尺のネズの館を造りなさい。」
金有瓚は長男の珉永に夜が明けてみれば、近い親戚たちにだけ、華永が自殺したという消息を伝えるよう命令した。 漢陽の縁家にも連絡を取って華永が自ら命を絶ったことを知らせた。 金有瓚がした自作劇は緻密に構想されたものであり、脚本どおりにうまく進み、誰も信じて疑わなかった。 家族と村人たちは、うら若い身で未亡人なら誰でも、そのような選択をできるとし、華永の死を淡々と受け入れた。 おそらく母方の祖父が死亡したことが自ら命を切る契機となったとし、ざわめいていた。 遺体が入っていなかった華永の棺は夫の墓に合葬された。
その当時は先に行った主人をよって自ら命を絶つうら若い身で未亡人が珍しくなかった。 むしろ両班家では烈女が出たと称え、美談として受け入れていた時代であり、華永の死について云々する人はいなかった。 夫の実家では、息子が不幸して夭折し、嫁も生を全うできないように作ったとし、ごめんねしながら嫁の行動について、高く評価した。
華永の母親は悲しみのあまり病気で倒れ、弟たちも姉の死を悲しんでいた。 親戚たちは、うら若い身で未亡人で過ごさなければならない彼女が年を取れば、悩みの種に転落しないか懸念していたところだった。 家の名誉のため自ら命を絶った華永がかわいそうだけれど、やむを得ない選択だったと理解した。 しかし、有瓚にはまだ処理することが残っている。 自分が主導した自作劇は間違っていれば敗家亡身しかねない重大なことだ。 偽りの死に対する真実が明らかになってもならず、華永に大きな不幸が襲ってもならない。
寺に潜む華永は達遜から一部始終を伝えて聞いて驚きを禁じえなかった。 未亡人として生きていく代わりに、女としての幸せを享受できるように配慮してくださった父がとてもありがたいが、再び実家の家族を会うことができないという考えに嗚咽した。 今まで自分を男兄弟らと同様に教えて愛を施してくださった父がひたすら娘の幸せのために家の威信と体面を一度に失うかもしれない危険なことを敢行するとは!
父は不幸な運命を持って生まれた娘が風俗の犠牲になるよりは人間らしい人生を生きように道を開いてくれたのだ。 本当に生真面目た祖父や祖母が生きていたなら、想像もできないことだ。 母も絶対に賛成しなかっただろう。 華永は父親に対して感謝と尊敬を禁ずることができなかった。
父は若くしてから固陋な儒教思想に執着しない、ものすごく人間的な方だった。 自分は両班の家の宗孫であることにも男女差別と身分制度について正しくないと考えた。 彼のように考えが開けた方だったので娘と息子に均等に文章と経典を教えた。 下男や小作人にも人格的に待遇し、いつも彼らの暮らし向きについて心配した。 身分制に縛られて召使いを冷遇した人であれば、そもそも華永と達遜が夫婦に結合することを容認しなかっただろう。
ところで華永は、もうこの世に存在することができない人がなった。 これから身分を隠したまま朴達遜の妻として暮らさなければならない。 慣れ親しんだ故郷を離れて誰も知らないところで隠れて生きなければならず、肉親とも永遠の別れだ。 家の行事に参加できず両親がこの世を去っても席を守ることができなくなった。 果たして、これが人間らしい暮らしと言えるのか。
父の脚本によって百八十度変わってしまった華永の運命はもう取り返すこともできない。 家にいくら不幸なことがあっても自分は家族の前に現れてはならない。 一つの芝居だったとし、原状回復を試みては敗家亡身を招くだろう。 華永は心を鬼にして家族と断絶されたまま、新しい環境に適応して未知の世界を向かって進むことに決心した。 寺に隠れることとしての父親が演出した演劇が終わったわけではない。 父は客地で定着するのに必要な最小限の経費は提供するだろう。
華永の自殺が既成事実化され、すべての人々が日常に埋もれて暮らしていたある日、金ユチャンは再び廊に居住していたダルソンを密かに呼んだ。 そして寺に隠れて暮らした華永を連れて遠い所に行って一生一緒に暮らせと注文した。 中人の身分で苦労しなくて生きるように身分保障証明書と少なからぬ定着資金を与えた。 そして次のように話した。
「三ヶ月が過ぎた。 今は家族や村人たちの華永の自殺事件に対する関心が減ったのだ。 もう君もこの家を離れたほうがいい。 華永と夫婦の縁を結んでよく過ごしなさい。 そして君はいつでもこの村に顔を差し伸べることのできる立場だから時々私に華永の近況を知らせなければならない。」
「……」
「君が母親と一緒に生きようと離れると言えばだれも君を疑わないだろう。 村人たちの目につかないように遠くに行きなさい。 暮らしながら難しいことがあったら私にだけ内内に知らせなさい。 君は私の家に自由に出入りできるが、華永は絶対に現われてはいけない。 絶対秘密を維持しなければならず、他の人には華永の話を取り出してはならない。」
