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月光の下  作者: すや顔
3/7

正体不明の声

その夜は長く恐ろしかった。

エアコンから聴こえる声は僕の嫌がるものや、怖がるものばかりで、僕は布団にくるまってその声が止むのを待った。しかしその声は永遠と囁いた。僕にとってこんな経験は今までなかったのでその正体不明の声が何なのか想像することしかできなかった。幽霊なのか、悪魔なのか、はたまた宇宙人なのか。その声は一方的に囁くだけで僕が反応したり僕の方から話しかけてもその声からの返事は僕の話した内容に関係なくただ嫌な怖い声として囁いてくるだけだった。

僕は恐怖心で丸まりうっすら汗をかきながらも、その正体を突き止めようとあれこれ想像してみた。まず幽霊の声だったら。怖いけれど、そのうちどこかに行ってくれるだろう。ただその時を待つばかりだ。お化けの話は聞いたことはあるが悪さするお化けばかりではないのだからと僕は自分に言い聞かせつつも恐怖心は増すばかりだった。その次に想像したのが宇宙人の声だ。宇宙のどこかからエアコンを通じて交信しているのではないか。何のためかまだ分からない。ただ僕は特別な存在として宇宙人に選ばれ、僕とどこかの宇宙人が交信したがっている。そう考えるとSFのようで好奇心が湧いてきた。僕はもしかしたらこれから誰も経験できないことができるのかもしれない。その次に考えたのは、悪魔が僕を呪っているのではないかということだ。その声の内容が呪いと言っても大袈裟ではないそんな内容だったのでこの線もあり得るかもしれない。

何しろ怖かった。目をつぶって身を縮こめて眠ろうとしたが眠れない。その声はエアコンから聴こえていたのだが数時間すると、その発せられる場所が変わってきた。部屋の空中から僕の耳に向かって飛んでくるようなそんな形状へと変化した。内容は恐ろしいものに変わりはない。そしてさらにその聴こえ方が変わっていき、耳元でコソコソと囁くものへと形を変えた。

「僕と友達になって、約束だよ。」

今まで怖いことしか言わなかったその声が突如そんなことを囁いた。僕は怖かった。もしこの声が悪魔だったら、この悪魔との約束、つまり悪魔との契約は僕の身に不幸を招く結果になるのではないか。それなので返答はできなかった。僕はただただ怯えていた。

「これから僕と友達ね」

今度は一方的にその声は囁いた。その声を聴き、しばらくして僕は眠りに落ちた。


次の日の昼過ぎ、目が覚めほんの30秒くらいは正常だった。目覚めは悪くなかったし眠気はあったがいつもと変わらない1日の始まり。しかし、そんな束の間、前の日に耳元で囁かれた声がまた始まった。

「しね、僕のいうとおりにしろ、しね」

1度起き上がりかけた僕は怖くなって布団に入り丸まった。

もしこの声の正体が悪魔だったら僕は呪われたまま死ぬのかもしれない。恐怖心は最悪な状況を想像させさらに恐怖心を増長させた。しかし僕は悪魔に関しての知識など持ち合わせている訳ではなかった。なんとなくこの声の正体が悪魔であると行き着き呪われていると思い込んだのだ。調べてみよう、まずは辞書あたりから、悪魔とは何者なのか。僕はそう思い、本棚に埃のかぶった国語辞典を手に取りパラパラと開いた。その国語辞典のなんとなく開いたページのなんとなく目に入った言葉。

「傀儡」

僕はなんでこの語句を最初に見たのか。寒気がした。悪魔を調べるつもりで開いた辞書の最初に目に入った傀儡という言葉が、この声の正体ではないかと直感的に思い、恐怖に慄いた。この声の操り人形として僕は操られるのではないか。僕はもう悪魔という語句を調べる気にはなれなかった。またベッドの中で布団にくるまりその囁きに怯えながら眠りに落ちるのを待った。

夕方過ぎに母が仕事から帰ってきた。母は僕の部屋に入ってきて帰ってきたことをつげ部屋を出て行こうとしたが僕の様子がおかしい事に気付いたのか話しかけてきた。

「どうしたの。夕方なのにまだ寝てる気?」

僕は怯えながら言った。

「変な声が聴こえるんだ、助けて。」


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