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月光の下  作者: すや顔
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穏やかな日

自分の部屋なのに帰ってきた時違和感と新鮮さとここにいていいものなのかと躊躇いを感じ、3ヶ月前と何の配置も変わらない部屋の中でこれからの自分の行く末を案じた。


2006年2月のある日の午前、僕は大学に行くために家を出ると、まだ2月だというのに外は春の陽気で穏やかに風が僕の頬を撫でた。こういう気候は昔から好きだった。季節に合わない気温や、昼だというのに真っ暗な空や、雨が降っているのに晴れていたりとか。特に春の新鮮な暖かみを帯びた風にあたるのが好きだった。季節の中では春、冬、秋、夏の順番で好きだ。春は生命の息吹を感じるし、冬はピリッと張り詰めた冷気の中防寒具で凌ぐのが季節感を感じるし、秋は過ごしやすい。ただ夏だけは外で暑さを凌ぎようがないので嫌いだ。

バス停に着くと、クシャクシャになったマイルドセブンライトをポケットから取り出すと禁断症状が半分カッコつけが半分で風を遮るように火を付けた。

その日のカバンの中は軽かった。筆記用具に、パチンコ雑誌に、それと退学届一通だけだ。大学を辞める意志を固めて、親を説得し、前の日退学届に必要事項を記入し、ハンコを押して、いざ退学の日になったが、何の未練や感慨など湧いてこなかった。却って清々とした気分でいた。さぼりにさぼり3年留年し6年間在学した大学をついに辞める日が来たのだ。

バスがやってきて僕は乗り込むと僕以外に3人しか乗客のいないバスの中でとても穏やかな気持ちで窓外を眺めていた。穏やかで平和な日。そんな言葉がぴったりだ。

しかしこれから訪れる嵐の予感などその時の僕には僅かにも感じていなかった。



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