「肝に銘じます。」
「この文書には華永の名前が有眞に表示されている。 親との縁を思って、父の名前から一字、お母さんの名前から一字を取った。 これからは金有眞という人として生きなければならない。」
「これまで様に過分な恩恵を被ったが、何と感謝の言葉を話せばいいか分かりません。 今後、アシ(若奥様)が安らかに生きられるように一生懸命働きます。」
「なった。 準備が終わったら私の家の家族たちに別れを告げてすぐに出発しなさい。 華永夫妻の墓地管理など後の処理は私がすべて分かってするので、華永に安心しと告げよ。」
「今後、暇なときに伺います。」
達遜は自分の生活基盤を整理した後、住み慣れた華永の家族と村人たちに別れを告げた。 20年以上暮らしてきた住み慣れた村を離れると思ったら寂しい極まりないて、今後どのように生きるべきか恐ろしい。 もう誰も知らないところで、金有眞の夫で生きていかなければならない。 華永の父がくれた金銭ならどこでも難しくないように定着できるだろう。
達遜が、寺を訪れ、その間の事情を話すと彼の母は華永の父の仕打ちにとても感謝している。 華永の父は幼い時代から身分の違いにもかかわらず、自分を大切にし、自分の夫を友達のように心おきなく接してくれた主人だった。 恩人はまさにこのような人を指す言葉だと思ったが、金枝玉葉のように大切に育てた娘まで達遜の妻としてくれた。
これまで施してくださった助けと配慮もありがたいんですけど娘と財物までいただいきましたから、どのようにその恩を返すということか? その村で一緒に生活したら一生懸命に仕事をするものとして恩に報いるだろうが、そうなるもできなくなった。 華永は赤ちゃんのときから、きれいで優しくたために家族はもちろん、村の人たちがみんなかわいがってくれた。 そのような赤ちゃんが嫁になった。 これが夢かうつつか分からない。 天地開闢が起こらない限り、夢も見られないことが現実となったのである。
彼女は興奮をコントロールできず、数日間夜を開けた目に明け暮れた。 うら若い身で未亡人ならどうってよ! お嬢さんが未亡人になっていなかったら、どう達遜の妻がなれるたであろうか? しかも中人の身分保障と相当な財産までできた。 達遜と華永の間から生まれる孫たちはとてもきれいではきはきしたのだ。 その子供たちは中人の身分で訳官や武官となることもできる。 それこそ'苦労の末、幸福はじまり'の人生逆転である。
達遜は華永に実家の父の意思だと主張し、江原道北端やもっと遠く、咸鏡道に行こうと説得した。 しかし、華永はなるべく自分の実家と近いところに定着しようと意地を張った。 直接会えなくても、遠くでも、より自分の家と家族の姿を見たいた彼女の心を達遜が知らないはずがない。 しかし、あまりに近いところに定着すると故郷の人々の目にとまることもできる。うそがばれたらどんなとばっちりが落ちるかもしれない。 自分たちの立場が難しくなるのはもちろん、彼女の実家にも大きな災いが及ぼしかねない。 達遜は説得を継続した。
ついにお嬢さんの固執を破るのに成功したと考えて母に駆けつけた達遜は母親から思いがけない知らせを聞いて気を失ってしまうところだった。 華永の婚行途中に行方不明になったという父がとても遠い全羅道、務安の島に入って漁師になったということだ。 母が寺に行ったのも、祈祷やお寺の仕事をするためではなく、父親に会うためだったと告白した。
「それが事実ですか? 父が生きているという話ですか。」
「私がどうしてうそを言うか。 父が五回もここに私を会いに来た。」
「なぜ私に隠しましたか。 母はいつ分かりましたか?」
「事故が生えてから半年ぶりに行商人側におまえのお父さんの手紙を受けた。 あなたに知らせれば、華永の家族たちにも知られるのではないか怖くて先延ばしにした。」
「華永娘には何と言うですか? 事故当時、父が行方不明になったことを大変残念に思ったのにですね。」
「私も彼女に君のお父さんが生きているという話をするのが怖い。 しかし、どうするか? 父が生きているから、他のところに行くことはできない。 全羅道、務安は慶尚道 、安東からとても遠いところだ。 両親と別れないためには君も父親が定着した場所に行かなければならない。 状況がこうなったから君がおひめ様をうまく説得しなさい。」
母は夫が暮らす島へ一緒に入らなければならないと主張する。 達遜は、亡くなったと思っていた父が生きてるなんて夢のようだ。 父が生きていれば、当然そこに行かなければならない。 父が住んでるところが定着することにも有利だろう。 しかし、この事実を知ったら華永が裏切り感を感じるはずなのに、どのようにを言い出すかとても困惑している。 そうだと先送りする状況でもない。 ためらった彼はついに華永に事実を打ち明けた。
