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月光の下  作者: すや顔
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レッテル

退院し病院を出て、父が運転する車の後部座席に座って僕は考えていた。入院してこの3ヶ月間耳元での声、幻聴は四六時中消えなかった。医者は徐々に良くなるとは言っていたものの回復していく気配がなかったので僕は入院中ついに医者に聞きに言ったことがあった。

「この病気、完治するのでしょうか。」

医者は徐々には良くなるが完治はないとされていると言った。そして、

「幻聴が完全に消えることはないが、気にならなくなるところまでは回復する。」

とつけたした。

車の中で父も母も黙っていた。僕は治ることのない病気にかかりこれからどうやって生きていけば良いのだろうとうなだれていた。しばらくは医者も両親も僕に家で療養するように命じたが、仕事もせずに今後病気と闘いながら年をとっていくのが見えていたので絶望としか言いようのない感情に心は支配されていた。そしてもう一つ心配なことがあった。僕が診断された病気が差別されたり偏見を持たれるようなものであると同じ病室の患者から聞いたことだ。統合失調症という病気はつい最近病名が変わり、前は精神分裂病という病名だった。犯罪を犯してもこの病気だと判断されると無罪になることが多々あるらしい。そんなことからか、頭のイカれた奴でいつ犯罪を犯すかも分からないという偏見があり、どこへ行ってもエタヒニン扱いされるとその患者は言っていた。僕からすればただでさえ幻聴で辛いのにそんなレッテルを貼られて今後の人生を歩んでいかなければならないのかと落胆と怒りで嫌になった。

車が自宅の前まで着くと、父が着いたよと一言言った。僕は自分の部屋に入ると何の配置も変わっていないのに3ヶ月ぶりということもあって違和感を感じた。大きくため息をつきうなだれ、幻聴の辛さとレッテルにじっと耐えることしかなすすべはないと今後を悟った。

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