「アシ(若奥様)、私が母から驚くべき知らせを聞きました。 アシ(若奥様)も驚くことです。 行方不明となったと思っていた父が生きています。」
「それが事実なの? どこに?」
「アシ(若奥様)が事故に遭った後どうしても安東に帰る廉恥がなくて遠く離れ、 全羅道、務安の漁村に定着したそうです。 父は自分が任務を疎かにしてアシ(若奥様)がそんな災いを受けたとし、今も胸を痛めています。」
朴氏が生きているという知らせに華永も驚いた。 事故直後には彼が跡形もなく消えたのを恨んたが、朴氏は、幼い頃から自分を大切にした人だった。 華永は自分の婚行道を守ってあげられなかった罪悪感のために妻子まで捨てて去った朴氏の立場を理解できるし、恨みも消えた。 家族のように仲良くした大人を見れば、父親を見たい心を癒すことがあると考えた。 赤の不慣れな場所に行って苦労するより朴さんが定着したところに行ったほうが安全だろうという気もした。
達遜は華永が父親を理解してくれたことに安堵した。 他の両班家なら生死の岐路に直面した主人を見捨てて逃げた下僕を絶対に許さないだろう。 達遜はお嬢さんも自分のお父さんに似て心が慈悲深かって寛大だと思った。 そして何事があっても彼女を幸せにしなければならないと誓った。 華永が同調したことで、一行は直ちにお寺の生活を整理し、朴氏が住んでいる務安に向かった。 そこに定着した金有眞は結局、朴達遜の妻になった。
朴奉軾氏によると、ここまでが催眠療法師が明らかにした有眞の前世だ。 催眠術師の主観が介入してもっともらしいシナリオが作られたのだ。
「朝鮮時代の金華永が両班の家で生まれたことも平坦ではできないように生きたんですね。」
「そうらしいです。」
「ところで有眞はどうして心が不安しましょうか。 虎を見て驚いたのは婚行の道に発生した虎患のためだとするが、この世の中に住んでいる間そんなに大きな影響を及ぼすことがないのに。」
「自分の家では贅沢しながら、気楽に暮らしていた両班の家の女性が身分を下げ、漁師の妻になったら生きながら苦労が多かったのです。 間違いなく漁村で、精神的・肉体的に深刻な苦難を経験したのです。 そのために後世の有眞が苦しまないでしょうか。」
「私もそう思います。 催眠術師は、漁村に去った後の人生については話がなかったんですか?」
「ありませんでした。 私の娘は華永という名前によって生きた時代だけを記憶していたようです。 子供が記憶できなかった前世については催眠術師も明らかにする方法がないでしょう。」
「ところが、本当におかしいですね。 華永の別の名前がなぜ有眞になったのでしょうか? 朴有眞という名前は誰が作りましたか。」
「有眞という名前は子供お爺さんが付けてくださいました。 私の父は漢学にある程度造詣があって孫と孫娘たちの名前を付けてくださいました。 どうやって私の娘の名前が前世の名前と同じになったのか私たちが考えても変です。」
世の中には偶然の一致が珍しくない。 米国の両大統領、リンカーンとケネディに発生した偶然の一致を取り上げる人が多い。 二人は100年の時差を置いて大統領に当選したが、任期中に殺害された。 ここまでは特別な話題の的ではないが、金曜日に妻が見る前で、銃で殺害された。 リンカーンは劇場で狙撃され、ケネディを狙撃したオズワルドは映画館に身を隠した。 二人が殺害された後、大統領職を継承した副大統領の名前が二人ともジョンソンだった。 二人に異常なほどに偶然の一致が発生したと見ることができる。
朴有眞と金有眞の名前が同じのも妙な偶然の一致であることに違いない。 朴有眞のおじいさんはその多くの文字の中でどのように前世の女性の名前を選択したのだろうか。 確率的に、到底、起こりがたいことが実際に発生した。 朴有眞の祖父に一種のテレパシーが伝わったのか? その方は数年前に亡くなったとしたら聞くわけもない。
「あなたのお嬢さんが前世の金有眞のせいで苦しんでいることは明白であり、北村を訪れる理由も彼と関連がありそうですね。」
「上京する前に、なぜそんなことを家族に話しなかったのか、知りたいです。」
「子供は自分の前世に関する話を家族たちが嫌いだと言いました。 とにかく私たちが、北村を詳しく観察する予定です。」
「ありがとうございます。 私たちは有眞が気楽に生きることを望むだけです。」
「北村をくまなく観察し、子供に役になりそうなことを捜してみてご連絡致します。」
現在としては金有眞の生を追跡する方法がない。 催眠術師は婚行の道に虎に会って大きく驚いたのが朴有眞の心的不安の原因と推定したが、正確なところはわからない。 子供は金華永を記憶するが金有眞については、覚えていない。 金有眞は、漁師の妻になった後、肉体的に厳しい人生を生きて精神的に耐え難い屈辱を受けた可能性が大きい。 子供が、北村を訪れる目的がそれに関連するものだ。